表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第10章 魔界動乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/193

4 決別の一閃

 封印装置が輝きを発すると、フェリアとオリヴィエの体は無数の光の粒子と化し、装置の内部に吸いこまれていった。


「封印完了、であります」


 と、ツクヨミ。


 檻のような形をしたこの魔導装置の中は、一種の異空間になっているそうだ。

 二人はその中に捕らわれ、半ば仮死状態で漂っている。


 自分たちが解放しない限り、半永久的にこの中で眠り続けるのだ。


「後はステラだけか」


 ゼガートが、ふしゅうっ、と熱い息を吐き出した。


 精神魔術のフェリアや回復魔術のオリヴィエも貴重な戦力だが、彼がもっとも欲っしているのはステラだった。


 先の勇者侵攻戦で見せた、彼女の能力──。

 あれは、おそらく未来すら見通し、因果律をも改変しかねない能力だ。


「奴の力を我がものにすれば、もはや儂に敵はない」


 たとえ相手が史上最強の魔王であろうと。

 あるいは、神であろうと──。




 だが、そのステラの行方はつかめなかった。


 彼女は瞳術使いの魔族──眼魔(がんま)の中でも、飛び抜けた力を持っている。

 おそらく、こちらの狙いを千里眼などで察知し、いち早く難を逃れたのだろう。


「探せ」


 ゼガートは部下たちに命じた。


「奴の力は重要だ。必ず生きて、儂の元に連れてこい。あるいは行方だけでも突き止めよ」


 とはいえ、焦ることはない。

 計画はここまで順調に推移している。


 あとは、ジレッガにいる魔王のことだ。


()が仕留めるならそれでよし。しくじったとしても」


 ゼガートがほくそ笑む。


 そう、仮に奴が仕損じても、彼にはまだ真の切り札がある──。


    ※


「『クリムゾンウィップ』!」


 俺の呪文とともに無数の赤い鎖が出現し、鞭のようにしなりながらシグムンドを縛りあげた。


「くっ、動けない……」

「勝負はついた。抵抗はやめろ」


 俺は冷ややかにシグムンドを見据える。


「ゼガートたちはどこにいる? 狙いはなんだ」

「狙いなど、私が言うまでもないことでしょう」


 すでに覚悟を決めているのか、鳥の獣人は俺をまっすぐに見返した。


 曇りのない瞳だった。

 それは、ゼガートへの忠心から来るものなんだろうか。


「殺してくださいませ、魔王様」


 シグムンドが頭を垂れた。


「死はもとより覚悟の上」

「殺しはしない。だがお前たちには正式な裁きを受けさせる」

「……王への反逆は死罪と決まっているでしょうに」

「最初の質問に答えろ」


 俺は冷ややかに言った。


「ゼガートとツクヨミはどこだ。奴らの狙いは?」

「言うまでもない、と申したはずです。すでにあなた様も感づいているのでは?」


 シグムンドはクチバシの端を、にいっ、と笑みの形に曲げた。


「──王都か」


 俺は仮面の下で眉を寄せた。


 ゼガートに化けたシグムンドがいた時点で、その予感はしていた。

 とはいえ、王都にはゼガートに匹敵する戦闘能力を持つリーガルを残しているし、ステラやフェリア、オリヴィエもそろっているからサポートは万全だ。


 ゼガートとツクヨミが二人がかりでも、そう簡単には崩されない。

 あとは、俺が冥帝竜(ベル)で都に戻れば──。


「申し訳ありませんが、王にはここで私の相手をしていただく」


 声は、シグムンドが発したものではなかった。


 立ち上る、すさまじいまでの濃密な瘴気。

 まさか──、


「お前は……!?」


 振り返った俺は、現れた影を呆然と見つめる。


 古めかしい甲冑をまとった、髑髏の剣士。


「リーガル……!」

「フェリア魔軍長とオリヴィエ魔軍長はすでにゼガート軍の手に落ちました。ステラ魔軍長も行方知れずとか。あなたを補佐する者は、もはやおりませぬ」

「何……!?」


 俺は仮面の下で顔をしかめた。

 フェリアやオリヴィエが敵の手にあることも、ステラの行方が分からないという話も、少なからずショックだった。


「あなたには今しばらく私とともに居ていただく。その間に、ゼガートたちが王都を完全に制圧するでしょう」

「お前も、ゼガートたちに加担するということか」

「左様です」


 リーガルの返事にはまったく淀みがない。


 まったく、迷いがない。


 迷いなく、俺に敵対しようとしている。




『あなたは魔軍長を七人そろえ、魔軍を立て直しました。『光の王』や『神の力』を得た勇者といった強敵も退けました。勇者の攻勢が激化している今……あなたは魔界を守ることができる『強き王』だと私は考えています』

『これからも、あなたの剣として働く所存』




 先日のリーガルの言葉が、脳裏をよぎった。


「……あのときのお前の返事はなんだったんだ」


 俺はやるせない思いで、髑髏の剣士を見つめた。


 ゼガート同様に、リーガルも油断ならない男ではあった。

 だが、おそらくは野心のために反乱を起こした獣帝とは違い、こいつは純粋に魔界を憂う気持ちから俺にぶつかってきたはずだ。


 たとえ、俺と考えが違っても。

 戦いに対するスタンスや、人間への感情は違っても。


 目指すところは同じ──そう思っていた。


「俺とともに、魔界のために戦ってくれるんじゃなかったのか」

「魔界のために戦う気持ちに変わりはありません。ですが、私は──いや、俺は」


 リーガルは骨を組み合わせたようなデザインの禍々しい剣を構えた。


「人間の心を宿した魔王など、認めるわけにはいかぬ!」


 激しい殺意のこもった、強烈な斬撃。


 それはまさに、奴から俺への決別を告げる一閃だった──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。




▼書籍版1~3巻発売中です!

actefkba5lj1dhgeg8d7ijemih46_cnq_s1_151_p3li.jpg av1c16pwas4o9al660jjczl5gr7r_unu_rz_155_p11c.jpg rk21j0gl354hxs6el9s34yliemj_suu_c6_hs_2wdt.jpg

▼コミック1~4巻発売中です!

6q9g5gbmcmeym0ku9m648qf6eplv_drz_a7_ei_1dst.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ