5 一夜明けて
俺とステラは同じ部屋を用意されたらしい。
「ヴェルファーはどういうつもりなんだ……?」
「同じ部屋……のようですね」
ステラも困惑気味だった。
「ヴェルファーのところに行って、もう一つ部屋を用意してもらえるように頼んでみよう」
俺は彼女に言った。
「まさか、同じ部屋で寝るわけにもいかないしな」
「………………………………私は、フリード様がお望みなら……」
「えっ?」
「い、いえ、なんでもありませんっ……本当になんでもないですからっ!」
ステラが顔を赤くして叫んだ。
と、
「なんだ。お前たちはそういう関係ではなかったのか?」
ヴェルファーがいつの間にか背後に立っていた。
ジュダも一緒だ。
さらに、
「こんなかわいい子と……うらやまけしからん」
「まったく、爆発してほしいものだ」
「う、羨ましくなんてないからな……本当だからな……」
魔軍長たちまでやって来た。
それぞれが歯噛みして俺たちを──というか、俺をにらんでいる。
「おっさんと美少女のカップル……萌え……」
例によって、一人だけ反応が違うが。
「面白そうだから、迷彩系の魔法で気配を消して様子を見ていたんだよ」
ジュダが悪戯っぽく笑った。
過去の世界でも性格は変わってないな……いや、当たり前か。
「わ、私はあくまでもフリード様の補佐です。そのようなこと、畏れ多い……」
ステラがモジモジとした。
全員の視線にさらされて照れているのか。
普段のクールさの面影もない。
「恋愛は自由だよ。別にいいんじゃない?」
「フリードもまんざらじゃなさそうだし、な」
ニヤリと笑うヴェルファー。
邪気のない笑顔に、俺は思わず苦笑を返した。
「もし部屋が余っているなら、分けてもらえるとありがたい」
「ん、一緒でなくていいのか?」
「いや、まあ……」
微妙に答えに困りつつも、俺は言った。
「隣部屋くらいで……」
「ははは、いいだろう。この部屋の隣も空いているから、それを使え」
「手数をかける」
「何、部屋なんて余りまくっているからな」
がはは、と豪快に笑うヴェルファー。
「本当にいいの? 距離を縮めるチャンスだと思うけどな」
ジュダの方は面白そうに俺とステラを見ている。
「距離を縮める……チャンス……」
ステラは顔を赤くしながら、やけに力のこもった声でつぶやいていた。
結局、俺たちは隣同士の部屋を用意してもらうことになった。
そして、翌朝。
「お、おはようございます、フリード様……ふあ」
挨拶をした後、ステラが可愛らしくあくびをした。
「や、やだ、あたし……申し訳ありませんっ……」
慌てたように顔を赤らめる。
「ん、眠れなかったのか?」
まあ、いきなり過去の世界に飛ばされたんだ。
気持ちが高ぶったり、今後のことで不安になったり──眠れなくても無理はない。
「距離を縮めるチャンス……とか、いろいろ考えて、その……」
「ん?」
「い、いえいえいえいえいえ、なんでもないですっ」
また顔を赤らめるステラ。
俺もそんな彼女にどう接すればいいのか、迷ってしまう。
まあ、今はここに迷いこんだ魔族を探すことが先決か。
「探知を始めようか。頼む、ステラ」
「はい、フリード様」
ステラが、ふうっ、と息を吐き出した。
その額に、黄金に輝く『第三の瞳』が出現する。
「──います。ここから西南に三十キロほどの地点ですね」
すぐに見つけ出すのは、さすがだった。
俺はステラとともに飛翔魔法で城を出ると、彼女が探知した地点までやって来た。
深い森の中だ。
そこには──、
「魔王様! お姉さま!」
オリヴィエが、いた。
次回更新は3週間後の3月17日(日)になりますm(_ _)m
文章仕事が立て込んでいるため、しばらくはまったりペースの更新になるかもしれません。
気長にお待ちいただけましたら幸いです。








