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【web版】最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる  作者: えぞぎんぎつね
2章

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66 魔狼の森の外も調査しよう

前話のあらすじ:近くの森にドラゴンがいて、ヴィヴィが漏らした。

 俺は竜たちを魔法のかばんに放り込む。

 今回はあまり解体していない。ルカが調査しやすいようにだ。


 作業はあえてゆっくり行う。

 モーフィに抱きついているヴィヴィが落ち着くの待つためだ。


 作業が終わった後、ヴィヴィに尋ねる。


「ヴィヴィ。大丈夫か?」

「大丈夫なのじゃ」


 気丈にもヴィヴィはそういって胸を張る。

 だが下半身はびしょびしょだった。


「えっと、一旦村に戻ろうか」

「なぜじゃ! まだ解明されておらぬのじゃ!」

「ヴィヴィがそういうならいいけど……」


 ヴィヴィが漏らしていないというていを固持するなら、俺は尊重したいと思う。


「フェム。周囲に強そうな魔獣の気配はある?」

『あるのだ』

「そうか。とりあえず狩りながら行くか」

「わふ」


 俺たちは周囲を探索した。

 その過程で竜種や熊、バジリスクにヒドラなど、多様な魔獣と遭遇して撃破した。


「やはり魔獣が多すぎるな」

「そうじゃな」

「フェム。もともとこの辺りの魔獣の生息数と比べてどう?」

『とても多いのだ。3倍ぐらいいるのだ』


 3倍とはただ事ではない。

 そして、遭遇する魔獣には、このあたりを生息域としていないものも多い。


 走っていたフェムが突然止まる。

 耳をピンと立て、鼻をひくひくさせている。


「どうした?」

『腐肉……いや、血と骨の臭いなのだ』

「ふむ。ちょっと向かってみて」


 フェムが案内してくれた先には、大量の骨があった。

 竜種の骨だ。地竜や、ワイバーンの骨もある。熊やバジリスクの骨もある。

 血はついているが、肉は残っていない。


「一体これはなんじゃ?」

「調べてみよう」


 骨には歯形が残っている。肉はこそぎ取るように食べられていた。


「ふむ。飢えた魔獣の食事後だな」

「地竜が捕食されるのかや?」

『歯形と臭いから考えて、食べたのも地竜なのだ』


 臭いを嗅いでいたフェムが言う。

 となると、飢えた地竜どうしで共食いをしたのだろう。


 おそらく、ゴブリンや魔鼠などの魔獣はすでに食い尽くしたのだろう。

 その過程で、ゴブリンたちは魔狼の群れの縄張りに逃げ出したのだ。

 弱い魔獣がいなくなり、餌がなくなり徐々に強い者同士で戦ったのだろう。


「餌が足りなくて同種同士で共食いするなど、恐ろしいのじゃ」

『共食いではないかもなのだ。これは死体食いかもしれないのだ』

「ふむ?」


 竜種は普通そんなことはしない。誇り高き竜種は、そこらに落ちている死骸を食べたりはしない。


『綺麗すぎるのだ。戦って死んだのなら骨が砕けてたりするものなのだ』

「なるほど」


 フェムの指摘を受けてから改めて調べると、確かにきれいだ。

 歯形はついているが、それは肉をこそぎ取るためについたといった感じだ。

 戦闘の際についた歯形ではなさそうだ。


「ふむ。なんで死んだのじゃろうか?」

「調べてみないとわからないな。骨も持ち帰ろう」


 俺は骨を魔法のかばんに入れていく。


「それにしてもよく入るかばんじゃな」

「高いやつだからな」


 かばんには、まだかなりの余裕がある。


 骨を調べていたフェムが言う。


『飢え死にだとおもうのだ』

「なんでそう思う?」

『血に含まれる魔力がうまくなさそうなのだ』


 魔力を餌にできる魔獣ならではの感覚だ。

 魔導士は魔法の痕跡はわかるが、魔力の味はわからない。


「うまくなさそうってのは、魔力濃度が低いってこと?」

『たぶんそうなのだ』


 それを聞いていたヴィヴィがつぶやく。


「飢え死にするぐらいなら、移動すればいいのじゃ」

「仮に飢え死になら、そうできない理由があったんだろうな」

「理由ってなんじゃ?」

「ここに逃げてきたが、魔狼の縄張りがあって、それ以上進めない。そんな状況だったのかもしれない」

「地竜が逃げてきたというのかや?」


 ヴィヴィが顔をしかめる。

 地竜が逃げ出すということは、それ以上に強い何かから逃げ出したということ。

 恐ろしい話だ。


「もしそうなら、魔狼の縄張りに突っ込んだ方がいいのじゃ」


 ヴィヴィはそういうが、魔狼王に率いられた魔狼の群れは強い。

 竜種であっても、相手にしたくない相手だ。

 死肉であっても、餌があるなら戦いたくないに違いない。


「魔狼は強いからな。それでも、こっちに攻めてくるのも時間の問題だったかもしれない」

『そうなったら撃退してやったのだ』


 フェムは力強くそう言う。

 魔狼の群れなら善戦するだろう。だが犠牲者もたくさん出たに違いない。


「それにしても、地竜が逃げ出すって余程なのじゃ」

「そうだな。逃げ出した原因を見つける必要がある」

『わかったのだ。強そうな気配を探すのだ』


 フェムの案内で、夕方まで周囲を探索する。

 だが、地竜が逃げ出すほどの相手には出会えなかった。


「野宿するのじゃな?」

「いや、帰るぞ」

「なぜじゃ? 早く原因を突き止めねばならぬのであろ?」

「明るいときに見つけられなかったのに、暗くなった後に見つけられる可能性は低いからな」


 フェムやモーフィは鼻が利くが、人間はどうしても目に頼らざるをえない。

 それに、ヴィヴィの下半身は汚れたままだ。早く着替えたいだろう。

 俺たちは一度ムルグ村に戻ることにした。

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