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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第11章 神話の戦い

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8 神の試練・さらなる先へ2

「まず、あなたたちが身に着けた力について、あらためて整理しましょう」


 ルージュが言った。


「奇蹟兵装を高出力型に変形させる『混沌形態(カオスフォーム)』。高めた神気(オーラ)によって生み出す局所結界『黒の法衣(カオスジャケット)』。そして瞬間的かつ爆発的に神気を高める技『神気烈破導(オーラバースト)』。全部でこの三つです」

「それによって、君たちは他の勇者を圧倒する能力を備えることになった。魔軍長すら軽く凌ぐほどの力をね」


 ノワールが続ける。


「かつて──神話の時代、勇者たちは誰もがその力を持っていました。現魔王フリードを除けば、歴代最強にして原初の魔王ヴェルファーと戦うために」

「その後、神の力で魔族は弱体化したけれど、神もまた魔王との戦いで消耗したんだ。その余波で勇者もまた弱体化している」


 ふたたびルージュとノワールが交互に告げた。


「あたしたちも、弱くなっている……?」


 つぶやくルドミラ。


「『奇蹟兵装』は神の力を具現化する武具。したがって神の力が弱まれば、その出力も弱まります」

「逆に言えば、神の力が高まれば、『奇蹟兵装』もより強大な力を発揮する、ということだね」


 ルージュとノワールが交互に説明する。


「神は、かつての力を取り戻しつつあります」

「ゆえに、君たちは──その力を具現化できるだけの精神力を身に着けなければならない」

「それができれば、今よりもさらに上の力を得られるでしょう」

「あるいは魔王すら凌ぐほどの力を」

「それが、今回の修業ということですか?」


 ルドミラの問いに、二人の使徒はうなずいた。


「奇蹟兵装を操るのは、所持者の精神力──心、そのもの。今回の修業では、あなたたちはそれぞれが自身の根源と向かい合うのです」


 言ってルージュは、ルドミラたちを見つめた。


「ただし、乗り越えられなければ──あなた方の精神は破壊され、二度と目覚めることはできないでしょう」

「二度と……」


 ごくりと息を飲むルドミラ。


「それでも、やりますか」

「当然ですわ」


 まっさきに進み出たのは、フィオーレだ。


 普段は穏やかで、上品な笑みを絶やさない美貌に──今はすさまじい闘志が満ちていた。

 そして、復讐心が。


「愛する弟の仇を討つために──この心も、命も惜しくありません」

「当然だ」


 シオンも進み出た。

 彼の表情もまた、闘志に満ちている。


「剣聖ザイラスから連なるメルティラート家の誇りを示すために」

「あたしも」


 ルドミラが凛とした口調で宣言した。


 魔族との戦いに闘志を燃やしているのは、彼女も同じだった。


 連綿と続く人類と魔族の戦いに終止符を打つために。

 この世界を、人々を、魔族の脅威から守るために。

 魔族に大切な者たちを奪われた自分のような人間を、もう二度と出さないために──。


「すべてに、決着をつけるために。その力を、望みます!」

「お三方とも決意のほどは分かりました。では、さっそく──」


 ルージュが右手を突き出す。

 そこからあふれ出した薄桃色の光が、粉雪のように舞いながらルドミラたちの体にまとわりつく。


 視界からいっさいの色が、景色が──消えた。


「これは……!?」


 戸惑うルドミラ。


 意識が、すうっ、と浮遊していくような高揚感。

 その後、今度は意識がどこまでも沈んでいくような落下の感覚。


「あたし……は……」


 上下動する意識の中、ルドミラは思い出していく。


 それは自分自身の心の根源。

 勇者としての、彼女の始まり──。


「あたしが……勇者になったのは」


 そう、あれはルドミラがまだ幼い少女だったころ。


 炎に包まれた村。

 魔族に殺されていく近しい人たち。


 忌まわしい惨劇の記憶が、今鮮やかによみがえる──。

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