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××××年 十月七日
観察を続けてきて、気づいたことがある。
最近…………宮倉くんと奥仲さんが、どうもいい感じに見える。
同じ陸上部で、方針が変わったことで男子女子合同練習が増えたらしい陸上部。
加えて二人は同じクラスで、文化祭準備も一緒にやっていることが多いらしい。
……と、藤原さんに聞いた。(藤原さんのクラスと二人のクラスは合同で出し物をするらしい)。
そのせいなのかもしれないが、最近は一緒にいる印象の方が強い。
そして周りも、その様子をほほえましく見守っている感じだ(どっちも小さいから母性父性を掻き立てるのだろうか)。
思い返してみると、確かに最近は緋山の所に奥仲さんが来ることは少なかった。
宮倉くんは割と頻繁に星海さんに会いに来ていたので気づかなかったが。
そっちの方も一体どうなっているのか詳しく観察したいところではあるが、さすがにこれ以上観察対象を増やすのは難しい。
今でさえしっかり観察できてない上に、二人は他クラスだ。
……とりあえず今観察している二人が多少落ち着いてきたら(?)宮倉くん奥仲さんも観察する!
――なんて決意を授業中、窓の外を走る宮倉くんを見ながら固めていた。
昼休みになり、例のごとく四人(緋山、星海、春風、東野)で昼食かと思ったら、春風さんはどこか別な場所に弁当を持っていき、星海さんは他のクラスメートと弁当を食べていた。
で、緋山は「久しぶりに一緒に食おうぜ」とか言いながら俺の席の前に座り、東野も特に何も言うことなく、隣の机を俺の席に近づけた。
…………まあ、いいけどさ。
食べてる間の会話は、他愛もない会話なのだが、意図してなのかそうじゃないのか、一向に星海さんの事は話題に出なかった。
まあ、同じ教室にいるわけだし、当たり前と言えば当たり前なのだが。
てなことを考えながら弁当を食べていると、天野先輩が教室に顔を出してきた。
瞬間、僅かに眉間にしわがよる東野。
どうやらまだ関係改善とはなってないようだ。
その天野先輩は文化祭の関係で、春風さんに用があったらしい。
教室にいないとわかると、すぐに教室から去って行った。
ただ、一瞬だけこちらを――恐らく東野を見たような気がした。
で、なんとなく気になったので、放課後部室に行く前に天野先輩の所に行ってみた。
単刀直入に聞くと天野先輩は一瞬驚いた顔をしたが、俺がある程度事情を知っているとわかると、話してくれた。
「確かに俺も、星海さんには好意を持っていた。が、まあ……彼女の気持ちがこちらを向かないのは見てわかっていたから、身を引いていたつもりだ」
え? って思った。
現にここ最近も星海さんにアプローチをかけているように見えたし、東野も苛立っていた。
そんな俺の表情を読み取ってか、苦笑いしながら話してくれた天野先輩。
「みなまで言うなよ。あれは……英司の事があるからだ」
そう言って話してくれたのは、東野の昔の話だった。
両親の関係で子供のころから関わりがあった二人。
天野先輩が一つ年下の東野に対して出来る限り兄貴ぶって接しているうちに、一応は目上として……困ったときに相談できる相手として見てくれるようになったと。
そのせいかどうかは分からないが、天才と呼ばれる東野でも、天野先輩からすると、どこか引け目を感じているように思えるそうだ。
「英司は能力こそ高いが、人付き合いとなると、てんで駄目になる。この学校で、お前さんや緋山君と仲良くなれたのは奇跡と思えるほどだ。……そんな英司が本気で誰かを好きになったなら、俺なんか気にせず自分の想いを貫いてほしいと思ったわけだ。あいつはそれだけ魅力的な奴だしな!」
と、天野先輩は言い切った。
正直、若干ずれた考えだな……とは思った。
何せ普通の女子なら、何とも思ってなくても天野先輩に優しくされたら、簡単に落ちかねない。
それに、俺から見れば、言うほど東野は天野先輩に引け目を感じてるとは思えない。
だからこそ、あれほど天野先輩に反発するわけだし。
まあともかく、今の天野先輩の行動の理由は分かった。
……確かに、今の所星海さんも東野に悪い印象を持ってはいない。
どうなるかはまだわからないのだ……。
なんて考えながら、天野先輩に礼を言い、部室に向かった俺。
あ、その前に一つ天野先輩に質問をしていたんだった。
「ちなみに春風さんはどこにいたんですか?」と聞くと、「ああ、三年の教室にいた。灯台下暗しと言うやつだな」とのことだった。
部室に着くと、何故かそこには腕を組んだ顧問の先生が待ち構えていた。
どうやら部活の方の文化祭準備を理由に、クラスの文化祭準備をさぼっていたのがばれたようだ。
部活の方はもう終わってるし。
てなわけで、少しの間、部室の鍵を没収された。
使うときはちゃんと理由を話してから借りに来るようにとのこと。
むー……ゲームの内容で文化祭の準備を省いている理由がわかった。
ものすごく忙しいので、それを入れてしまうと、ゲームとして成り立たないからだー!




