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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第11章 神話の戦い

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15 魔軍VS天軍、勇者軍3

 ヴェルファーはジュダとともに空を翔けていた。


「結界がそろそろ破られそうだね」


 と、ジュダ。


 前方の空には次々と亀裂が走り、その数が加速度的に増えている。

『勇者』と名乗った人間の集団が魔界に侵入するのは、時間の問題だろう。


「この期に及んで呑気だな」

「君は慌てふためく私が見たいのかい?」


 ジュダが平然と言った。


「いや、それでこそお前だ」


 ヴェルファーはニヤリと笑う。


 ちょうどそのとき、空にひときわ大きな亀裂が走り抜けた。

 同時に、無数の勇者たちが結界を通り抜ける。


 ついに魔界への侵入を許したのだ。


 虹色の光に包まれながら空を翔けてくる勇者軍。


「迎え撃つぞ」

「りょーかい」


 ヴェルファーとジュダは同時に魔法の詠唱を始めた。

 二人の呪言が、美しい旋律となって響き渡る。

 そして、


「『灼天の火焔(メガファイア)』!」


 火炎系最上級呪文が、唱和した。

 放たれた二つの火炎は空中で融合し、


「合体魔法──『双焔灼天弾導破(バーストメギド)』!」


 赤から黒へと変色した巨大な火球が、数百人の勇者を跡形もなく消滅させた。


 大爆発とともに、中空に巨大な穴が開く。

 今ので空間の一部が消滅したのだ。


「し、信じられん……!」

「空間を灼くほどの火力とは……!」


 背後から驚いたような声が響く。


 竜にスライム、女剣士、アンデッド──。

 ようやく追いついてきた四大魔軍長だった。


「お前たちにこれを見せるのは、初めてだったな」

「私とヴェルファーのとっておきさ」


 ヴェルファーとジュダが笑みを浮かべた。


「なら、次は俺たちだ!」


 魔軍長たちが気勢を上げる。


焔皇竜(えんおうりゅう)』ジード・ガ・ゼルフィードが灼熱のブレスを吐き出し、勇者たちを吹き飛ばす。

不死王(ロードアンデッド)』ヘイゼルが配下のアンデッドたちとともに、勇者たちを薙ぎ払う。

無形戦魔(ヴォイド)』ナバームがスライム状の体で盾となり、敵の反撃を完封する。

雷覇騎士(ライトニング)』アルフィナがその卓越した剣技で、勇者たちを斬り伏せていく。


 四大魔軍長はさすがの強さを見せつけた。


「ほう。俺たちも負けてられないな」

「だね」


 三面六臂の魔王と魔界最強の魔導師はうなずき合った。


「いくぞ!」

「りょーかい」


 ヴェルファーが剣や魔法を振るうたびに、勇者たちがまとめて吹き飛ぶ。

 ジュダは最上級魔法を連発し、広範囲にわたって勇者たちを掃討する。


 彼ら六人だけで勇者軍が全滅しそうな勢いだった。

 と、


「次は、あいつか」


 ヴェルファーが結界の亀裂を見据える。


 そこから、新たな影が現れた。


 今度は、人間ではない。

 全長数十メートルの巨大な影が、全部で三つ。


「我が名は『土の王』」


 全身が土砂で形成された竜が厳かに語った。


「我は『雷の王』」


 黄金に輝く怪鳥が名乗る。


「同じく『氷の王』」


 九つの頭を持つ蛇が全身をくねらせた。


「聖獣か? それとも兵器の類か?」

「兵器のようだよ」


 ヴェルファーのつぶやきにジュダが答えた。


「見た感じだと、本体は神聖銀(ミスリル)でできているようだね」

「ミスリル──っていうと、魔法に強い耐性を持っているんだったか」

「それに、硬度も並はずれている……なかなか手ごわそうだね」


 ジュダの細身の体から、バチッ、と稲妻がほとばしる。

 強敵を前にして魔力を高めているのだろう。


 ヴェルファーもまた、全身の魔力を燃え上がらせた。


「問題はない。俺とお前ならば」

「そうだね」


 ヴェルファーの言葉にジュダが微笑む。


「私たちが組めば、敵じゃない」


 たとえ、神が相手であろうとも──。

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