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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第11章 神話の戦い

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18 虚空一閃

 重要なのは、イメージだ。


 俺の中にあふれる、歴代魔王の中でも最強を誇る強大な魔力。

 それをただ解き放つのではなく、いったん収束する。


 暴れ出しそうな莫大なエネルギーを、手綱をつけて操るように。

 抑えこみ、一点に集める。


 かつてジュダとの修業で会得し、それからも磨き続けてきた俺の術式。


 俺だけの、術式。


「斬り裂き、弾け!」


 俺のイメージが極限まで鮮明化した瞬間、それは出現する。

 稲妻をまとった、黒紫色の剣。


 その名は──、


「『収斂型・虚空の斬撃(ヴァニティブレード)』!」


 振るった一閃が、ジュダの光の檻ごと、前列の天軍兵器をまとめて数十体切り裂いた。


 だが、まだまだ残存している敵はいる。

 俺が放った斬撃波の範囲外に生き残っている奴らは、おそらく二百体以上。


 光の檻の保持時間である一分内に、全滅させなければならない。

 ならば、


「伸びろ!」


 俺は刀身にありったけの魔力を込めた。

 新たなイメージを、剣に付与する。


 ヴ……ン!


 虚空の剣が鳴動した。


 黒紫の刀身が一気に伸びる。

 天軍兵器を片っ端から両断し、空間そのものをも切り裂いていく。


 すべてを断ち切り、破壊する刃はどこまでも伸びていく。


 地平線の彼方までも──。


「ふうっ」


 しばらくの後、すべての天軍兵器は真っ二つになり、沈黙していた。


「へえ、これはすごいね……!」


 ジュダが口笛を吹いた。


「単なる切断魔法じゃない。広範囲爆裂系の超高火力魔法を剣の形に凝縮、そして局地的に解放──か。私が研究している術式に、少し似ているよ」

「まあ、未来のお前に教わって完成させた術式だからな」


 俺はニヤリと笑った。


「あ、やっぱり」

「感謝してるよ、ジュダ」

「いや、こちらこそ感謝する。よくぞ我が魔界の外敵を打ち破ってくれた」


 と、ヴェルファー。


「魔界を総べる王として、この通り礼を述べさせてもらう」

「私からも。ありがとう、フリードくん……ふあ」


 言って、あくびをするジュダ。


「魔力を大量に消費したから眠くなってきたよ。私はちょっと寝てくるね」

「お、おい……?」

「大丈夫。敵の気配は去ったし」


 言うなり、ジュダは去っていく。

 あいかわらずマイペースな奴だ。


「まったく……」


 ヴェルファーが苦笑した。


 その姿が三面六臂から、通常の人型へと戻る。

 戦闘モードを解除したんだろう。


「まあ、あいつのおかげで助かったのは事実だ。そして──緒戦は俺たちの勝利だな」

「ああ」


 満足げなヴェルファーの言葉にうなずく俺。


 だが──。

 本当に、これでよかったんだろうか。


 俺は、ステラが未来を予知して導いた最善の道から外れてしまった。


「やっぱりすごいな、お前は」

「あれだけの敵を一掃するなんて」


 魔軍長たちがやって来る。

 どうやら四人とも無事のようだ。


 そのことに安堵し、そして思う。


 たとえこれから先の運命で、俺に不利が生じようとも。

 やはり彼らを守ることができてよかった──と。




 天軍からの増援は、とりあえずないようだった。

 勇者たちも、天軍兵器が全滅したのを見て、逃げ去っていった。


 俺はヴェルファーに断りを入れ、ふたたび最初の持ち場に戻る。


「魔王様!」


 ステラが真っ先に駆け寄ってきた。


「よかった……ご無事で」

「悪いな。お前の助言に背いてしまって」

「何を仰るのですか」


 ステラは微笑んだ。


「あなたが無事でいてくれさえすれば、私はそれで──」

「ありがとう」


 俺はステラを見つめる。

 彼女の顔は赤く上気していた。


「なんか、いちゃらぶな雰囲気です」


 オリヴィエが俺たちを等分に見ていた。


「萌えます……うふふふ」

「いちゃらぶ……? 萌え……? 俺には分からぬ……」


 そして、リーガルがうなっていた。

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