12 運命を超越せし者
書籍版、明日発売です! なんとか続刊につなげたいので、ぜひよろしくお願いします~!(*´∀`*)
『神託の間』。
地上で唯一、天界の神と通信することができる部屋だ。
「またここに来ることになるなんて、ね」
ルドミラは周囲を見回した。
ここは、神の使いである『紅の使徒』に鍛えてもらった場所だった。
「全員で、必ず強くなりましょう」
隣にはフィオーレがいる。
「ああ、魔王との戦いで散っていた同志──リアヴェルトのためにもね」
シオンも一緒である。
魔界への侵攻作戦で敗退した三人は、勇者ギルドの上層部に呼び出された。
そして、さらなる修行を言い渡されたのだ。
神が、三人を鍛えるために新たな場を用意した、と。
「そろっていますね~、四天聖剣のみなさん」
「一人欠けてしまったのは残念だけど、君たち三人を鍛えさせてもらうよ」
現れたのは、翼と光輪を備えた美しい少年少女。
神の使いである『使徒』──ルージュとノワールだ。
「ふふ、最初に少し説明をしましょうか」
「行っておくけど今度の修業はちょっとハードだよ」
ルージュとノワールが微笑んだ。
二人の使徒の説明が始まった。
「先の侵攻作戦は敗北に終わりました。ですが、十分な成果はありました」
「リアヴェルトくんが持ち帰った『神の力』──正確にはその欠片が、神を覚醒させようとしている。太古、魔王ヴェルファーとの戦いで失われた力がよみがえろうとしているんだよ」
「これこそ天軍の悲願です~」
「神が完全体になれば、魔王軍など敵じゃないからね」
代わる代わる告げるルージュとノワール。
「ですが、そのためにはもっと多くの欠片が必要です」
「君たちは今一度、魔界へ赴き──魔王城の地下に眠る『神の力』の欠片を奪取する必要がある」
「すべての欠片を取り戻したそのときこそ──神が完全に目覚めるとき」
「そのための新たな力を、あなたたちに与えましょう」
「新たな……力?」
ルドミラがつぶやいた。
前回の修業で、自分たちは勇者としての限界を超えた力を身に着けた。
そのつもりだった。
だが、まだ『先』があるというのか──。
「神の覚醒によって、あなた方に授けることが可能になった『第四の試練』」
「だけど、それには危険が伴うんだ」
ルージュとノワールが交互に告げる。
「覚悟は、いいですね」
「覚悟は、いいよね」
二人の使徒が同時に告げた次の瞬間──。
「これは……!?」
ルドミラの視界が切り替わった。
いくつもの光景が同時に浮かび上がる。
おそらくルージュやノワールが見せている映像だろう。
ある者は、百万を超える竜を一人で打ち倒していた。
ある者は、無数の上位魔族を一瞬で封印していた。
ある者は、大陸中の人間を一目で精神支配していた。
ある者は──、
「なんなの、これ……!?」
ルドミラは息を飲んだ。
映像に出てきたのは、いずれも人知をはるかに超える力を持った人間。
そう、四天聖剣ですら問題にしないほどの、圧倒的な『最強』たち。
「すべての存在は『因果』に縛られています」
と、ルージュ。
「因果とは運命──世界を縛る理と言ってもいいでしょう。神や魔王ですら、そのルールからは逃れられません。打ち勝つこともできません」
「つまり、どんな存在も運命には勝てない、と?」
「通常ならば」
ルドミラの問いにうなずくルージュ。
「ですが、例外があります。それは『因果律の外に在る力』を得た者たちです。どうすればその力を得られるのかは、はっきり解明されていませんが……どうやら因果律の誤動作によって生じるようですね。過去にも何人か、その力を得た者はいます」
紅の使徒が語る。
「それらの者たち──いわば、『運命を超越せし者』はいずれも超絶にして無双の力を得ました。現魔王フリードはおそらく、その力を得たのでしょう。歴代のどの魔王よりも隔絶した力は、その証──」
「魔王は、運命を超越した力を持つ……ということですか」
そんな存在に自分はどう戦えばいいのだろう。
どうやって、勝てばいいのだろう?
「運命を超えた力は、神や魔、竜ではなく──なぜか人に宿ります。私たちには不可能ですが、あなた方の誰かなら、あるいは」
「……ですが、魔王もその力を持っているのでは?」
「推測ですが、あの魔王は人間──いや、人間がその力を得た上で、魔王に転生したのかもしれません」
ルージュが告げる。
(魔王が、元人間……?)
ルドミラは眉を寄せた。








