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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第11章 神話の戦い

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1 たどり着いた場所は

 魔軍長ゼガートの反乱──。

 その戦いは俺たちの勝利に終わり、奴はみずから命を断とうと魔導装置に攻撃を加えた。


 巻き起こる大爆発。


 ──そして。

 気がつけば、俺は虹色のモヤの中にいた。


「どこだ……ここは……!?」


 周囲を見回す。


 城の中ではなさそうだ。

 異空間──だろうか。


「誰かいないか……?」


 呼びかけてみるが、返事はない。

 探知魔法の『サーチ』を使ってみたが、敵も味方も──生物の反応が何もない。


 とりあえず進むしかないか。

 俺はまっすぐに歩いていった。


 数十分も歩くと、やがてモヤが晴れてくる。


 荒涼たる大地が現れた。


 太陽がなく、空一面に暗雲が広がっている。

 魔界であることは間違いなさそうだが……。


 と、そのときだった。


「きゃあっ……!?」


 可愛らしい悲鳴が上空から聞こえる。


 見上げると、誰かが俺に覆いかぶさってきた。


 むぎゅぅぅっ。


 柔らかな感触が顔に押しつけられる。


「ひあ、んっ……!?」


 甲高い悲鳴が聞こえた。

 ん、この声は──。


「ステラ……か?」

「え、あ、フリード様……っ!?」


 やはりステラだ。


 ということは、この柔らかくて弾力があるものは、彼女の胸──。


「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? ももももももも申し訳ありませんっ! なんというご無礼をっ!」


 ステラがふたたび悲鳴を上げた。


「ご不快な思いをさせてしまい、大変失礼いたしました……」


 俺からすぐさま離れた彼女は、恐縮しきりといった様子だった。


 ……いや、まあ俺としては不快な思いはまったくしていないんだが。

 正直に打ち明けても微妙な雰囲気になるので、自重しておく。


「でも、よかったです……ご無事だったのですね」


 ステラが安堵したような表情を浮かべた。


「お前も無事で何よりだ」


 微笑みあう俺たち。


「……え、えっと、その」


 ステラがモジモジしている。


「……すみません、思い出してしまって」


 さっきのことで、まだ照れているんだろうか。

 とはいえ、乙女らしい情緒に付き合うよりも、まずは現状確認だ。


「ここがどこか分かるか、ステラ?」

「私の『眼』で見てみますね」


 ステラの額に第三の瞳が開いた。


「っ……!」


 そのとたん、彼女の顔が蒼白になる。


「どうした!?」


 ただ事ではない様子に、俺は思わずステラを見つめる。


「す、すさまじい魔力が……信じられません、フリード様以外にこれほどの力を持つ魔族がいるなんて……!」


 はあ、はあ、はあ、と荒い息をついて、その場にしゃがみこむステラ。


「大丈夫か」

「申し訳ありません。探知しただけで、私にまでフィードバックが……魔力が強烈すぎてダメージを……」


 俺はステラを抱き寄せた。


「しばらく休め。探知は後でいい」

「……お役にたてず、申し訳ありません」

「謝るな」


 俺は彼女を抱く腕に力を込める。


「お前の体のほうが大事だ。無理をさせて悪かった」

「フリード様……」


 ステラは俺の胸元に顔をうずめ、小さく息をついた。




 一時間ほどが経ち──、


「先ほど感じた魔力は、おそらくレベル3000台──歴代の魔王クラスと比べても、突出した数値です」


 回復したステラが説明した。


「フリード様がレベル4000台の後半ですから、それには及びません。ですが、一般的な魔族の常識からは考えられないほどの高レベルですね」


 確か、以前にフェリアの夢の中で出会った過去の魔王たち──ヴリゼーラやエストラームたちはレベル700前後だったな。


 その過去魔王たちと比べても、桁違い──そんな奴が存在するとは。


「ぜひ味方に引き入れたいな」


 ただでさえゼガートの反乱で魔界は混迷状態だ。

 強い魔族は一人でも多く、味方に欲しい。


 ただ、そいつを直接探知するのはステラに危険が及ぶ。

 まずは最初の目的通り、ここがどこなのかを探るべきだろう。


「今度は魔力ではなく風の動きや水の流れなどを感知して、周囲の地形を探ってみます。上手くいけば、ここがどこなのか分かるでしょう」


 と、ステラ。


「さっきみたいにお前がダメージを受けることはないのか?」

「地形に対する探知ですから大丈夫です」


 不安になってたずねた俺に、ステラは嬉しそうな笑みを浮かべた。


「ありがとうございます。私を気遣ってくださって」

「お前を心配するのは当たり前だろう」

「……フリード様」


 ステラは頬を赤く染めて、うつむいた。


「え、えっと、それでは探知を始めますね」


 照れたように微笑み、ステラがふたたび額に第三の瞳を開く。


 鮮烈な眼光が弾けた。

 探知が始まったようだ。


 ──それから、数分後。


「まさか、そんな……!?」


 ステラは愕然とした様子でつぶやいた。


「どうした?」

「いえ、確実なことは申し上げられませんが……」


 ステラは呆然とした顔を俺に向ける。

 動揺したように、その双眸も、第三の瞳も──激しく揺れていた。


「ここは──過去の魔界のようです」

次回は2月3日(日)更新予定です。

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