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君が歩くから  作者: るう
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第2話:namae

 遅刻をした生徒は正門からは入れない。裏門から入り、その都度、生活指導部で保管している俗名「遅刻ノート」に名前を記載する決まりだ。

 佐倉井あきら、と走り書きで記入し、なんとなく、ぱらぱらとノートをめくる。当然自分の名前がダントツに多かったが、その中でひとつだけ目をひく名前があった。

『小林未來(ミク)

 少し弱い筆圧で、けれど綺麗に並べられたその文字を見て、ドキリとする。始業式の次の日の日付だった。そして、その後にはその名前は書かれていなかったが、これは遅刻をしなかったからではない。

「佐倉井、何してる。 さっさと教室に行きなさい」

 不意に後ろから声をかけられ、あきらは慌ててノートを閉じて教室へ向かう。

 ドアで遮蔽された声が、ドアをあけると共に鼓膜に押し寄せてくる。教室に入ると、嶋田がにやにやした笑いを向けてきた。

「おまえ、もうこれで遅刻何度目だ?」

「知らね。それよりさ、もしかしたら今日オレ英語(グラマー)当たるんじゃね? 何番目だっけか?」

「それこそ知らね。言っとくけど、見せてやんねぇからな?」

「いいよ別に。コウスケの回答なんてアテになんねぇし」

 軽口を叩きながら、席につく。

 あきらは嶋田の事をコウスケと呼ぶ。光世なんてガラじゃない、というのが理由だ。なんとなく偉そうではないか。

「言ったな? 悪いが今日はそんな昔のオレじゃないぞ。姉貴にやってもらったからな。全問正解だ」

「ほお。しかしよくやってもらえたな。あの守銭奴に。いくら払ったんだ?」

「1000円だ。おかげでオレは今日の昼飯は抜きだ」

「……相変わらずの守銭奴っぷりだな。コウスケのねーちゃん」

 言いながら、ノートと教科書を出す。

 嶋田には4つ年の離れた姉がいて、かの有名なT大学に入れるほどの成績の持ち主だった。

 しかも同じ高校だったので、嶋田はいつも姉と比べられている。

 どうして、決して成績も良くない嶋田と同じ高校なのかというと、「桜が綺麗だからだ」ということらしい。変な所で乙女心を見せてくる。性格も特殊で、お金をもらわないと他人のためには指一本たりとも動かさないというポリシーの持ち主なのだ。決して豪遊しているわけではないのだから、彼女の貯金額はいったいいくらになってるんだろう、とあきらは常日頃から思っている。それを抜かせば、姉御気質でなかなか楽しい姉だ。

 さて。

 グラマーは一時間目だ。

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