エレン様のプライド 2
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翌日は学園に登校する日である。
聖女科に向かうと、シャルティーナ様が何やら慌ただしく準備をしていた。
「おはようございますシャルティーナ様。お手伝いしましょうか?」
「おはようスカーレット。お願いしもいいかしら?」
シャルティーナ様はビーカーとお水、それから大量の薬草を準備していた。お薬を作る練習に使うには薬草が多い。
「今日は薬草がたくさんですね」
「そうなの。実はね、昨日ベルンハルト様へ国王陛下からご相談があってね。聖女たちのストライキの余波で、神殿が聖女の薬の値段をさらに吊り上げたらしいの。ただでさえ聖女の癒しが受けられないってお城に苦情が殺到しているのに、ここに来て薬の値段までどんどん高くなって、陛下としても頭を抱えちゃってね。薬だけでもどうにかしたいってご依頼があったのよ」
シャルティーナ様によると、聖女科で作る聖女の卵の試作品の薬を、聖女の薬より価格を下げて提供する検討に入ったらしい。
聖女の仕事場が完成していないから、聖女の薬をお城でどのように管理してどの金額で販売するかはまだ決まっていないけど、「聖女の卵」が作った薬なんだから多少の無理はきくだろうって、かなり強引に決定したらしい。
もちろん、聖女科のみんなは薬を作るのに慣れていないからそれほどたくさん作れない。
が、「聖女科で作った薬」イコール「聖女の卵が作った薬」とするため、シャルティーナ様もこっそり参戦することにしたようだ。リヒャルト様の言うところのグレーゾーンというやつだそうだ。ばれなければいいとのことである。
「スカーレットも内緒よ」
「はい。わたしも作りますか?」
「それについては悩みどころなのよね。ほら、スカーレットって規格外だから……薬の性能がよすぎると、ねえ? リヒャルト様からもスカーレットが作った薬の取り扱いについては厳重注意を受けているし……、しばらくは様子見かしら?」
グレーゾーンであってもわたしの参戦は見送りだそうだ。
「作るとしても数が限られるから、お城が誰に提供するか管理すると思うけど、うるさい貴族はこれで少しはおとなしくなるんじゃないかしら?」
根本的な解決にはならないけど、ひとまず問題の先送りくらいには役立つだろうってシャルティーナ様が言う。
まあ、聖女たちがストライキをやめない限り、解決にはならないもんね。
「リヒャルト様も旧王宮の改装を急いでくれて、来週には稼働できそうなのよ。わたくしのお友達の聖女たちが協力してくれるから、来週になればもう少しましになると思うの。それまでに販売価格や方法についても煮詰めてくれると思うし。本決まりじゃなくても、聖女科みたいに仮決定でもいいのよ。それがあれば、旧王宮で作られた薬の販売が可能になるもの。そのときならスカーレットの参戦も認められるかもしれないわ」
わたしが思っていた以上に、聖女のストライキで国は大混乱に陥っているみたいだった。
でも、国の方針で、聖女に仕事を強要してはならないってことになっているから、強引に抑えつけて仕事をさせるのは不可能だし、わたしも聖女仲間にそんなことをしてほしくない。
だから、聖女たちが何故ストライキを起こしたのか、そしてどうすればそれをやめてくれるのか、そこのところを解決してもらうしかないのだ。
「さてと、そういうわけで、スカーレット、備品室から乳鉢を運んでくれるかしら? わたくしは薬を詰める瓶を用意してくるわ」
お水は学園の使用人さんが汲んできてくれるらしい。
シャルティーナ様はわたしに備品室の鍵を渡して、忙しそうに早足で歩いて行った。









