表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/100

第47話 開催したら事件起こすぞって予告出されたイベントの主催者が代わりに中止してもいいイベント集め出した

 大きなイベントがあると、それに便乗するように犯罪を起こす人っていますよね。


 なんか色々準備したりしてるみたいですけど、ただ目立ちたいだけってバレてますよ……。



〜 〜 〜



「なんですか、これは?」


 届いてた犯行予告を見て思わず言っちゃいました。その前になんで私が捜査本部に呼ばれたんだよって話なんですけど、なんかもう事件解決屋みたいな扱いされてるんです、私。ホントは美容室行きたかったんですよ、今日。


「我々も困惑してるんです……」


 捜査本部のリーダーが唸ってるんです。この人、確か私の元彼が犯人だった時にも捜査本部にいた人ですよ。本郷(ほんごう)さんというらしい。


 犯行予告なんですけど、「ナンバーワンたこ焼き決定戦を開催するなら人を刺す」っていう手紙が警視庁に来たらしいんです。きっとイベントに恨みがあるんでしょうね。っていうか、なにこのイベント?


「はぁ、参ったなぁ……」


 たこ焼き決定戦の主催者も来てて、もうすごくめんどくさそうなんです。そんなところに、犯人から連絡が入ったんですよ。


『やぁ、諸君、犯行予告は届いたかな?』


「お前の目的はナンバーワンたこ焼き決定戦を中止させることか?」


『いや、ぶっちゃけイベントはなんでもよかった』


 本郷さんの質問に案外冷めた反応が返ってきました。アツアツが売りのたこ焼きに似つかわしくない。そしたら、たこ焼き決定戦の主催者が犯人に話しかけるんです。


「あのね、ナンバーワンたこ焼き決定戦主催してる者ですけどね、困るんですよ。どうしてもナンバーワンたこ焼き決めないといかんのよ。どうかイベントはやらせてくださいよ」


 なんでそこまでナンバーワンのたこ焼き決めたいのか分からないんですけど、並々ならぬアツアツの熱意が伝わってきます、たこ焼きだけに。


『大きなイベントだから名前を使わせてもらった。ただそれだけだ』


 いや、私この件で初めて知ったから大きなイベントじゃないと思うけどね。でも、空気読んでそんなこと言わずに静観してました。すると、たこ焼き決定戦の主催者が一気に攻勢に出るんですよ。


「あのね、ナンバーワンたこ焼き決定戦主催してる者ですけどね、だったらね、ナンバーワンたこ焼き決定戦の名前使わないでほしいのよ。スケジュール通りに開催したいわけ、こっちは」


 事件とかはどうでもいいらしくて、とにかくたこ焼き決定戦やりたいらしいんです。融通利かせてちょっとは丸くなればいいのにね、たこ焼きのように。


『うるさい! こっちは注目を浴びて事件を起こしたいんだよ!』


 犯人が悲痛な叫び上げるんですけど、事件起こしてもナンバーワンたこ焼き決定戦って名前がセットになってニュースになってたら笑ってしまうかもしれないですね。ネットでは一生「たこ焼きの犯人」とかイジられることでしょう。そういう人たちっていつまでも忘れないからしつこいですよ、歯についた青のりのようにね。


 そしたら、たこ焼き決定戦の主催者が言うんです。


「あのね、ナンバーワンたこ焼き決定戦主催してる者ですけどね、それじゃ、こっちの提案があるから、ちょっと待っててくれる?」


 なんだなんだと思ってるうちに、その主催者がいろんなところに電話かけまくってるんです。たこ焼きでも注文してるんでしょうかね?



※ ※ ※



 なんか捜査本部にゾロゾロ人が集まってきました。なんだろうって思ってたら、たこ焼き決定戦の主催者が犯人に繋ぐんです。もうこの人が場を仕切ってんじゃん。っていうか、私いる必要ないから帰りたいんですけど。美容室行きたいんだよ。


「あのね、ナンバーワンたこ焼き決定戦主催してる者ですけどね、中止になってもいいよっていうイベントの主催者の人たちに来てもらったからね、あなたの方でどれか選んで」


 思わずずっこけそうになりました。集められた方も屈辱だろとか思ってたら、次々に犯人にプレゼンしていくんですよ。


「全日本道端軍手選手権の者です。このまま開催すると赤字なのに、やめようって言い出せないのでウチのイベントを中止に追い込んでください」

「エレベーター内ギャグ王グランプリの者です。シンプルに参加者集まらないので、中止する口実に指名してください」

「焦げててもうまいもんランキングの者です。名指ししてもらえたら知名度上がると思うんでよろしくお願いします」


 なんか絶滅してもよさそうなイベント目白押しなんです。っていうか、中止に追い込んでくださいって、主催者としてプライドないんですかね? なんて思ってたら、犯人が悩んでんですよ。


『うーん、軍手……いや、焦げててものやつも捨てがたいな……』


 選択肢が多すぎて決められてないんです。贅沢な悩みだよ。っていうか、中止してもいいイベントが中止になってこの犯人は満足するんですかね? それで事件起こすのやめよーとはならないでしょ。


 プレゼンも熾烈を極めて、ウチのイベント中止したら金一封差し上げますとかBluetoothスピーカープレゼントしますとか特典で競い始めたんです。この人たち、どんだけ自分のイベント中止させたいんだよ。勝手に中止してればコストかかんないでしょうが。


「じゃあ、ウチはPS5出します!」

「ならウチは沖縄旅行!」

「それならハワイ旅行!」


 特典がインフレし出しました。朝の豊洲市場じゃないんだからってレベルの競りが白熱してるんです。とか思ってたら、犯人が声を上げました。


『でもやっぱり俺はナンバーワンたこ焼き決定戦がいい!』


「えっ! ハワイ旅行ゲットのチャンスあったのに、ここでドロップアウトですか?!」


 とか言って本郷さんが何回も確認してます。なんかクイズ番組みたいですね。っていうか、ハワイ旅行出してまでイベント中止させたいって、それはもはやイベントアンチのやることじゃん。犯人も犯人でなんでたこ焼きにこだわるのよ? ハワイ旅行の権利掴めよ。


「あのね、ナンバーワンたこ焼き決定戦主催してる者ですけどね、こんなにお膳立てしてるのに無下にするってどういう神経してるんですかね! もう事件でもなんでも起こせばいいよ! こっちは血の海でもたこ焼きナンバーワン決めますからね!」


 訳のわからない宣言をしてたこ焼き決定戦の主催者が怒って出て行っちゃいました。結局、代わりの中止イベント決めるドラフト会議が終わっちゃいました。なんだったの、この無駄な時間?


 その後、たこ焼き決定戦が行われる場所にホントに犯人が来て普通に警察に捕まったらしいです。美容室の予約キャンセルするハメになったんですけど、ナンバーワンたこ焼き決定戦のチケットもらってたこ焼き食べ放題だったんで許すことにしました。


 ちなみにナンバーワンたこ焼きは普通にチェーン店のやつでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ