7 神の試練・さらなる先へ1
「ヴェルファー? まさか、あの『始まりの魔王』ですか」
「ああ。俺とステラ、オリヴィエは彼の元に留まっている。リーガルも一緒に来てほしい」
俺はリーガルに、ヴェルファーのことを語った。
俺たちが置かれている現在の状況を含めて。
「そういえば、まだ魔軍長の方々と会ってません、あたし」
オリヴィエが横から言った。
「魔軍長の中には女性もいるんですよね? 美人ですか? 可愛いですかっ?」
キラキラと目を輝かせる。
口元からはヨダレが垂れていた。
こいつは、可愛い女の子に異様に萌える性質だからな。
過去に来ても性癖全開、オリヴィエはどこまでもオリヴィエだった。
「『雷覇騎士』アルフィナ──剣士タイプの魔族のようだ。外見は可愛らしい少女、といった感じだな」
ステラが説明する。
「……何かよからぬことを考えていないか?」
ジト目でオリヴィエを見るステラ。
「ふふ、ご心配なさらず。あたしの最萌えはお姉さまですからっ」
「別に心配していないが」
「そういうクールなところも素敵です」
「そ、そうか……」
たじろぐステラ。
「かしましい会話はそこまでにして──王よ、ヴェルファーの元に留まっている理由はなんでしょう?」
果てしなく脱線しそうな会話の流れを、リーガルが戻した。
「目的は──とりあえずの拠点といったところだな。何しろ、俺たちには未知の世界だ」
俺が答えた。
「向こうからの要求は?」
「できれば、仲間に加わってほしいと言われている。天軍との戦いに向けて」
ふたたび答える俺。
「だが──過去の世界で戦えば、未来がどうなるか分からない。俺たちがいた時代にどんな影響が出るのかも……な」
「なるほど、私たちの存在が消えることもあり得るわけですな」
リーガルがうなずく。
「最終的にどうするかは未定だが、まずはこの時代に来た魔族全員と合流すること、そして情報収集──この二点を考えていた。ただ前者はとりあえず達成したから、あとは後者だな」
「では、私も参りましょう。魔王様に従って」
「……私はお前を信用していないからな、リーガル」
じろりとリーガルをにらむステラ。
「お姉さま、目が怖いです……」
オリヴィエがおびえたようにつぶやく。
「今は一致団結して、無事に元の時代に戻れるように行動しよう。いいな?」
俺はあらためて全員を見回す。
チームワークには大いに不安を抱く集まりではあるが、ともあれ俺たちは魔王城に戻った。
※
白い輝きに覆われた異空間──勇者ギルドの本拠、大聖堂にある『神託の間』だ。
そこは、地上で『神』と交信できる唯一の場所だった。
ルドミラ、フィオーレ、シオン──四天聖剣の三人は、そこで神の使徒であるルージュとノワールから修行を受けていた。
「すべての存在は因果に縛られています」
ルージュが告げた。
赤い衣装をまとった神の使い──いわゆる天使のような存在だ。
「すべて──とは、神や魔族も含むすべての存在だね」
黒を基調とした衣装をまとった少年、ノワールが告げる。
彼はルージュの双子の兄であり、同じく使徒だった。
「どんな者も因果からは……運命からは逃げられません」
「運命を変えられる者はいないんだ」
「ただし、例外があります」
「それは『因果の外に在る力』を得た者」
双子の使徒は謳うように告げる。
「それはこう呼ばれている──『運命を超越せし者』と」
最後に二人はそう締めくくった。
「前振りの説明はこれくらいにしておきましょうか」
ルージュが微笑み、ルドミラたちを見回す。
「君たち三人をあらためて鍛えてあげよう」
ノワールも同じく微笑んだ。
そして──神の使徒による修業が始まる。
ルドミラたちが、さらなる力を身に着けるために。
限界の先へ進むために。
魔王を、倒すために──。
※日曜更新予定でしたが、少し早めての更新です。次回は3月31日(日)更新予定ですm(_ _)m
【3月31日追記】書籍版2巻の発表が公式から近々ある予定なので、それに合わせて更新しようと思います。4月1日以降に更新がズレる可能性もあります。申し訳ありません……(´Д⊂ヽ
サーガフォレスト様から出版されている書籍版の続刊が決まりました! 読んでくださった方、購入してくださった方、本当にありがとうございましたm(_ _)m
発売日等の詳細は別途お知らせいたします!~








