10 ロイスの魔法と招待状
全編、一通り誤字脱字を修正致しました。
第二王子派閥との夜戦は日に日に厳しくなっていた。
ロイスによっては運び込まれる怪我人は増えている。
中には助からない人もいる。
魔法使いは貴重なため、すぐには集めることがでない。
なんでも、敵側に強力な魔法使いがあらわれ、拮抗していた戦力がいっきに傾いた。
「紅蓮の魔術師」とよばれるその魔法使いは、二つ名通り、強力な炎魔法を使うとのこと。
そうして、私も戦闘に参加する事となった。
魔法使いは4人一組で動く。
私は回復役+遠距離攻撃役。
仲間が怪我したら瞬時に回復呪文を唱える。
隙を見て光系統魔法で攻撃をして味方を援護する。
ロイスが私の傍で護衛をしつつ全体を動き回り、他の二人の魔法使いが近接戦闘をこなす。
初めてロイスが戦う所を見た。
ロイスは雷系統魔法の使い手だった。
杖からだす雷撃での遠距離戦闘、短刀に電撃を付与して闘う近距離戦闘共にレベルが高く、オールマイティな魔法使いだった。
他の二人は炎系統の魔術師。火球をバンバン飛ばしていた。
私は大抵することがなかった、ほとんど他の3人で片が付く。
そのためか僅かに油断していた、その瞬間を狙われた。
突然の火球が私を襲う。
これまで見たどの火球よりも真紅に近いそれ。
段違いの早さを見せるそれは私にあたる寸前だった。
私は横から衝撃を受けてその攻撃をなんとか避けた。
気付くとロイスが私を抱えていた。
「大丈夫か?」
「うん」
私はただ頷いた。
あまりの事に反応できなかった。
私を狙った火球が当たった家は溶けていた。
石壁が溶解し、家の中が見えている。
普通の火球では家の壁が焦げる程度。
私を襲った火球の威力は桁外れだった。
そしてその発射位置には、真紅のローブに赤い仮面の人影。
「っち、紅蓮の魔術師」
ロイスが隣で苦々しく口走る。
ッと、同時に3人の魔法使いが現れる。
「俺が紅蓮を相手にする。他の奴を頼む」
そういうとロイスが紅蓮に向かって雷撃を飛ばしながら駆け寄る。
私は襲ってきた三人の内の一人に向かって杖を向け、光の矢を飛ばす。
が、避けられる。
他の二人は仲間の魔法使いが相手をしている。
ここで私がしくじれば一気に不利になる。
相手は私が遠距離タイプとみたのか、火球を飛ばしながら接近してくる。
私はそれをなんとか避ける。
わずかにローブがこげる。
私は思う。
出し惜しみしているとやられると。
私は今でもずっと魔法の訓練をしている。
夜戦にでるようになって、「これではまずい」と思い、魔法の種類を増やした。
私は祈りを魔力に代え、呪文を唱える。
心の中で、あるイメージを鮮明にする、
イメージを固め、それに形を与え、祈りを注ぎ込む、
光り輝くそれを私はイメージする。
そして杖を相手に向ける。
杖の先から出た白いキツネが、空中を疾走し、相手の魔法使いに食らいつく。
そして噛み千切る。相手の生命力を。
魔力消費が激しいので抑えていた私の必殺魔法。
攻撃を食らった魔法使いは地面に倒れ、動かなくなる。
私がふと周囲を確認すると、他の皆なまだ戦っていた。
ロイスは紅蓮の魔術師に近づいて、電撃を纏った短剣で刺そうとするが、相手が出す炎の壁により中々近づけにいた。
私が杖を紅蓮に向け、光の矢を飛ばす。
紅蓮の魔術師はそれを避ける。
ロイスは私の方を見る、そして、杖をこちらに向ける。
すると、私が倒した魔法使いから青い光の塊が現れ、ロイスの方に飛んでいく。
それがロイスの周囲を巡回する。
ロイスを中心に浮遊する青い光の塊。
その光景を見た瞬間、私の心を冷たい液体が流れた。
何故か分からないが、心がざわめき、震えた。
心の深い部分で私は恐怖を感じていた。
「穢れた魔法使いが」
その光景を見た相手の魔法使いが口々に叫ぶ。
相手の魔法使いに焦りが見える。
同じようにその光景を見ていた紅蓮の魔術師は、口笛のようなものをふき、私達から遠ざかっていく。
相手の魔法使いの仲間は、その音に従うように去っていった。
◆◇◆
紅の姫から手紙が来た。
これでもかと装飾された手紙。見るからにお金がかかっている代物だった。
中身を確認すると、それは招待状だった。
第二王子と紅の姫との結婚式。
私は内容を読み終えると、出席の返事を書いた。
そうしていると、セバスが寄ってくる。
外出の支度をしたセバス。
セバスは右手に持っている時計を刺し告げる。
「お嬢様、お時間です」
「分かりました」
私はセバスに連れられとある場所に赴く。
王都にこっそりと佇む建物。
日の光が当たらない暗い場所。
建物の大半が地下に造られている。
厳重な門を何度か抜け、ようやく目的の場所にたどり着く。
そこは、現代の隔離病棟の様な場所。
暗い廊下の両脇に、牢屋の様な部屋がいくつも並んでいる。
その中には夢見がちな表情の者や、狂ったように笑っている者、表情が全くない者など、様々な人々がいる。
共通しているのは違和感。この中には通常の人は一人もいないように見える。
時折奇声が聞こえる。
そんな声を無視し、通路を進む。
セバスは一つの牢の前で止まる。
「こちらです。ヨーク伯爵のご子息になります」
牢獄の中では、狂ったように何か字のようなものを壁にかいている男。
私はその男を観察する。
体に傷は無い。
ただ、表情が狂っている。
異様にひきつった笑顔で何かをずっと書きなぐっている。
書くことで何かが満たされているのかもしれない。
それは文字ではなく、何かの記号。
私には意味が読み取れない。
私はセバスを見る。
「私の薬草はどう?」
「最初は効いていたのですが、使えば使うほど効果が薄くなっているようです」
「そう」
私は牢屋のカギを開ける。
カチリと音が響く。
「お嬢様、お気を付け下さい」
「分かってるわ」
私は牢屋の中に入る。
そして壁に何かを書き殴っている男に近づく。
彼の足には鎖がつけられており、最大の移動範囲は制限されている。
彼が移動できないギリギリの場所から、私は彼に杖を向ける。
そして祈りを魔力に代え、薬草にかける時と同じように治癒魔法をかける。
男の体が白い光につつまれる。
すると男の手が止まり、こちらを振り向く。
先程までの狂った表情は消え、正気に見える。
「あなた、話はできる?」
「ええ、はい。あなたは誰ですか?僕はここで何を・・・」
彼は手に持っていた石の様な物をまじまじと見ている。
「自分は何をしていたのだろう?」という思いが顔に出ているように見える。
「私はあなたに聞きたいことがあるの」
私は彼に優しく話しかける。
そうして私は彼から話を聞いた。
2章も佳境に入って参りました。
今夜、後一話投稿予定です。
最近短編を投稿しました。宜しければどうぞ。(コメディです)
↓
「婚約破棄された私は、激オコプンプン丸 (# `)3')▃▃▃▅▆▇▉ブォォォォ」




