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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第11章 神話の戦い

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16 魔軍VS天軍、勇者軍4

「今のところ、助勢は必要なさそうだな……」


 彼らの戦いぶりを見守りながら、俺はつぶやいた。


 ヴェルファーたちはさすがの強さだ。

 勇者たちをまったく寄せつけない。


 いちおう魔王軍が後方に控えているのだが、彼らの出番はまったくなかった。


 と、そのとき、空の一角から轟音が響く。

 同時に、結界の破れ目から新たな影が現れた。


 今度は人間ではない。

 全長二十メートルから三十メートルはありそうな巨大な獣たちだ。


「あれは──『天想覇王(ディヴァインギア)』に似ている……!?」


 かつて戦った、天軍最強の兵器。

『炎の王』、『水の王』、『風の王』、そしてそれらの合体形態である『光の王』にいたっては魔界を破壊するほどのエネルギーを秘めていた。


「いえ、どうやら違うようです」


 と、ステラ。


 あらためて見ると、雰囲気は似ているが、確かにデザインがかなり違う。


「おそらく神が作った同系統の兵器でしょう」


 なら、おそらくは『天想覇王』に準ずる戦闘能力を持っているのだろう。


 どうする?

 これ以上は待機せず、加勢に行くか──。


 俺が迷ったそのとき、


「合体魔法──『双雷破天竜鳴咆(ボルティックロア)』!」


 ヴェルファーとジュダが同時にメガサンダーを放ち、それらが空中で合体した雷撃波が三体のうちの九頭蛇に命中した。


 きゅいぃぃぃぃぃぃっ……!


 悲鳴のような声を上げ、九頭蛇が後退する。


「いくらミスリルとはいえ、これだけの高火力魔法を受けては無事じゃ済まないようだな」


 ヴェルファーが得意げにうなった。


「ミスリル製兵器を相手に魔法で力押しとは──」


 ステラが息を飲んでいた。


「さすがに、強いですね……」

「ああ」


 ステラと俺はうなずき合う。

 さらに四大魔軍長の攻撃もあり、三体の『天想機王(ヘブンズギア)』は次第に押しこまれていく。

 と──、


「また、出てきましたよ~!」


 オリヴィエが上空を指さした。


 霧や雲に包まれた人型や、樹木でできた四足獣。

 さっきとは違うタイプのようだ。


「新手か」


 つぶやくリーガル。


 しかも、今度はけた違いの数だ。

 おそらく数百体はくだらないだろう、無数の神の兵器。


「こいつら……っ!」


 ヴェルファーたちも応戦するが、さすがに敵の数が多すぎる。


 性能の違いはあれど、『炎の王』や『水の王』、『風の王』と似たような連中を数百体単位で相手している、と考えれば、どれほどの圧力なのかは想像できる。


「ちいっ、倒しても倒してもキリがねえっ!」

「ちょっと多いね……面倒だ」


 うなるヴェルファーやジュダ。

 四大魔軍長もそれぞれ苦戦している。


「おのれ……なんという数だ!」

「ひるむな! 魔界は我らが守る……っ!」

「くうっ、ちょっとこれ、多すぎ……っ!」

「踏ん張れ、みんな……!」


 無数の天軍兵器が放つ炎が、雷が、魔軍長たちに炸裂する。

 無数の爆発が連鎖し、衝撃波が吹き荒れる。


 天軍兵器たちは連携して、各々の攻撃力を倍加してくる。

 一体一体の性能は、あの『光の王』には遠く及ばない。

 だが、数百体集まったその圧力は、あるいは『光の王』並かもしれない。


 さすがの彼らも、少しずつ押しこまれていた。

 それでも魔界を守るという使命で持ちこたえている。


 が、やはり『数の暴力』は圧倒的だ。


 このままでは、いずれ防ぎきれなくなる……!


「──出るぞ、ステラ」


 俺は決断した。


「魔王様……」

「お前の『黙示録の眼(アポカリプスノート)』は後方待機を推奨していた。それを信じないわけじゃない。けど……このまま放っておくわけにはいかない」

「……あなたなら、そう言うと思いました」


 ステラは小さく息をついた。


「私も、見殺しにはしたくありません。ですが──」


 その瞳が不安げに揺れる。


「だからこそ、だ。お前の『眼』でサポートしてくれ」

「魔王様……」

「お前の『眼』ならきっと打開できる。その手立てを見つけられる──信じて、いる」


 俺は仮面越しに、彼女に微笑んだ。


「助けたいんだ、あいつらを。時代は違っても、俺たちの仲間を」

「承知いたしました」


 ステラが微笑みを返してくれた。


「助けたい思いは、私も同じです」

「じゃあ、いっちゃいましょう~」


 オリヴィエが元気よく叫んだ。


「怪我はあたしが治しますので~!」

「私はいつでも行けます、王よ」


 リーガルが無数の骨を組み合わせたような禍々しい剣を抜く。


「いや、お前たちはここを守ってほしい。ヴェルファーたちを援護に行くのは、俺一人だ」


 俺は指示を出した。




 そして──戦いの第二幕が、始まった。

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