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愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第10章 魔界動乱

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11 反撃の決意

 ゼガートとツクヨミが率いる反乱軍は、ジレッガから王都へと進軍した。


「さあ、我が精鋭たちよ。存分に暴れよ」


 ゼガートが、配下で生き残った獣人魔族たちに号令をかける。


「我が命に従え。魔の兵器たち」


 ツクヨミが、配下の魔導兵器群に加え、魔王城地下から発掘した魔想覇王(アシュタロートギア)を操る。


 獣人と兵器の混成軍は、王都内へ一気に押し入った。


 すでに魔王も他の魔軍長も、軒並み捕らえるか、撃退している。

 残るは烏合の衆だ。


 精強を誇るゼガートの軍やそれを補佐するツクヨミの軍を止められるはずもない。


 一方的な破壊と暴力が駆け巡った。

 悲鳴と恐怖の声があちこちで響く。


 もっとも、ゼガートとて王都を滅ぼすつもりなどなかった。


 晴れて魔王になった暁には、自分がここを治めるのだ。

 あくまでも示威程度にとどめなければならない。


「だからといって、遠慮するつもりもない」


 ゼガートが王座についたとき、民が彼を畏怖するように。

 民が彼を讃えるように。


 絶対的な力を示す必要がある──。


「さあ、恐れよ! そして崇めよ! 我こそは新たなる魔王ゼガートである!」


 黄金の獅子の宣言が、朗々と響き渡った。


    ※


「──駄目だ、魔力が湧いてこない」


 俺はため息をついた。


 時間をおけば回復するかもしれないが、そう長くは待てない。

 ゼガートたちが追撃してくるだろうし、何よりも王都をあのままにはしておけない。


 俺は王都の方角を見た。


 無数の炎と黒煙が立ち上っている。

 ゼガート軍が暴れ回っている証拠だ。


 どれだけの破壊が行われているのか。

 どれだけの民が傷つけられているのか。


 想像するだけで、心がえぐられるように痛む。


 奴とて、王都を壊滅させたりはしないはずだが、ある程度の力は示すつもりなんだろう。

 それで、魔界の民が多少犠牲になったところで──おそらく気に掛けることはない。


 ゼガートは、そういう男だ。


「止めないと……!」


 俺は耐えきれずに立ち上がった。


「でも、魔王様はいつもの力が使えないんでしょう? それでは勝ち目が、その……」


 言いづらそうな様子ながら、リリムが俺の前に立ちはだかる。


「あたしは警備隊長として、魔王様を勝算のない戦いに行かせたくありません」


 キッと俺を見据えた。


「リリム……」

「いえ、行かせません! だから止めてみせます。それがあたしの務めです!」


 めったに見せない、彼女の厳しい顔。

 俺を思いやる、顔。


「私も同じです、魔王様」


 ステラが進み出た。


「もちろん、王都は気になります。ゼガートやツクヨミの反乱は許しがたい行為です。それでも──今は耐えるときかと」


 耐えて、反撃の機会を待つべき……か。


 分かっている。

 頭では分かっているんだ。


 だけど、ゼガートたちの軍によって王都が蹂躙されていることを思うと、居ても立ってもいられない気持ちになる。


「一つ、考えている戦法がある」


 俺はステラとリリムを──そしてリーガルにも視線を向けた。


「ただし、お前たちの協力が必要だ。ステラ、リリム、リーガル」


 苦い思いで付け加える。


「かなりの危険を伴うはずだ」


 だが、その危険を乗り越えた先にしか勝利はない。

 三人の力と俺の力、そして煉獄魔王剣(ラーディス)の持つ『特性』──それらを組み合わせれば、万に一つの勝機がある。


「魔王様の命令とあらば、この身と命を捧げましょう」

「あたしもがんばりますっ」


 恭しく告げるステラと、元気よく叫ぶリリム。


「……私も、ですか」


 リーガルが俺を見つめた。

 紅の眼光には、わずかに戸惑いの様子が見える。


「あなたを裏切った私を、信じるというのですか?」

「むしろ裏切りの贖罪だと考えたらどうだ、リーガル?」


 俺は奴を静かに見据えた。


「この絶体絶命の窮地──もしも俺の戦いに貢献したなら、反乱の罪を減じることを考えよう」

「あなたは」


 リーガルが小さく息をつく。


 まあ、半分冗談だが。

 少しは張りつめた雰囲気も和らいだだろう。


「今回の作戦ではお前の力が必要だ、リーガル。魔力をほとんど失った俺は攻撃力が激減している。ステラは直接攻撃タイプじゃないし、リリムたちにしても同じ。白兵戦に長けたお前が加わってくれなければ、ゼガート打倒は成り立たない」


 俺はあらためて髑髏の剣士を見つめた。


「俺に力を貸せ、リーガル魔軍長」

「あなた……は」

「魔王としての命令だ」

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