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第52話 二重人格の犯人が普段は好青年で一生懸命事件解決しようとしてるせいでみんなが他の人の仕業ってことにしたがってる

 二重人格の人は普段から殺人犯だって疑われて頭きてますよね? クローズドサークルに居合わせた日には第一容疑者みたいな扱いですしね。


 ただ、ホントに犯人の場合、基本的にはバレバレですんで、普段の人格の人が頑張るしかないっていうのが現状かなって思います……。



〜 〜 〜



「絶対犯人を見つけ出しましょう! これじゃあ殺されてしまった人たちが浮かばれないですよ!」


 山の上のホテルの一室で好青年が熱く叫ぶんですよ。ホテルに続く道が土砂崩れで通れなくなっちゃいまして、そんな状況のホテルで殺人が起こったんです。どういうわけか、私が泊まるホテルってすぐ孤立するんですよね。私が雨女だからですかね。


「あ、ああ……、そうだね」


 対する探偵がめちゃくちゃ複雑な顔で応じるんです。好青年は、


「僕、何か手がかりがないかもう一回探してきます!! 大丈夫、犯人に遭遇しても僕は逃げ足が速いですから!」


 とか言って部屋を出ていくんです。探偵が頭を抱えてます。


「あいつの別人格が犯人なんだよなぁ……」


 そうなんですよ。逃げ足とかの問題じゃなくて、あの好青年自体が犯人なんで誰も心配してないわけです。関係者のみんなも困ってます。


「あの人、めちゃくちゃいい奴なんだよなぁ……」

「率先して嵐の対策とかしてくれましたしね……」

「犯人特定に一番頑張ってるもんねぇ……」


 そこは探偵が一番じゃないんかいとか思いつつも、確かにあの好青年、普段は主人公感のある行動とか言動なんですよね。ワンチャン叙述トリックとかどんでん返し狙ってんじゃないかなって疑いたくなるレベルですよ。


「犯人に繋がる手がかりを探すって言ってたな」


 探偵が考え込むんですけど、この人がボサッとしてるせいであの好青年が奔走するハメになってんですよね。なんて思ってたら、ホテルの従業員がハッと息を飲むんですよ。


「そういえば、廊下の防犯カメラにあの方が単独行動している姿が映っていたと思います……!」


 みんなの間に緊張が走ります。探偵が顔を強張らせてるんです。


「あいつ、自分が犯人だっていう証拠を見つけてしまうかもしれないな……」


 なんかそれはよくないみたいな空気だったんで私、思わず言っちゃいました。


「いや、そこは実は自分が犯人だったんだっていう衝撃と共に解決編に突入するいいきっかけじゃないですか」


「いや、あいつ、そんなこと知ったら絶望してしまうぞ」


 探偵が首を振ると、みんなもなんか同調し始めるんです。これが日本人の同調圧力ってやつですか?


「それだと自分を責めちゃうね……」

「今まで頑張ってきただけに、そんな姿見たくない……」

「証拠見つからないようにできないかな……」


 よく分かんない方向にいってます。探偵がホテルの従業員に指示を飛ばします。


「防犯カメラの映像消してきて、早く!」

「分かりました!」


 なんか全力で証拠隠滅しようとしてるんですよ、この探偵。そんなに真実から遠ざけたいのかよ? もはや共犯じゃん。



※ ※ ※



「どうしようか……」


 犯人の好青年が手がかり探してる隙に探偵が悩んでるんです。


「別の人の犯行になったよって伝えたいな」


「『別の人の彼女になったよ』みたいに言わないでください」


 って思わずツッコミ入れてしまいました。そしたら、探偵が睨みつけてくるんです。


「じゃあ、あいつを犯人だって言うのかよ!」


「いや、言ってくださいよ。真実追い求めてたんでしょ」


「言えるわけねえだろ……! あいつと誓ったんだよ、一緒に犯人を捕まえようって……。このホテルから生きて帰ったら、気ままに旅行しようって話してたんだ……」


「なに死亡フラグ立ててんですか。2人きりで旅行なんて口封じにうってつけじゃないですか。いや、そりゃ、最初はあの人も好青年でしたけど、今はわけが違いますからね」


「いや、誓い合ったのは昨日の夜だ」


「犯人って分かった後じゃないですか。マジでなにしてんですか」


 とかなんとか喋ってたら、好青年が帰ってきましたよ。ホテルの敷地内を外まで見回ってきたんでしょうね、びしょ濡れなんです。


「ダメでした……! 手がかりのひとつも見つけられず、申し訳ないです。もしかしたら犯人が僕を狙って事件を起こしたら、新しい手がかりを残すかもなんて考えてましたけど、なにも起こりませんでした……」


 そりゃ、あんたが犯人だからねって言い返そうとしたら、探偵が涙流してんですよ。


「お前、自分を囮にしようなんて二度と考えるな! みんなにとって、俺にとって、お前がどれだけ大事かまだ分からねえのか!」


「探偵さん……」


 なんか勝手に熱い友情が繰り広げられてるんです。いや、犯人なんだよ、こいつは。囮とかじゃないんだよ。


 なんかこうして私だけ意見違うのもいちいちエネルギー使うなって思って、めんどくさいのでレンタル犯人呼んで犯人の代わりしてもらいました。役に立つことあるんですね、レンタル犯人。


 とりあえず、この場は切り上げて後日警察に匿名で通報しときました。探偵も偽証罪とかで捕まるかもしれません。

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