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FANCY NOVELS  作者: ハゲゼビア
301/302

WONDERFUL PEOPLE#28

 ジョージは三番目の犠牲者宅を訪れた。何か手がかりが無いか探してみるが…。

登場人物

―ジョージ・ウェイド・ランキン…息子を失った退役軍人、『ワンダフル・ピープル』紙の記者。



一九七五年、九月:ニューヨーク州、マンハッタン


 三番目に殺された中年の黒人男性、彼はここ何年かの性的マイノリティの活動にも参加したりして、己の複雑なアイデンティティを隠さないようになったらしかった。

 しかし両親とは疎遠になってしまい、その点をずっと引き摺っていたとの事であった。女装した写真は女性にしか見えず、中年にしては容姿端麗なようであった。自認では男性との事で、ジョージは頭の中で『彼』と呼んでいた。

 人種・民族も性別も年齢もばらばらな一連の殺人。なるほど、正体不明の殺人鬼は無差別的であるように思われた。

 だが、何かあるはずだ、何かしらの共通点があって、それが殺される事になってしまった理由のはずであった。

 更に調べた結果、この男性はある時からあまりいつもよく顔を出すクラブにも現れなくなったとの事であった。

 それが『異変』に対する反応なのであろうか。だがよくわからなかった。家は綺麗なアパートであり、中産階級の上の方という感じがあった。

 しかしこの部屋も他の二件と同じく特に違和感は無く、何かしらの魔術的なものがある風でも無かった。

〘お前はまたもや悩んでいるわけだ。いかにもそうであろう、共通点を見付けられぬのではな。言っておくが、この部屋には魔術が使用された形跡は無い。その殺人者もまた、魔術ではない何かによって殺しているという事だ〙

 革命前のパリで流れた美しい音色のごとき声が響き渡り、部屋を構成する原子の一つ一つが畏れ入った。

 畏怖されるべきものが次元の門を作ってその姿を見せ、ジョージはうんざりしてそちらを見た。

「そうか、だが…」とそこで気が付いた。「魔術ではない殺し方か。まあ超自然的な何かしらの作用で殺すとか、そういうアレか」

〘そういう事だ。もう少し色々調べてみてはどうだ? そうすれば敵が殺害に使う手段がわかるであろう。これまでの部屋よりも、更に入念にな〙

 ジョージはやれやれと思いつつ調べ始めた。更に入念に、と言われたのでそれっぽくした。そう言えばこの部屋は不気味だとかでまだ犠牲者の私物が残っていた。

 もうかなりの期間が経っているが――それはいい、とても好都合である。

 犠牲者が往事に身に着けていた服を見るためにクローゼットを開けた。

 合板の戸を開けるとその中には普通の男物の服と、露出度の高いぴっちりとしたドレスがそれぞれ数十あった。ジョージはそれらを取り出してみた。

 面白い事にこれまでの死者の部屋の大家はいずれも、彼が中を見たいと言うと快諾した――あるいは勝手にやってくれ、悍ましいからという事なのかも知れないが。

 さて、ベッドの上に何着か広げてみた。何かがあるのではないかと思ったが、やはり何か細工された風でも無かった。

 そしてこれまでに見てきたいかなる超自然的な何かとも関連は見られず、ただの服でしかなかった。

 しかしそれはただの服ではないと思い直した。これは犠牲者にとっての何かしらの思い出なり思い入れなりがある品なのではないか。

 恐らくはそうであろう。無碍に扱うべきでもあるまい。

 敬意を払い、その上で何か無いか探らねばなるまい。


 結局のところ中年の黒人男性宅からは目ぼしい発見は無かった。しかし失望は無かった。

 黒人の父とラテン系の母の間に生まれた娘もまた犠牲者であり、ジョージはそちらにも訪れた。

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