沈黙
沈黙が流れる。対して向こう側では、シンがなにやら説得でもしているかのように畳み掛けて話している。そちらは、もう完全にスルーをして……こちらに集中をする。
「たとえば、どんなことがこちらで起こるかな?」
どんなことでも、よろしくはないだろうが。目をつむれる範囲ならば、なんて考えがよぎってしまう。ティタニアをそのままにしてしまうぐらいなら、という天秤でどちらに傾くのか。そんな考えはよろしくないのだけれど、どうしてもそう考えがよぎる。
フロストを含めて妖精たちは、口を紡ぐんで考えている。こんな仮説の話、いくらでも考えれば思いついてしまうものだから。私が同じ質問をされても、同じ状態になるかもしれない。だったら、どうしてなんて言われてしまうかもしれないけれど。
「……考えられるのは、何も起こらない。もしくは、こちらの世界で災害等が頻発すること。といったところか」
フロストの意見の前者であったならば、願ったり叶ったりだ。手放しで喜べる。
『魔界にも多少なりの影響がない、とは言い難い』
やはりリスクが高いようだ。それならば当初の話のように、もう一度眠らせるしかない。
勝手に私の中では、この答えが納得である。
上手くいかなかったら、その時は連れて行ってしまっても良いかもしれない。これなら、対処法として良さそうだ。もうこれしかない、なんて思えてきた。
「じゃあ……まずは、眠らせてみてダメなら。というのはどうかな?」
『あとは。呼ぶときの儀式で、こちらが主人であることを証明して破壊をやめさせる』
私は、目を見開いて前のめりになる。そのために過去のやりとりを見たのか。なんて、ようやく理解できた。
点と点が結ばれただけではなく、利用するわけだ。それに、私は産みの母の孫。もしかしたら、これすらも交渉に使えるかもしれない。
そう考えると、目の前が明るくなる感じがする。
「それが上手くいくなら、解決だ!」
手を叩いて喜んだ。つくづく私は、単純にできている。でも、それくらい嬉しい解決策だった。色々な方法が見つかったならば、それでいい。こちらの世界には最悪、妖精たちとラミーがいるのだから。どうにかできそうだ、なんて思えてくる。
その時には、この楽しくもドキドキとした旅は終わりだ。
(ティタニアを連れていかないにしても、フロストとはお別れ……か)
寂しさが滲むが、最初からわかっていたこと。それが、もうすぐであることを自覚したに過ぎない。
フロストは、魔王で力が欲しいだけ。




