第45話 事件関係者たち全員が集まって探偵をハメましょうっていう決起集会開いてた
容疑者全員が共犯ってありがちじゃないですか。きっと意気投合してファミレスとかで打ち合わせとかしてるんでしょうね。なんか楽しそうですね、文化祭みたいで。
でも、そういう打ち合わせは大々的にやんない方がいいですよ……。
〜 〜 〜
フェリーで離島を巡るっていうツアーがあったんで行ってみようと思ったんですよ。フェリー出るまで時間があったんで近くをブラブラしてたら公園があったんですけど、なんか人が集まってたんです。
「みんなで一致団結していきますよ〜」
サッカーチームくらいの人数だったんでなんか試合でもすんのかなと思って見てたら、みんな私が乗るフェリーの話してるんですよ。
「みんな自分の待機場所を確認してくださいねー」
別のツアーの人たちなのかなとか思ってたんですけど、まとめ役っぽい人が言うんですよ。
「じゃあ、私が稲崎さんを殺しますんで、その凶器は水島さんと田原さんで回収して処分しちゃってくださいね」
「はーい」
めちゃくちゃフランクに殺人の最終確認してるんですよ。ずっこけそうになりましたよね。無駄にツアー感出してるんです。っていうか、こんなオープンな場所でやるんだ。私とか聞いちゃってるんだけど問題ない? あなたも参加しますか? とか言われたらどうしようなんて思ってました。
「フェリーに新屋敷っていう探偵が乗ってるんで、そいつを利用して間違った真相導き出させるのが今回のメインですからねー。目撃証言のチェック大丈夫ですかー? 探偵が混乱するように考えてありますからねー」
「別の人が現場近くに来ちゃったらどうしますかー?」
「あまり長居しそうだったら声かけてどっかに行かせてくださーい」
なんかめちゃくちゃ探偵をハメようとしてんです、この人たち。しかも共通目的があるからなのか、なんかちょっと表情輝かせてんです。みんなで頑張ろうみたいな。
「あのー……」
急に横から声かけられたんで、びっくりしてぶん殴りそうになりました。見ると、男の人が声を潜めてるんです。
「いま俺の名前言ってましたよね、あの人たち?」
「え、新屋敷さんですか?」
「そうです」
騙される張本人登場しちゃったよ。なんかこの探偵も気まずいなーみたいな顔してんです。私だったら真っ先にあの集会解散させるけどね。
「あそこの人たちであなたのこと騙そうとしてますよ」
「実はフェリーで殺人が起こるってタレコミがあったんですよ〜。うわー、乗るのやめようかな〜」
「いや、今やめさせればいいでしょ……」
探偵に聞かれてるとも知らず、殺人ツアーの人たちは点呼取ってんです。
「稲崎さんを現場に誘導する人ー」
「はーい」
「凶器を指定の場所に置いておく人ー」
「はーい」
ちょっと楽しそうなんです。ふらっと途中参加もできますよーっていうイベント感なんで、近所の人も気軽に殺人に加われそうなんです。探偵がため息をついてます。
「なんか小学生の頃の遠足を思い出しますね」
「悠長なこと言ってないで止めてきてくださいよ。せっかくのツアーが台無しにされちゃうんで」
「あ、お姉さんもフェリー乗るんですか? この度は大変なことに巻き込まれましたね〜」
「だから大変なこと起こさせないでくださいってさっきから言ってるんですけど」
すると、また横から別の人に声かけられたんです。今度こそ顔面パンチするところでした。おじさんが青ざめた顔で立ってるんです。
「いま、ボクの名前言ってませんでした? 稲崎って……」
なんでよりにもよって事件関係者が全員集まってんのよ? もはやこの公園が事件を呼び寄せてるでしょ。
「なんかあそこのみんなであなたのこと殺そうとしてますよ」
「うわー……、ボク社長やってるんですけど、あいつら、ボクが昔リストラした奴らなんですよ……。まさかここで殺されるなんてなぁ……」
「なんで殺されること前提なんですか。警察に通報したらいいでしょ」
探偵もなんか気が進まないみたいな感じで、
「稲崎さん、とりあえずダイイングメッセージ考えといた方がいいですよ」
とか言ってんです。いや、その前に助けろや。なに事件のヒント欲してんのよ?
とりあえず、フェリーの予約を別の便に変更しようかななんて思ってたら、探偵と被害者候補が殺人ツアーのみんなの前にサプライズ乱入してました。なんかモノマネしてたら後ろからご本人登場みたいな空気になってるんです。
「うわー、稲崎さんじゃないですか!」
「新屋敷さんまで?」
「実は……今の話聞いちゃってましたー!」
「うわー! なんでですかー!」
なんか盛り上がってんです。面倒そうだったので、やっぱり別のフェリーに乗ることにしました。あいつらに予約変更の手数料請求できますかね?




