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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第11章 神話の戦い

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6 合流

 ステラの案内で、俺たちは森の中に降り立った。

 そこで再会したのが、魔軍長の一人である狐娘──邪神官(プリースト)オリヴィエだった。


 以前、俺たち以外にこの時代に来ている魔族がいるかどうかを、ステラに探知してもらった。

 そのときは『アンデッドと獣人系の魔族の反応がある』ということだった。


 獣人系というのは、てっきりゼガートのことだと警戒していたのだが、どうやらオリヴィエだったようだ。


「お姉さま~!」


 ぴょこぴょこと狐耳や尾を揺らしながら、そのオリヴィエが駆け寄ってくる。


「会いたかったですっ」


 そのままステラに抱きついた。


「お、おい、オリヴィエ」

「ううう……一人で寂しかったです~」


 戸惑うステラをよそに、彼女の胸の中で泣き出すオリヴィエ。

 相当に心細い思いをしていたんだろう。


「まったく……」


 ため息をつきつつも、ステラはオリヴィエの頭をよしよしするように撫でていた。


「えへへ、お姉さま優しい」


 そうやって彼女が落ち着きを取り戻し、


「あ、魔王様もご無事で何よりです」


 オリヴィエが俺に向かって一礼する。


「まずは魔王様にお声掛けするべきだろう。私に駆け寄る前に」


 ステラがジト目でオリヴィエをにらむ。


「だって……ふふ、言わせないでください、お姉さま」


 なぜか妙なしなを作り、オリヴィエが顔を赤らめる。


「……何が言いたい」

「お姉さまに抱きしめてもらえて、オリヴィエ幸せです」


 うっとりとつぶやくオリヴィエ。


「お胸の弾力と柔らかさも気持ちよかったです」

「……まったく」


 ステラはますますジト目になり、


「とにかく、臣下としての礼儀はわきまえるんだぞ、オリヴィエ」

「はい、お姉さまっ」


 言ってオリヴィエは、あらためて俺に一礼した。


「魔王様、今ほどは失礼いたしました」

「いや、いいんだ。それよりも……お前以外に、こっちの世界に来た者を知っているか?」

「気が付いたときは、あたし一人だけでした」


 と、オリヴィエ。


「他にも来ている方がいるのですか?」

「私が探知したのは獣人系とアンデッドが一人ずつ。獣人系はお前だったから、残るはおそらくリーガルだろう」


 ステラがオリヴィエに説明した。


「私の探知漏れがあれば、他にもいるかもしれないが──」

「とにかく、そのアンデッドを探してみよう」


 俺は二人に言った。


 それがリーガルなのか、あるいは別の魔族なのか──。

 その答えは、数日後に明らかになった。


「……王よ」


 魔王城の近くで、俺たちの元に現れたのは、古めかしい甲冑をまとった髑髏の剣士。

 予想通り、リーガルである。


「ご無事で何よりです~!」


 と、オリヴィエ。


「待て、オリヴィエ。奴は先の動乱でゼガート側についたんだぞ」


 ステラが彼女を制する。


「あ、そうでした……」

「ゼガートとの最終決戦では魔王様の側についたとはいえ、その処遇は未定だ。死罪だってあり得る」

「し、死罪……」


 オリヴィエが青ざめた顔で言った。

 ステラの方は険しい表情のまま、不死王を見据えている。


「元より覚悟の上。王に刃を向けた時点で、この命などないものと思っている」


 リーガルがオリヴィエとステラを見返した。


「まあ、待て。俺たちは全員、勝手が分からない時代に飛ばされてしまったんだ。しかも帰る方法も分からない。ここは先のいざこざをいったん忘れて、協力しあおう」


 俺はとりあえずステラとリーガルをなだめた。


「よかった……少なくとも、ここでは死罪回避なんですね」


 ホッとした顔のオリヴィエ。


「まずは魔王城に行こう。お前のことをヴェルファーたちに紹介しないと、な」


 すでにオリヴィエのことは俺やステラの仲間、ということで紹介済みだ。

 リーガルについても同様の紹介をするつもりだった。


 そう、今はリーガルも仲間だ。


 今後の処遇がどうあれ──少なくとも、今は。


    ※


 天界──。

 全長百メートル以上もある巨大な玉座に、巨大なシルエットが座していた。


 名を持たず、称号もなく、ただ『神』とだけ呼ばれる存在だ。

 あまねく世界を治め、絶対の力を持つ超越者。


「強大な魔力の気配を感じる──」


 その神が、告げた。


「あるいはヴェルファー以上の脅威になるかもしれんな」


 言って、眼下を見下ろす。

 そこには赤や青、黒などの衣装を身にまとった天使たちがかしずいていた。


「それほどの存在が──?」

「魔族でしょうか?」


 驚いたように顔を上げる天使たち。


「うむ。しかもこの気配は突然出現した。まるで──別の世界から現れでもしたかのように」


 神がうなった。


 あるいは別の時空から、か。


「我らの魔界侵攻は間もなく開始される。邪悪なる者どもを一掃し、すべての世界を神のものとする──一大作戦だ。失敗は許されぬ。不確定要素は確実に排除せねばならぬ」

次回は3月24日(日)更新予定です。

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