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ギャルゲー乙女ゲー観察日記  作者: 蛇真谷 駿一


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 ××××年 十月一日


 昼休み、星海さんから「久しぶりに一緒に食べようじゃないかー」と言うお誘いを受けた。



 そういえば確かに、ここ最近星海さんは春風さんや、東野や緋山と昼食をとることが増えていて、俺はそれをはたから見るために参加してなかった。



 場所を変えようと言われたので、迷った挙句部室を選択。

 俺が鍵を持っていて、基本的に部室で昼を食べないので、ここは人が来ないと思ったからだ。




 一応場所を変えようと言われた時点で、何か話したいことがあるのかと思ったため、そうしたのだが、ほとんど雑談だった。


 拍子抜けの感じだが、せっかく話しやすい状況を作ったので、俺から質問することにした。



「それはそうと、俺と二人で昼飯をとってていいのか? あいつからしたらあれだろうし」


「ふぇっ!? あ、いや! うちと緋山君は別に何もなくって、前はたまたま……ホントにたまたま道で会って、一緒に登校したからで、あの後は一回も一緒に登校してないし!!」



 …………聞いてないことまでどうもありがとう。

 これはどう見ても……ですね。



「俺は誰がどうとは言ってないよ」

「…………はっ! 謀ったな!」


 謀ってない。語るに落ちただけ。



 根掘り葉掘り聞いてもいいが、流石に気が引けたので黙って弁当を食べ進めた。


 だが、逆に無言がきつかったのか、言いづらそうに星海さんから口を開いた。



「うー……だっていろんな人に緋山君とのこと聞かれるし、美鈴ちゃんとか他のクラスの人とか、東野君とか……後、生徒会長二人からも聞かれたし」


 ……この時、危うくお茶を吹き出しそうになった。



 ――あの生徒会長二人は何をやってるんだ。


「よく知らなかったけど、緋山君って人気あるんだねぇ。あんなに聞きに来る人がいるなんて……というか、情報が回るのが早すぎるよ」

「それは同意だけど、緋山の人気のみじゃないのはわかってる?」



「転校して一か月のうちが人気な訳ない! ……と言いたいとこだけど、一部が…………でもそれは仕方ないでしょ! だってここはゲー……っ! ……うー……何でもない。多分、モテ期的な何かだと思う」



 ここはゲー……ね。


 多分、ゲームの世界だから攻略キャラにモテるのは仕方ないってことかな、言いたいのは。


 さすがにゲームで言うならモブの俺にそんなことを言うわけにはいかなかったと。



 まあ、どういう経緯でこの世界にいるのかはわからないけど、いろいろ思うところがあるんだろう。


 でもま! それだとゲームで言うところの攻略キャラであるあいつらがかわいそうなので、フォローしておいたけどね!



「なんか、緋山の時とは違って、微妙に嫌そうだなぁ。俺が知っている限りみんな悪い人じゃなかったし、かっこいい奴らばっかなのに」

「それは……」


「勘だけど、星海さんはなんか、他の誰かから話しかけてくる人たちの前情報みたいなの聞いてるでしょ? 噂とか(ゲームの情報とか)」

「え?」


「なんとなく見てたらわかる。でも、それを全部信用して話しかけてくれる人たちを避けるのは違うと思う。みんな――生きてる訳だし、嫌な部分はあるだろうけど、もちろんいい部分だってある。少なくても、俺が知ってるやつで星海さん声をかけてくる奴らは、他人の嫌がることはしないはずだよ」


 俺の言葉にポカンとしてしまった星海さん。

 これで多少は攻略キャラの――この世界の印象が変わればいいけど。



「さー、昼休みもなくなってきたし、さっさと食べ終えてしまおう」

「……あ、うん」


 その後は何事もなく一日が終わった。

 観察はしていたが、星海さんは何かを考えている様子だった。






 …………あ、偉そうに言ってたけど、俺も呉島蓮については、ゲーム情報のせいで若干避け気味だ。

 俺も気にしないようにしないと。




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