リズム
この不思議なことも解決されるのだろうか。深くため息をつき、成り行きを見守る。心は不安定なままだ。
「ティタニアの夢、光浴びて咲く。真実の道筋を、空に描いて。我らに祝福をティタニアの力」
向こう側にいるシンが、リズム良く唄う。これは、お手玉曲の2番だ。円状になって妖精たちが座っていて、その外側を唄いながら円に沿って歩く。
盆踊りのように歌に合わせて、手を揺らしている。可愛らしい動きに、そこだけ見たら微笑ましい。今の状況では、そんな風に思う余地はない。
しかも唄っているのは、2番で1番を唄っていない。これに何か意味合いがあるのかもしれないが。歌詞の意味を考えても、2番の歌詞の方がティタニアに関していそうだ。
「我らに祝福を……ティタニアの力」
再度同じように、皆で声を合わせた。上空でぐるぐると回っていたクジャクたちは、お互いにぶつかり合いひとつの大きなクジャクに変化していく。
それと共に、周囲の空の色が墨汁を垂らしたような真っ黒な雲がどこからともなく現れた。重厚感のある雲は、禍々しく恐怖感を植え付ける。
「ヒィイ……何あれ……」
私は、両手で自分自身を包み込み怖いもの見たさでその雲の動きを見る。
大きな翼を羽ばたかせて、分厚い雲の中へと頭から入っていく。羽の先まで綺麗にすっぽりと、真っ黒な雲の中へ消えてしまう。
ここで事の成り行きを見守っていた女神ラミーが、口を開いた。
「我が主人、産みの母を」
たったその言葉だけを残して、女神ラミー会釈をして消えた。私の時もそうだった。自分のやることだけやったら、サッと姿を消してしまう。
そして、妖精が恐る女神ラミー。この存在がなければ、クジャクを呼ぶこともできなかった。この儀式を執り行うためには、力のある女神でないといけなかったのだろう。
そして、ふたりめの女神ティタニア。と言っていた。そのことから推測するに、唯一の女神だったのだろう。
そんな存在だからこそ、敵に来るのは恐ろしい。これまでの妖精の反応にも納得だ。
「花川和枝、そこにいるのよね?」
ユエに呼ばれた女性、花川和枝。
「お、おばあちゃん!?」
思いがけない人物に、声が大きくなってしまった。ハッとなり、口を押さえた。が、時すでに遅し。声に出てしまった以上、消すことはできない。
やらかした、そう思い息を止めて隣のフロストに目線を送る。彼は、私の方を見てうっすらと笑みを浮かべた。
(ど、どういう反応!?)
腰丈の木の中に収まるようにして、身をかがめた。バレた、という反応にしては余裕がありすぎる。
「クスクス。大丈夫、見えないように魔法がかけられてるから」
シンの言葉にホッとして、ため息を吐いた。それならそれとして、もっと早くに言ってほしいものだ。肩の力も一気に抜けて、もう一度顔を覗かせる。
「でも、完全に隠し切れないから要注意よ」
「うっ……わかった!」
私の知っているおばあちゃんとは違って、若い時のよう。写真で一度見たことがある程度の姿だ。




