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第82話 ただネットショッピングの振り込みしたいだけなのに正義感強すぎるコンビニ店員が詐欺だって言って阻止してくる

 詐欺を防ぎたいと思ってるコンビニ店員の皆さん、その気持ちは分かりますけど、詐欺だって決めつけるのもやめてください。


 っていうのも、この前、めちゃくちゃしつこいコンビニ店員に出くわしたんです……。



〜 〜 〜



 なんかネットショッピングでも支払いが振込にしか対応してないところあるじゃないですか。気に入ったカーディガン注文したら、コンビニで振り込んでくださいってなって、コンビニ行くことになったんです。説明ちゃんと読んどくんでした。


 近所のコンビニの端末で払込票発行してレジに行ったんです。たまに見る真面目そうな男の店員なんですけど、私が出した払込票見て、いきなり訊いてきたんです。


「お客さん、これ、なんの振込ですか?」


 ただでさえ要らない手間が増えてイライラしてたんで、ちょっとぶっきらぼうに答えちゃいました。


「ネットのやつです」


「5978円……安くはありませんが、払える額ですよね」


 店員が意味不明なこと言ってくるんです。うるさいなーってなりましたけど、確かにモヤモヤしますよね。カーディガン4980円だったんですけど、諸々の手数料でこんなになってたんです。キャンセルすればよかったなとか思いつつ、6000円出しました。


「お客さん、言いづらいことですけど、詐欺ですよ、これ」


「はい?」


 なんか店員が真剣な顔になってんです。


「詐欺師は気軽に払えるくらいの額をまず払わせ、そこからさらに搾り取ろうとしてくるんです」


「いや、あの、これネットショッピングのやつなんで」


「そう装っているだけです。騙されないでください」


「いや、カーディガン買うだけだから」


「ボクはお客さんが騙されないように守るガーディアンです」


「なにもうまくないです。さっさと振込してください」


 店員が含み笑いをします。なんだよ、こいつ。


「そうやって意固地になるということは、詐欺師の手口に引っかかっている証です。冷静になってください」


「いや、あんたのせいで意固地になってんのよ。振り込ませてよ」


 イラついてる私に店員が目線を合わせて諭してきます。頭の弱い子扱いされてます、私。


「いいですか、お客さん、これは詐欺です。払う必要のないお金なんです」


「払わないとカーディガン買えないんだよ。振り込ませてって」


「あなたが買おうとしているカーディガンは存在しないんです。騙されてますよ」


「存在してるわ。勝手に騙されてる認定しないでもらえます? 詐欺を未然に防いだヒーローになる夢は諦めてください。そして振り込ませて」


 それでも頑なに支払い作業しないんです、この店員。詐欺を未然に防いだとかいうかまいたちの山内さんの弟のニュースがこんなモンスターを生み出したんだよ。めちゃくちゃ迷惑だよ。つーか、他の店員いないのかよ? とか思ってたら、バックヤードから別の店員が現れました。なにかを察知したらしく、真面目な店員に問いかけます。


「なんかあったの、石頭(いしあたま)くん?」


 皮肉でそう呼んでるのかと思ったら本当にそういう苗字だったらしいです、詐欺防止を夢見てる店員。


「ああ、店長、見てください。このお客さんが振り込め詐欺に遭ってるんですよ」


「いや、私の意志で振り込もうとしてんのよ」


 私が口を挟むと、店長が石頭を睨みつけます。


「石頭くんさぁ、また詐欺防ごうとして変なことしてんの?」


 どうやらこっちの味方だったみたいです、店長。石頭は首を振ります。


「いや、店長、今回ばかりは絶対詐欺です。100%の自信があります」


「そんなこと言って、この前は普通にそこに並んでる商品買おうとしてた人を止めようとしてたよね?」


 とんでもないやつだよ、石頭。店の商品買わせないようにするってもうそれ営業妨害じゃん。なんでクビにされてないんだよ。でも、全然動じてないんですよ、石頭が。


「いや、考えてもみてください、店長。これがもし本当に詐欺だったとしたら、僕たちはむざむざと善良な市民が汗水垂らして血反吐出しながら稼いだお金を卑劣な詐欺師に騙し取られるのを指を咥えて見逃したってことになるんですよ」


「なんかその言い方だと私がめちゃくちゃ低収入って言われてるみたいで心外なんだけど。6000円くらいポンと出せるから、私」


 っていう私の言葉はふたりには届いてませんでした。店長がうーんとか言って悩んでんです。なんで早速劣勢なんだよ、店長。


「いや、店長、こんなバカに言いくるめられないでくださいよ。さっさと振込してくれればいいんですよ、こっちは」


「でもなぁ、もし詐欺だったらと考えるとなぁ……」


「それでも30秒前にこの石頭に疑いの目を向けてた人ですか、あんたは? あの時の疑り深さどこやったんですか? 分かったらさっさと振り込みしてくださいよ」


 店長の目の色が変わります。


「お客さん、そんなに慌てて振り込みしたいというのはなんだか怪しいですね。もしかしてお金を払えと言われてるんじゃ……」


「洗濯物溜まってるから早く振り込み終わらして帰りたいんだよ!」


 店長が自分の言いなりになったのが嬉しいのか、石頭が小さくガッツポーズしてました。ぶん殴ろうかと思いました。


 埒が明かないんで、警察呼びましたよ。店員が振り込みさせてくれないって。



※ ※ ※



 警察が来て色々調べてたんですけど、私がカーディガン買ったサイト、実態が存在しなかったらしいです。思わず、


「詐欺かい!」


 って叫んじゃいました。いや、確かに初めて見たサイトだなーとか思ってはいましたけど。……詐欺かい! めちゃくちゃ恥ずかしいわ!


「お客さん、詐欺でよかったですね」


 とか石頭がニヤってしてきてブチギレそうになりました。


 次の日、ニュースのインタビューで詐欺を未然に防いだってことを得意げに話してるのが店長でした。石頭のやつ、手柄取られてやんの。

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― 新着の感想 ―
石頭さん別の話にも再登場してほしいですね
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