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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第10章 魔界動乱

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12 運命を超越せし者

書籍版、明日発売です! なんとか続刊につなげたいので、ぜひよろしくお願いします~!(*´∀`*)

『神託の間』。

 地上で唯一、天界の神と通信することができる部屋だ。


「またここに来ることになるなんて、ね」


 ルドミラは周囲を見回した。

 ここは、神の使いである『紅の使徒(ルージュ)』に鍛えてもらった場所だった。


「全員で、必ず強くなりましょう」


 隣にはフィオーレがいる。


「ああ、魔王との戦いで散っていた同志──リアヴェルトのためにもね」


 シオンも一緒である。


 魔界への侵攻作戦で敗退した三人は、勇者ギルドの上層部に呼び出された。

 そして、さらなる修行を言い渡されたのだ。


 神が、三人を鍛えるために新たな場を用意した、と。


「そろっていますね~、四天聖剣(セイクリッドエッジ)のみなさん」

「一人欠けてしまったのは残念だけど、君たち三人を鍛えさせてもらうよ」


 現れたのは、翼と光輪を備えた美しい少年少女。

 神の使いである『使徒』──ルージュとノワールだ。


「ふふ、最初に少し説明をしましょうか」

「行っておくけど今度の修業はちょっとハードだよ」


 ルージュとノワールが微笑んだ。




 二人の使徒の説明が始まった。


「先の侵攻作戦は敗北に終わりました。ですが、十分な成果はありました」

「リアヴェルトくんが持ち帰った『神の力』──正確にはその欠片が、神を覚醒させようとしている。太古、魔王ヴェルファーとの戦いで失われた力がよみがえろうとしているんだよ」

「これこそ天軍の悲願です~」

「神が完全体になれば、魔王軍など敵じゃないからね」


 代わる代わる告げるルージュとノワール。


「ですが、そのためにはもっと多くの欠片が必要です」

「君たちは今一度、魔界へ赴き──魔王城の地下に眠る『神の力』の欠片を奪取する必要がある」

「すべての欠片を取り戻したそのときこそ──神が完全に目覚めるとき」

「そのための新たな力を、あなたたちに与えましょう」

「新たな……力?」


 ルドミラがつぶやいた。


 前回の修業で、自分たちは勇者としての限界を超えた力を身に着けた。

 そのつもりだった。


 だが、まだ『先』があるというのか──。


「神の覚醒によって、あなた方に授けることが可能になった『第四の試練』」

「だけど、それには危険が伴うんだ」


 ルージュとノワールが交互に告げる。


「覚悟は、いいですね」

「覚悟は、いいよね」


 二人の使徒が同時に告げた次の瞬間──。


「これは……!?」


 ルドミラの視界が切り替わった。


 いくつもの光景が同時に浮かび上がる。

 おそらくルージュやノワールが見せている映像だろう。


 ある者は、百万を超える竜を一人で打ち倒していた。

 ある者は、無数の上位魔族を一瞬で封印していた。

 ある者は、大陸中の人間を一目で精神支配していた。

 ある者は──、


「なんなの、これ……!?」


 ルドミラは息を飲んだ。


 映像に出てきたのは、いずれも人知をはるかに超える力を持った人間。

 そう、四天聖剣ですら問題にしないほどの、圧倒的な『最強』たち。


「すべての存在は『因果』に縛られています」


 と、ルージュ。


「因果とは運命──世界を縛る(ルール)と言ってもいいでしょう。神や魔王ですら、そのルールからは逃れられません。打ち勝つこともできません」

「つまり、どんな存在も運命には勝てない、と?」

「通常ならば」


 ルドミラの問いにうなずくルージュ。


「ですが、例外があります。それは『因果律の外に在る力』を得た者たちです。どうすればその力を得られるのかは、はっきり解明されていませんが……どうやら因果律の誤動作(バグ)によって生じるようですね。過去にも何人か、その力を得た者はいます」


 紅の使徒が語る。


「それらの者たち──いわば、『運命を超越せし者(フェイトブレイカー)』はいずれも超絶にして無双の力を得ました。現魔王フリードはおそらく、その力を得たのでしょう。歴代のどの魔王よりも隔絶した力は、その証──」

「魔王は、運命を超越した力を持つ……ということですか」


 そんな存在に自分はどう戦えばいいのだろう。

 どうやって、勝てばいいのだろう?


「運命を超えた力は、神や魔、竜ではなく──なぜか人に宿ります。私たちには不可能ですが、あなた方の誰かなら、あるいは」

「……ですが、魔王もその力を持っているのでは?」

「推測ですが、あの魔王は人間──いや、人間がその力を得た上で、魔王に転生したのかもしれません」


 ルージュが告げる。


(魔王が、元人間……?)


 ルドミラは眉を寄せた。

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