今後
大きな姿になったシンは、腕を組んで悪い笑顔をしている。その顔を見るたびに、ヒヤリとした感覚が流れ込む。
(今は空気に飲まれてる場合じゃない!)
頭を捻り、話したいことをまとめていこうと試みる。順を追うならば、まずはティタニアをどうするのか。これが先決だろう。
シンが今の状況では、話をまともに取り合ってもらえないに決まっている。今ひとりで頭を抱えていても、状況はなにひとつ変わらない。それならもう一か八かやってみるのみ。
「セレティア」
私が、女神ラミーを呼んだことで表情が一変する。光がさしたかのように明るい顔になった。彼女が欲している存在なのだから、目の前にできて嬉しいに違いない。でも私の目論見は、話の伝わらない今のシンを女神ラミーに託してしまうこと。そうすれば、話したい別のことを進められる。
シンは、ラミーが現れるのを心待ちにしているのか目を輝かせている。それに合わせるようにして、上空で円を描いていた星々が散り散りになり消えた。
シンの身体を越すほどの大きな女神が姿を現した。過去の時と変わらず、瞳を伏せて優しげに微笑む顔。長い髪を垂らして、女神の名に相応しい見た目だ。
しかしいつも表情を全く変えない女神ラミーが、この状況を一瞥をすると眉を歪ませた。
「主人……これは一体」
――ラミーでもそう思うんだ。でも、打開するにはこうするしかない!
「シンとラミーでちょっと話しててくれる? 他の妖精たちで、ティタニアの話をする! よーい、どん!」
私は、パンっと手を叩く。それでこの場の空気を切り替えたつもりだ。
なかなかな強引ぶり。それは、言い出した私でも思うこと。でもこれぐらいしなくては、ダラダラと時間が過ぎるだけだろう。
私はそう自分に言い聞かせる。
こちら側のシンと話ができるのは、もはやラミーしかいない。そしてラミーも主人である私の意見を第一優先する。それならば、それをうまく利用するしかないというわけだ。
「ティタニアを魔界にって話……どう思う?」
妖精たちは、皆こちら側に元からいた。シンの意見が絶対なのか黙っていただけ。近くで全て聞いてたはずの彼女たちの意見を聞く。
フィルが一番、発言数も多かっただけに一番に口を開いた。
『良いような気がしてるけど……実際はどうなるかわからない』
私もフィルと同意見だった。魔界に行ってしまえば、問題は解決されるような気もする。その後どうなるかは、残されたこちらの世界で長く見守るしかない。




