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第13話 大規模な犯罪を起こした犯人がかかった費用をいちいち教えてくる

 いきなりなんですけど、過去の彼氏で最低だったやつのこと話してもいいですか?


 デートをドタキャンしたり、店員に横柄だったりで、私から別れようって言ったんですけど、そいつ、今まで俺が払った金を返せとか言ってきたんですよ。このクソがとか思って500円玉を鼻の穴にねじ込んで別れたんです。


 なんにせよ、いちいちお金の話してくるやつってやばいですよ……。



〜 〜 〜



 都内各所に爆弾を仕掛けたっていう事件が起こったんですよ。パニックにならないように報道規制が敷かれて一般の人は全然知らなかったと思うんですけど、なぜか私、勝手に有志の探偵として警察の捜査本部に駆り出されたんです。秘密にしろとか言われて、嘘ついて仕事休んだんですよ。


 で、イラつきながら捜査本部に着いたら、ちょうど犯人から通信が入ったんです。


『警察諸君、私を止められるかな?』


 機械で声を変えてるんです。こういうタイプの人って目立ちたがり屋なんですよね。そのうち爆弾の場所のヒントとか出し始めますよ。


 警察の人たちがなんかゴニョゴニョやってるんです。たぶん逆探知的なことやろうみたいな感じ。


『ふははは、私の声は3万円もするボイスチェンジャーで変えてある。声紋が検出できないだろう?』


 なんか変なこと言い出したなって思ったんですよね。


『逆探知も無駄だ。秘匿通信のためにその道のプロを雇った。色々必要なものがあるとかで、初期費用だけで620万もかかったんだぞ。しかも、そのエンジニアに月に70万払ってるんだ。もう3ヶ月目だ。安くしようとしたが、警察にチクられるかもしれないから言い値でやってるんだ、こっちは』


 お前の事情知らねーよって思いましたよね。そりゃ、お前が悪いじゃん。全ての元凶じゃん。っていうか、そんなお金あるならいい生活できたでしょ。


「爆弾はどこにあるんだ!」


 捜査本部のリーダーみたいな人が必死の形相で訊いてるんです。いや、爆弾犯が雇ってるエンジニア探した方が早いんじゃないのって思ったけど、ちょっと遠慮して黙ってました。空気読める方なんで、私。


『爆弾は、都内の各所に12個セットしてある。これは、ウクライナのディープネットのサイトでひとつ1万5000円で買えたんだ。戦争の裏で横流しされたやつを売り捌いてる不届者がいるようだ。それが12個ということは、いくらかかったか分かるか?』


 なんで小学生のさんすうみたいな問題出してきてんのよ? 捜査本部のリーダーも「18万!」とか言って正解叩き出してんの。意外と計算早いんだね。そしたら犯人もなんか火がついたみたいに話し出すの。


『私のいる場所から都内各所の爆弾は無線で繋がっている。このシステムを作るのに8万近くかかったぞ。それでも安く済ませられたがな』


「なんというコストパフォーマンスなんだ……!」


 捜査本部のリーダーがなんかテレビショッピングみたいなこと言い出すんです。なに費用節約できてえらいねみたいな雰囲気出してんの、この人?


『そのほかにも、移動用の車、宿泊や物件の賃貸料、食費や変装のための服飾代もバカにならない。一番痛いのは通信費だな。無線とかこの通信とかにもお金かかるからな。全部合わせたらなんだかんだで12000万円くらいかかったぞ』


 なに苦労話にしてんだよ? そこまでしないといけないならやらなきゃいいじゃん。世の犯罪者もコストカットに余念がないのかな? 最近物価も高いもんね。


『だからこそ、私はこの計画を成功させねばならない!』


 犯罪に損得勘定持ち出したらもう終わりよ。犯罪の思想が薄れるからね。そこは血反吐吐いてでもお金のことは微塵も出さない方がいいよ。犯人としての格が落ちるからさ。


『10年くらい前なら、都内数カ所爆破するくらいなら100万かからないでもできたんだ。遊園地を爆破した事件も80万くらいで収められたからな』


「な、なんだと! あの未解決事件もお前の仕業なのか!」


 こいつ、余罪自白してんじゃん……と思って、捜査本部のリーダーにコソッと提案したんです。


「あの、こいつ、おだてるとなんでも喋るタイプなんで、お金の話を軸に色々聞き出せると思いますよ」


 話聞いてみると、この爆弾犯、過去にもめちゃくちゃやってんですよ。


『最初の頃はな、お小遣いやりくりして小さい犯罪しかできなかったんだよ。できることも少なかった……。それが、自分で稼げるようになって世界が広がったね』


 なんか自分の成長物語を語り出したんです。今まで誰にも話せなくて溜まってたのかな? 話聞いてくれる捜査本部のリーダーのお陰で吐き出せる場所ができたみたい。ただまあ、同情なんでひとつもできないですけどね。


 結局、諸々の情報を総合したら犯人分かったんです。


 私の最低な元カレでした。


 私と付き合ってた頃も何個か犯罪に手を染めてたみたい。あの頃のドタキャンの理由、今になって知りたくなかったわ。


 元カレだってバレると取り調べとかであいつと会うことになりそうなんで、必死で隠し通しました。

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― 新着の感想 ―
オチへの伏線が上手いですね。
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