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第97話 記憶保持してループしまくってる奴がこれから起こること全部バラしてきてクソすぎた

 皆さんも一度はタイムループに囚われたことあると思うんですけど、何が面倒って何回も同じことさせられるところなんですよね。まわりがループに気づいてない時は説明とかややこしいから知らないフリしたりとかしちゃいますよね。


 でも普通は次に起こることとか言わないっていうのがなんか暗黙の了解じゃないですか。この前会った奴はそこら辺の倫理観ゼロでマジでイラつきましたよ……。



〜 〜 〜



 日常から離れようと思って、とあるテーマパークに行ったんです。広場のある大きい石像見てたら、なんか変な男に声かけられました。


「お前、またこの石像見てんのかよ?」


「いきなり馴れ馴れしく声かけてくるアホよりは遥かにマシなんでね」


「相変わらずお前は口が悪いよな」


 顔見ても誰だか分かんないんです。


「あの、どこかで会いましたっけ? 会ってたとしたら私に顔面蹴られて病院送りになってませんか?」


「察しが悪いな、お前。ループだよ、ループ! この時間が何回も繰り返されてんだよ。そんなことも分からねーのか」


「そんなの1発目で当てられるわけないでしょ」


「かぁ〜! これだから記憶持たねーでループしてる奴は理解が遅いんだよなぁ〜!」


 なんなんですかね、このカス。記憶持ってループしてるってポイントでマウント取ってくんですよ。マジで張り倒してやろうと思いましたけど、争いは同じレベルでしか起こらないって聞いたんでなんでもないフリしました。



※ ※ ※



 テーマパーク内のカフェにこのクソ男と入ることになりました。知り合いだと思われたくないんですけど。


「お前、これから何が起こるか分かんねーだろ」


 このクソ男、テネシー高村とか自己紹介してきました。終わってるネーミングセンスだよ、こいつ。


「別に知りたいとも思いませんけどね」


「この後、さっきの広場に戻ったら石像ぶっ壊されてんだぞ。しかもな、その石像の破片がその後に起こる殺人の凶器なんだよ」


「なんで先の展開バラしてんですか、バカでしょ。こういうのは事件が起こってから『まさかホントに繰り返されてるなんて』とか言って、その時になって初めて話すもんでしょ」


「バカはお前だよ。そんなんオレは死ぬほど繰り返してきたってーの! だから今はこれから起こること先にバラすフェーズなんだよ」


「いや、知らないですけどそんなフェーズ」


 そしたら、なんかテネシー高村がニヤニヤしだすんです。他のテーブルのお客さんを指します。人のこと指さしたらダメって親に言われなかったんですかね?


「あそこにいるスーツ着た男、このあと死ぬんだぜ」


「ああ、そうですか」


 そんなこと得意げに言われても、別にこいつが偉いわけでもないしなとか思ってたら、テネシー高村が言うんです。


「毒が盛られてたんだよ。だけど、どうやってあの男を狙ったのか分かんねーってなるんだよ」


 なんかこいつ起こること全部教えてきそうな勢いがあって正直しんどいんですけど。でも、話聞いてないとか思われてバカにされるのもイラつくんで、テキトーに返しときました。


「あの人を狙ったわけじゃないかもしれないじゃないですか」


「──って議論も起こるに決まってんだろ! お前の想定してることなんて、みんな考えてんだよ」


 いちいち自分が知ってることを持ち出してきてはマウント取ってくんです、テネシー高村。確かにその後スーツの男の人が毒で死んじゃうんですけど、テネシー高村は「別にまたループするし」とか言ってカフェから私を連れ出しました。さっさと単独行動したいんだけど。



※ ※ ※



「──でな、ここで誰も逃げられないって分かって、生き残った奴らが集まるんだけどよ、おっさんが『お前たちを信用できない』とか言って事務所の中に引きこもるんだよ」


 テーマパークを歩きながら聞きたくもない解説を聞かされてイライラしてたら、テネシー高村がお得意のしたり顔で言うんです。


「そしたらその密室の事務所でそのおっさん殺されるんだぜ」


「ループしてんなら助けりゃいいでしょ。


「バーカ、それでも犯人は巧妙に殺人起こすんだよ。止められねーんだって」


 ホントはさっきのカフェでパフェ頼みたかったんですけど、こいつを目の前にしてパフェ食べたくなかったんでブラックコーヒーなんか頼むハメになったんです。甘いもの欲しさにイライラしてたんで、言い返してやりました。


「ゴチャゴチャ言ってるけど結局抜け出せてないじゃん、ループ」


 そしたら、テネシー高村が笑うんですよ。


「別にループしてるからってなんでもできるわけじゃねーからな。勘違いすんなよ」


「ループしてるってのはあんたが自慢してきたんでしょーが。しかもただ無策のままループしてるだけの無能じゃん」


「は? こっちだって何も考えてねーわけじゃねーし!」


「じゃあ、ループの原因くらい分かってんでしょうね? 言っときますけど、私、明日には会社行くんでそれまでにループから抜け出せるようにしてくださいね。それが記憶持ったままループしてる人の仕事だからね」


「ループしてんだから明日なんか来ねーよ! ループの意味分かってんのか?」


「だから、明日が来るようにしろっつーの!」


 そしたら、テネシー高村が言います。


「ループの原因なんて分かってるから。オレが持ってる≪白い光玉(こうぎょく)≫っつーのを守るためにタイムループ装置が必要なんだけど、それを犯人に知られて取られたんだよ!」


「何やってんだよ。原因あんたなんじゃん。そんな危険なもんテーマパークに持ち込んでんじゃないよ」


「時間の檻に閉じ込めんのが一番安全なんだよ。この時代のお前には理解できねーだろうがな!」


 話聞いてると、なんかこいつ、未来から来たっぽいんですよね。未来人なら未来人らしく落ち着きのある感じ出してこいよ。


「だったらその白い恋人だかを未来に持って帰りゃいいでしょ」


「白い光玉だっつーの。ホントは過去改変するためにブラックマンバって組織に渡すつもりだったんだよ。だけど、オレも苦労したからカネ取ってやろうとしたらあいつら渋りやがってさ。たがら、敵対組織の十人会議ってところに渡しちまおうかななんて考えてたんだよ」


「全部あんたが原因で取り返しのつかないことになってんじゃん。バカでしょあんた」


「この時代のお前と違って、オレはレベルが何個も上のところで闘ってんだよ!」


 なんかループとか未来とかの要素でマウント取ってくるわりに、こいつ自身は大したことなさすぎてバカらしくなったんで、帰ることにしました。


「バーカ、お前、ループしてんのにこのテーマパークから出ても意味ねーよ」


 テーマパークの入り口でテネシー高村に煽られたんですけど、


「頭のおかしい奴と一緒にいたくないだけなんで。別にループから逃れようとして帰るわけじゃないんで」


 って吐き捨てて帰りの電車に乗りました。


 なんかループの範囲がテーマパークの中だけだったっぽくて、普通に次の日が来ました。テネシー高村も死ぬほどループしてたとか言ってたわりにこんなシンプルなこと気づいてないってやばくないですか? っていうか、なんだったの、あのガバガバなループは?

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