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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第11章 神話の戦い

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2 邂逅

「過去の……魔界?」


 俺は驚いてステラにたずねた。


「それも数十万年以上前の──おそらくは、神話でのみ語られている、超古代だと思われます」

「俺たちは時間を移動してきた、っていうのか?」

「時空の流れが激しく乱れている痕跡を探知しました……もしかしたら、ゼガートの封印装置が破壊された際の爆発エネルギーが影響しているのかもしれません」


 と、ステラ。

 彼女自身も、まだ呆然とした顔だ。


「時間を移動するなど、どのような魔法をもってしても不可能ですし、正確な理由は不明ですが──」

「過去の世界……」


 俺はまだ戸惑いが強かった。

 神話の時代に来てしまうとは、信じられない話だ。


 とはいえ、俺は彼女の『眼』を全面的に信頼している。

 もちろん、彼女自身のことも。


 だからステラが『ここは過去の魔界だ』というなら信じよう。

 そして、その前提で今度の行動方針を決めなければならない。


 まず確認しなければいけないことは、


「俺たち以外にも、この世界に迷いこんだ魔族がいるのか?」

「探ってみます」


 ステラが第三の瞳を輝かせた。


「反応が──二つ。アンデッドと獣人系ですね」


 しばらくして探知を終え、告げるステラ。


 アンデッドというのはリーガルだろうか。

 ということは──獣人系はゼガートか?


「ここは右も左も分からない世界だ。まずはその二人と合流しよう」

「よろしいのですか? もしもリーガルとゼガートだった場合──」


 不安げにたずねるステラ。


「リーガルに関しては、大丈夫だと思う。ゼガートも──奴の切り札はすでに破壊したし、戦闘になったとしても追いこまれる可能性は低いだろう」


 俺は言った。


「敵になる可能性が低いとは言えないが、実際に会って、奴らの反応を見てから対応を決めても遅くない。そもそもリーガルやゼガートとは限らないしな」

「承知いたしました。フリード様のご意志のままに」

「行こう」


 俺たちは進み始めた。


 神話の時代の、魔界の大地を──。




 荒野をしばらく進むと、前方からまばゆい輝きがあふれた。


「なんだ、あれは……?」


 赤、青、緑の三色に明滅する半球形のドームだった。

 あちこちにパイプやチューブが取り付けられた、機械的な外観。

 と、


「接近者発見……マスターの快適な眠りを妨げる者……排除する……」


 無機質な声が響いた。

 装置のあちこちから細い機械腕が伸びてくる。

 十数本の機械腕の先端部に、魔力の輝きがいっせいに宿った。


「おい、まさか──」

「『ラグナボム』」


 爆裂系の最上級魔法!

 同時に放たれた十数発の黒い魔力弾を、


「『ルシファーズシールド』」


 俺は魔力障壁を自分とステラの周囲に張り、しのいだ。


「『ラグナボム』──魔王クラスの魔法を撃ってくるなんて」


 ステラが驚いた顔だ。


「なんなんだ、この装置は」

「立ち去れ……マスターの安眠のために……」


 なおも装置は十数本の機械腕を揺らし、警告らしきものを送ってくる。

 安眠のため、というフレーズがどことなく間抜けだが。


 裏腹に、攻撃魔法は一級だ。


「悪いが、こっちも身を守らせてもらうぞ」


 俺は右手を突き出した。


「『メテオブレード』」


 炎の剣を数十本まとめて射出。

 装置の機械腕をすべて切り裂く。


「中に誰かいるのか」


 俺は装置に向かって問いかけた。


 さっきこの装置が告げた『マスターの安眠のために』という言葉を思い返す。

 ならば、装置内に眠っている誰かがいるはずだ。

 と、


「やれやれ、私の『究極快眠魔導昼寝装置ウルトラアルティメットベッドルーム』が破壊されてしまった」


 ため息まじりの声は背後から聞こえた。


「ここは禁止区域だよ。君たちは、どこから紛れこんだのかな」


 振り向くと、そこに一人の魔族がいた。


「お前は──」


 銀色の髪に紫色の衣装。

 あどけない顔立ちをした少年だ。


「ジュダ……!」


 こいつも過去の世界に来ていたのか。

 俺に気配も感じさせず、背後に回るとはさすがだった。


「ん、誰かな、君は?」


 ジュダはキョトンとした顔で首をかしげる。


「……すさまじい魔力を感じるね。魔力量なら私が魔族一のはずなんだけど、君はそれをはるかに上回っている。一体、何者かな?」


 飄々とした表情が引き締まる。


「それに──なぜか人間の気配までするし」

「俺が分からないのか、ジュダ?」


 眉を寄せる俺。


「私の知り合いに、君のような魔族はいない。そっちの少女もね」


 ジュダは俺とステラを見て、断言した。


 記憶でも失っているんだろうか。

 それとも──。


「どうした、ジュダ?」

「ああ、ちょっと変わった魔族たちと出会ったんだよ」


 ジュダは新たに現れた魔族の方を振り返る。


 こちらは華奢なジュダとは対照的に、筋骨隆々とした偉丈夫だった。

 金や翡翠でかざられた豪奢な甲冑をまとっている。

 いかにも武人といった雰囲気である。


「君も興味があるかい、ヴェルファー? 強さなら、私や君に匹敵──もしくは上回るかもしれないよ」

「ほう、それは興味深いな」


 うなる武人魔族。


 ちょっと待て。

 今、なんて言った?


 こいつの名前は──。


「まさか……」


 隣でステラも息を飲んでいる。


「なるほど、とてつもない魔力を感じる。この地にまだお前のような猛者がいたとは……嬉しいぞ。くははははははは!」


 武人魔族が豪快に笑った。


「俺は魔王ヴェルファー。こいつは側近であり、相棒でもある魔導師ジュダ。お前の名を聞かせてくれ」


 ヴェルファー。


 それは──始まりの魔王の名だ。

次回は2月10日(日)更新予定です。

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