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第50話 探偵が解決編で役に立たない情報サイトみたいなこと言い始めた

 探偵って大変な仕事ですよね。時には人の命運を左右することもあります。そこで今回はそんな探偵のお仕事について見ていきたいと思います。


 みたいな感じのサイトが腐るほど増えましたよね。おかげさまで検索しても知りたい情報に辿り着けないんです、こっちは。


 そろそろ全ての情報サイト集めてデスゲームさせましょう。



〜 〜 〜



「皆さん、今回発生した事件の真相、気になりますよね? ここでは、様々な情報や手がかりを確認して真犯人に迫っていきたいと思います!」


 探偵が事件関係者を集めてそう話し始めました。やっと解決編ですよ。探偵は大学生くらいの礼儀のいい女子です。この子は私を無理やり助手にしたりしなかったので、陰ながら応援してます。


「まずは、現場の密室状況から見ていきましょう。現場は内側から鍵がかけられ、窓にもしっかり鍵がかけられていました。ドアには隙間もありません。つまり、これは完全な密室です」


 関係者たちがうなずきます。それはみんなで確認しましたからね。私は推理の裏回しみたいなポジションをとることにしました。早めに終わらせたいんでね。


「犯人はどうやって密室を作ったの?」


「まず、密室とは何かをおさらいしていきましょう」


「おさらいはいいから。どうやったのかだけ教えて?」


「密室とは、密閉されて外から中に入ることができない部屋のことです」


「うん、分かってるからそれは。密室のトリック教えて?」


「推理小説における密室殺人事件の始まりは、エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』だと言われています」


「そういうのいいから。振り返りとかいま最も求められてないやつだから。密室トリック教えて」


「ちなみに、エドガー・アラン・ポーは日本の推理小説家である江戸川乱歩のペンネームのもとになっています」


「聞こえてるでしょ? 寄り道の雑学より密室トリック早く教えて」


「そして、この江戸川乱歩とコナン・ドイルという名前を組み合わせたのが、皆さんお馴染みの江戸川コナンなんです。いま大人気の『名探偵コナン』はこうした推理小説の歴史の中にあるんですね」


「知ってる。知ってるからいちいち教えてくれなくていいよ。クソ情報サイトだったらここでコナンの全巻セットみたいなやつのアフィリエイトリンク貼られてるよ。そんなことより密室トリックのこと教えて」


「さて、今回の事件では、現場は密室だったのですから、犯人は現場から立ち去ることができませんでした」


「うん、それが密室ってやつだからね」


「それでは、犯人は密室の中にいるのでしょうか?」


「みんなで確認していなかったって分かったじゃん。そこはどうでもいいのよ。密室トリックは?」


「犯人は密室から脱出した、もしくは、部屋から出た後に密室を作ったのだと考えられます。そのような工作のことを密室トリックといいます」


 やっと密室トリックのところまできたよ。なんだったのよ、ここまでの時間。


「それで? 密室トリックは?」


「他にも、犯人が容疑から外れるためのトリックがあります。アリバイトリックや1人2役、顔のない死体などのトリックが有名ですよね」


「ちょくちょく脇道の逸れるのやめてくれる? いま知りたいのは密室トリックだから、そこに集中して。そしてさっさと教えて?」


「密室トリックについて詳しく語られたのは、ジョン・ディクスン・カーの『三つの棺』です。その中で登場人物のひとりであるフェル博士が行った講義、いわゆる密室講義があります」


「寄り道いらないから。誰かに寄り道しろって言われたの? そいつの言うこと聞かなくていいから今は私の言うこと聞いて。さっさと密室トリック教えて? みんな待ってるから。犯人だって待ってるよ、きっと」


 探偵の子が意味もなく部屋を歩き回ります。それやっていいのは推理の中盤に何かを投げかけた時だけだよ。まだ何も進んでないからね、この解決編。


「さて、密室についておさらいしてきました。では、今回の密室はどのようなものだったのでしょうか」


 やっときました。寝そうになっていた事件関係者たちも居住まいを正してます。解決編で眠気と闘うんじゃないよ。なんで私だけ頑張ってんのよ? 探偵の子が続けます。早くして。


「現場の状況についておさらいしましょう」


「どんだけおさらいすんのよ。おさらいはいいから密室トリック教えてって言ってんでしょ。私の声聞こえてる?」


 そして、また現場の状況をおさらいして、やっと探偵の子が先に進めようとするんです。私もう喉ガビガビなんだけど。


「現場の状況を調べた結果、よく分かりませんでした」


「芸能人の薄っぺらい情報載せてるクソサイトじゃないんだから、密室トリック教えろって!」


「密室トリックは殺人を隠蔽するための行動です。もしあなたが殺人を犯してしまった場合は、逃げたり隠れたりせず、最寄りの警察署や交番に出頭しましょう」


「要らないんだよ、そんな注意。密室トリック教えろって」


 とか言ってたら、関係者のひとりが急に床に膝ついて、


「も、申し訳ありませんでしたー!!」


 とか叫んで自供し始めたんです。なんなんだよ、この茶番は? そしたら、探偵の子が言うんです。


「それでは、次は警察への出頭の仕方と弁護士の呼び方を学び、裁判に備えましょう」


「分かりました……よろしくお願いします……」


 なんかもう犯人も勉強モードに入ってるんです。いつの間にか解決編終わってんですよ。私の喉のガビガビ治してくれ。とか思ってたら、探偵の子がニコリとします。


「いかがでしたか? 今回はここで起こった密室殺人についてまとめてみました。密室殺人は長い歴史を持ち、トリックによって作られることが分かりましたね。しかし、どのようなトリックであっても探偵が解き明かしてきました。密室殺人はれっきとした犯罪です。場合によっては法律違反で逮捕されることもあります。バレなければいいというものではありませんので、決して実行したりマネしたりしないようにしましょう」


「実は軽犯罪なんですみたいに言うなよ……」

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