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××××年 十月九日
今日は何だかんだ結構大変だった…………周りが(と言うか緋山が)。
放課後に緋山と一緒に帰ることにしたのだが、その途中に緋山が、とうとう呉島君に呼び止められた。
いつか来るとは思っていたわけなので、俺は驚くことはなかったが、呼び止められた緋山は疑問符を浮かべていた。
まあそれもそうだろう。
呉島君が教室を訪ねたときに絡むのは、大体星海さん。
そして、呉島君と揉めるのは東野だったからだ。
そして緋山が、
「えっと……確か呉島蓮君……だったか? 東野から聞いたような気がする。……いったい何の用だ?」
「ええ……少し貴方と話したくて」
そう口を開く呉島君。
そしてチラリと俺を見てくる。
どうせ席を外してほしいとかそういう意味だろうが、断った。(面白そうだからだ)
そこからの話は、単純だった。
呉島君が緋山に星海さんに近づかないようにいい、緋山がそれに対して不快をあらわにしたのだ。
淡々と外堀を埋めるような言い方をする呉島君に、そんなことはお構いなしに感情のまま話をする緋山。
その口論の中で緋山が口にした、
――友達に近づいてはいけない理由なんてない!!
と言う言葉に、僅かにイラついた表情を呉島君は見せた。
恐らくそれは、呉島君が俺と同じように、その言葉を聞いて思ったからだろう。
――本当にただの友達と思っているのか……? と。
正直、ゲームの呉島蓮の印象が強すぎるせいで、二人の会話……と言うか、緋山の言動にヒヤヒヤしっぱなしだった俺。
が、当の呉島君は冷たい目で緋山を睨みつけ、「話にならない」と呟き去って行った。
無事に終わった……と思っていいだろう。
緋山はその後も少々イラついたままだった。
緋山と別れ、家路につく途中、ふと春風さんと桐野先輩が喫茶店から出てくるのが目に入った。
少し驚いた。
春風さんが桐野先輩と話すときは、勉強の事を聞きに行くか、学校行事の相談くらいしかないと思っていたからだ。
気になって挨拶がてら声をかけ、その後に「二人とも仲好かったんですね。知らなかったです」と言ってみた。
「ええ、美鈴ちゃんとは結構仲がいいの。この子いい子だし。ふふ」
「え、ちょ、いい子って子供みたいじゃないですかぁ……あ、コホン……私も桐野先輩には色々と相談に乗ってもらってるの」
そうだったのか、とその場は納得して、二人に別れを告げた。
が今、日記を書くとき改めて思い出したとき、どこか頭の中に引っ掛かりを覚えた。
……そう、春風さんと桐野先輩が仲良くなるのって、なんかあった気がする。
………………あー駄目だ思い出せない。
……いずれ思い出すだろうし、今日はもうねる。




