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第64話 探偵の説明が下手すぎて推理の内容が全く入ってこない

 探偵って、事前に推理で言うこと決めてたにしても大きな事件だとめちゃくちゃ長い時間喋ってるじゃないですか。あれ、たぶん事前にひとりでリハーサルしてると思うんですよね。


 ぶっつけ本番で推理発表会する人もいると思うんですけど、それができるのは頭いい人に限るんで安易にマネしないでくださいね。グダるとただイライラする時間になるだけなんで……。



〜 〜 〜



「さて、皆さんに集まってもらったのは他でもありません。今回の一連の殺人事件の真相をお話しするためです」


 探偵がめちゃくちゃオーソドックスな入りで推理を披露しようとしてます。逆になんか珍しさすら感じますね。探偵はみんなの顔を見回して先を続けます。


「連続した4つの事件──ひとまず、事件A、事件B、事件C、事件Dとしましょう──には、2つの共通点がありました。それをここでは、共通点A、共通点Bとします」


 AとBが被ってて分かりづらいんですけど、一応黙ってることにしました。もう早速、事件関係者の中に首を捻ってる人がいます。


「その前に、事件現場の様子から、事件Cは事件Aよりも時系列的に先に起こったことが分かったので、事件Cは事件Aに、事件Aは事件Cに置き換えた方がいいでしょう」


 さすがにもうやばそうだったので、口を挟ませてもらいました。っていうか、逆にこの速度で分かりづらくするの才能でしかないよ。


「あの、すいません、アルファベット使うのやめてもらえます? すでに頭の中ゴチャゴチャなんですけど」


「それほどまでに今回の事件は複雑に入り組んでいるのです」


「いや、そうじゃなくて、説明が全く入ってこないんですよ。AとかBとか言われすぎて。まずは事件Aは第1の事件とかにしてもらえます?」


「事件Aは事件Cに置き換わったので、事件Aは実質的に第3の事件なんですよ」


「いや、だからそのAとかBを使うなって言ってんですよ。マジで混乱するんで」


 探偵はなんか釈然としない表情なんです。なんで分かりやすくなってると思ってるんだ、こいつ? 探偵がめんどくさそうに言うんです。え、私ってモンスタークレーマーみたいな存在じゃないよね?


「でも、この先を聞いてもらえれば理解してもらえると思いますよ」


「その自信がどこから来るのか分かんないんですけど、とりあえず分かりました」


 探偵は咳払いをします。


「そもそもですね、事件Cは事件C'という2年前に起きた盗難事件に端を発していたんです。この事件C'に関わっていたのは、当時未成年だった少年A、少年B、少年Cなんですが、少年Bが事件C'の首謀者だったんです」


「首謀者なら少年Aにしてほしいんですけど。っていうか、アルファベット使うなっつってんでしょうが」


「いや、少年Bが事件C'の首謀者だったことは事件Aの際に見つかったメモの切れ端から明らかになったんですよ」


「なんで繋がりがあるはずの情報が全部違うアルファベットなんだよ。統一しろよ」


 とか文句言ってんですけど、探偵が構わず続けるんです。こいつ、張り倒してやろうかな。


「しかし、メモの切れ端から、実は事件C'にはもうひとり、少年Eが関わっていたことが分かったんです!」


「Dどこいったんだよ」


「驚くべきことに、少年Dは事件Bで殺された内藤さんだったのです!」


「何に驚けばいいのかもう分かんないんだよ」


「少年Dは事件C'の際、走って逃げていて、関与を疑われなかったんです。走った……つまり、少年Dは少年D'(ダッシュ)ってことですね、ハハハ」


「黙れ」



※ ※ ※



「つまりですよ、事件Cと事件Dはふたつの事件ではなく、ひとつの事件だったんです! ここで、事件Cと事件Dは事件CDとなり、少年Eの手がかりは事件CD、事件C'、そして、起きるはずだった事件Eの計画Xの中に記載されることが明らかになったんです」


 探偵が気持ちよく推理を進めていくんですけど、まともに理解しようとしてた何人かが気分が悪くなって横になってます。アルファベットやめろって言ってんのにやめないんで、もう注意するのやめました。もうアルファベット使う執念が凄まじいの。たぶんこいつの家族、アルファベットに人質に取られててアルファベットからアルファベット使えって脅されてんです、きっと。もうアルファベットって言いすぎて気持ち悪くなってきた。


「ここで、僕は隠された真実に行き当たったのです。それは、少年Dには一卵性双生児の弟、少年D'がいたという事実なんです!」


「冗談で使った少年D'を使われるといよいよ面倒なんだよ」


「お、鈴木さん、僕の説明について来れてるみたいですね。そんな人は初めてですよ。じゃあ、もっとペース上げていきますよ! 事件の真相まではまだまだありますからね!」


 必死で食らいついてたらなんか探偵の変なスイッチ押しちゃったみたいです。っていうか、自分の説明が分かりづらいの自覚してたんかい。改善しろよ。


「ま、待ってください……!」


 急に倒れ込むようにしてひとりの女性がひれ伏しました。


「も、もうやめてください……! これ以上、探偵さんの説明を聞いていたら頭がおかしくなりそう……」


 よく言った。やっとまともな人の声が上がったとか思ってたら、彼女が言うんですよ。


「わたしが……わたしがやりました。彼らを殺したのはわたしなんです。だから……だからもうやめてください……。アルファベットを聞くだけで、吐き気が……」


 めちゃくちゃ意外な告白をして彼女は倒れてしまいました。ホントに彼女が犯人なの? 探偵が駆け寄ります。


「ちょっと! 僕の推理を聞く前にバラさないでくださいよ! まだ計画Xを少年D'に仕込んだYという人物のことも話してないのに……! YはのちにZやAA、ABと共に闇の組織を作って──」


 犯人が泡吹いてます。たぶんこれに懲りて反省することでしょう。私も脳みそ焼き切れそうなんで早く帰って寝ます。

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