生みの母
おばあちゃん自ら言った、ティタニアの生みの母。もう頭がパンクしてしまいそうだ。どんどん進む過去の話に、私だけがおばあちゃんが出てきたところで止まっている。
理解したくても、疑問しか浮かび上がってこない。
「そもそも、なんでおばあちゃんが生みの母に?」
「こちらの人間じゃ無いと呼べなくて。この曲を知っている人間を探し出さなくてはいけないのよ」
……それが、たまたまおばあちゃんだったというわけだ。
おばあちゃんは、私のあの本をくれた。今目の前にいるおばあちゃんの手の中にも、同じものがおさまっていた。分厚さも割とあるので、私の知っている本だろう。
まだ新品のような輝きで、日焼けもない綺麗な本は貰った時のことを思い起こさせる。
(おばあちゃんは、私にあの本を渡して……何を伝えたかったのだろう?)
そんなことを考えているうちに、ティタニアが動き出した。頭上の花冠を手に取り、おばあちゃんの頭にのせた。そして膝をつき祈りを捧げるようにして、頭を下げる。
頭を下げたとしても大きすぎて、おばあちゃんたちはミニチュアのように見える。
何やらぶつぶつと唱え、ひと呼吸をおいてから立ち上がった。足を地面につけ、祈るようにしていた手を解く。
「我が主人」
女神ラミーと同じように、主人であり母であるおばあちゃんに呼びかけた。目は開かれているが、黒目は無い。どこをみているのかは、顔の向きで想像するしかなさそうだ。
「ティタニア。あなたは、人の言葉の真偽が分かる。それに対して、審判を下す役目をティタニアに授ける」
ここで、ティタニアが悪いと判断すればそれ相当の天罰を与える存在となった。そして、ティタニアの力を利用しよう。
そう思った人間への制裁として、力を振るったのだろう。とするならば、その状況を作った人が悪い。そう思ってしまうが、きっと色々な背景があるはず。
そのことまでは言及しないが、真偽のわかる。真実の目を持つクジャクを儀式に使ったことで、得られた力なのだろう。
「御意」
会釈のようにさっと頭を下げた。やはり、大きな彼女は頭を下げようともおばあちゃんよりもずっと高い。それでも下げる頭からは、何があったとしてもやり遂げる。そんな意思を感じた。
――確かにあのクジャクの柄は、なんでも見透かされているのでは無いか。そう思ってしまう目だった。
「じゃあ、過去の話が終わったから……戻ろうか!」
質問も受け付けず、ステッキを取り出した。ふわりふわりと動かす。ここへ来る時と同じ様に、またしても身体が浮かび上がった。




