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第55話 探偵の幼馴染が犯人なのはいいけど安いラブコメみたいになるのやめてくれないかな

 知人や友人が犯人だったっていう探偵の人もたくさんいると思うんですけど、解決編でどこまで言うかってあらかじめ決めてるんですかね?


 その関係性の部外者からすると、ほどほどに語ってくれればそれでOKですよ。あまり長々と話してるの聞いてても思い出とか共有してないんでね……。



〜 〜 〜



 すごく不本意なんですけど、なんか最近探偵の知り合いが増えてるんですよ。私、探偵じゃないって言ってんですけど、どいつもこいつも私の話聞いてくれないんです。


「鈴木さん、殺人事件の解決に立ち会ってくれませんか?」


 馬場さんっていう女探偵から連絡入ったんです。断ろうとしたら、家のインターホンが鳴って彼女もう来てるんです。


「迎えに来ちゃいました」


「ここの住所どうやって知ったの……?」


「さ、行きましょう、鈴木さん」


 皆さんも探偵と知り合わない方がいいです。こいつらすぐプライバシー侵害してきますから。



※ ※ ※



 事件現場はとある公園で、もう警察が作業してるんです。警官がひとりの男と話していて、その男がこちらに気づきます。


「なにしに来たんだよ、ふみな」


 ふみなってのは女探偵のことです。


「なにしに、じゃないよ。この事件を解決しに来たんだよ、たかし」


 なんかワケありの2人っぽいなとか思ってたら、幼馴染だっていうんです。なんか不穏な空気なんです。もう帰っていいかなとか思ってたら、警官がやって来るんです。


「ちょっと困りますよ。これから署に連行するんですから」


 話が変だなと思って訊きました。


「ん? 事件解決してるんですか?」


「この男が死体の前に立っていて、罪を認めたんです」


 もう終わってんじゃん。じゃあ帰れるじゃん。なんて思ってたら、馬場さんが急に声張り上げるんです。私、めちゃくちゃびっくりしましたよ。


「そうやってすぐ自暴自棄になるよね、昔から! おまけに怒りっぽくて、いつも喧嘩してた!」


 なんか始まったよ。


「うるせー、お前に関係ないだろ」


「関係あるよ! 私たち、幼馴染なんだよ! ずっと一緒だったじゃん!」


「幼馴染なだけだろ……」


「幼馴染なだけ……ホントに……、ホントにそれだけ? あの日、手を繋いで帰ったじゃん。あれはなんだったの?」


 痴話喧嘩に関わりたくなかったんで、口挟んじゃいました。


「あの、私関係ないみたいだからもう帰るよ」


 そしたら、馬場さんが振り向いてなんか寂しげな笑顔向けてくるんです。悲劇のヒロイン(づら)してるんですよ、こいつ。


「鈴木さん、私たちのために来てくれてありがとう」


「いや、こんなことになるって分かってたら来なかったよ」


「鈴木さんもずっとわたしたちのこと、応援してくれてたよね」


「知らないんだよ。今さっき聞いたんだから」


 私の声なんか届いてないみたいで、馬場さんがたかしを振り向くんです。まわり見えてないのかな、この女?


「今日はね、わたしがあなたの事件を解決するのを見届けるために鈴木さんが来てくれたの」


 住所突き止められてここまで拉致されてきたんだよ。たかしもたかしで、なんか意味ありげな顔してんです。


「なんでお前にゴチャゴチャ言われなきゃいけないんだよ。俺たちはなんでもない、ただの幼馴染だろ」


 いちいち芝居がかってんのがなんか腹立つんですよね。どこかでカメラでも回ってんのかと思いましたよ。



※ ※ ※



「あんなに現場に証拠残してるんだね」


 馬場さんが公園の一角を指さします。物が散乱してるんです。


「だったらなんなんだよ?」


 ずっと男女の言い合いを聞いてるみたいでめちゃくちゃ帰りたかったんですけど、馬場さんが私の服の袖ガッチリ掴んでんですよ。シワになるからやめてって言いたかったけど、そんなこと言える空気じゃないんです。


「昔からだらしなかった。わたしがいつも注意して後片付けしてた。だから今もこうやって証拠たくさん残してるんじゃないの?」


 私たちはなにを見せられてんのよ? 警官もさっきからポカンとしたまま立ち尽くしてるよ。たかしもなんかちょっとだけ響いてるみたいな表情見せてんです。そしたら、馬場さんがふっと笑うんですよ。


「でも、そうやってあんたの世話してるうちにわたしはあんたのこと……。ううん、なんでもない」


 実は好きだったとか今はどうでもいいんだよ。殺人事件の現場なんですよ、ここ。手垢のつきまくったラブコメ展開していい場所じゃないの。


「ねえ、待って!」


 急に馬場さんが現場に向かって走り出しました。止めようとする警官を振り払って落ちてるブレスレットを拾い上げるんです。よく見つけたな。


「これ、誰からのプレゼント?」


 馬場さんがブレスレット突きつけるとたかしは目を逸らします。なにもうひと展開起こしてんのよ、この2人?


「別にいいだろ……」


「みなみ? みなみだよね、こういうの好きだもんね、あの女」


「それは……」


 勝手に始まって勝手に修羅場になってんですけど。殺人事件どこいったんだよ? とか思ってたら、警官が急に喋り出すんです。


「被害者はそのみなみさんなんですよ。たかしさんはみなみさんに交際を迫られていました。プレゼントしたブレスレットをつけないたかしさんと口論になって、それで……。たかしさんはあなたのことを忘れられず──」


「もういい!」


 たかしが遮ります。っていうか警官もラブコメに加わるのかよ? 私だけ蚊帳の外じゃん。完全な部外者じゃん。もう帰っていい?


「たかし、ホントなの?」


「うるさい。俺はもう殺人者なんだよ。お前はお前でいい人見つけて幸せに──」


「バカ! あんたなにも分かってない! なにも分かってないよ……」


 私もなにも分かってないよ。説明してくれよ。警官泣いてないでさっさとたかし連れてけよ。みなみの死がこいつらの絆深めるためのダシにされてんじゃん。ただ殺されただけの出涸らしだよ、みなみが。



※ ※ ※



「待ってる! わたしはずっと待ってる!!」


 馬場さんがたかしの乗ったパトカーを追いかけて走り出しました。すんごい脚力でパトカーと並走していきました。探偵じゃなくてマラソン選手になればいいのに。


 パッと公園の方見たら、ボヤッとした女の人が立ち尽くしてるんです。なんとなく直感でみなみだなと思って声かけちゃいましたよ。そしたら、恨めしそうに言うんです。


「あのブレスレット、3万もしたんですよ」


「気にするところそこなんだ」


「鈴木さんといいましたね。あの2人をよろしくお願いしますね……」


「勝手に私に託すのやめてもらえます? ほぼほぼ赤の他人なのよ」


 っていうか、私って霊視能力あったんですね。とか思ってたら、出涸らしみなみが光の粒になっていくんです。


「では、あの2人をよろしくお願いしますね……」


「いや、だから、私、無関係なんだって。勝手に満足げな顔しないで」


「あなたなら、2人を見守ってくれると信じていますよ……」


「話聞けって。私は無関係なの!」


「さようなら……」


「勝手に成仏すんな!」

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