だれ?
音がする方に、パッと後ろを振り返った。軽めの音だったのもあり、床を注視する。
「いったたたた……何でこんなところに穴が!」
どうにも小さすぎるからか、なにから発せられている声は分からないのだ。声の主が分からないようでは、どうしようもない。
ただ、痛がっている声の持ち主は、やはり上から降ってきたようだ。
「あれ? みんなもう揃ってるんだ?」
気さくそうにこちらに話しかけているのか、おーい。なんて声をかけてくる。小動物が歩くような、可愛らしい足音付きだ。その足音は、こちらにどんどんと近づいてくる。
ゆっくりと、しかし着実にこちらに来ているのがわかる。背後は壁。どうすることもできず、相手が好意的な人物であることを願った。
『……最悪だわ。シンが来たわ』
ユエが深いため息をついた。シン、チラッと前に名前が出ていた。最後のひとり、妖精のことだろう。それに、ユエは探していた人物。
みんなが揃ってる、というのは、妖精が全員これで揃うことを示していそうだ。
これで揃ってしまう。まだ、解決法を見出せていないのに。立ち止まりたくとも、そうはさせてくれない。
「シンが来たって……どうするの?」
私は声をひそめ、ユエに尋ねてみる。しかし、なんの回答も得られず、シンが先にこちら側へ辿り着いた。
小さな存在のシンは、一寸法師がいたらこんなサイズなのか。と思わせるほどの小ささをしている。まち針が剣になりそうなサイズ感だ。
「みんなもう揃ってるんだね〜。あらあら、古代の姿になっちゃって」
『古代の姿ってなによ』
全身に白いドレスを身にまとい、キラキラと光スパンコールが散りばめられている。ホワイトカラーの髪は床につきそうなほどに長く、頭に乗せられたティアラも美しく輝いている。
全身が美しい宝石のようで光を放って、本人が星のようだ。
そのシンは、目を大きく開かせて何も知らない他の6人の妖精が信じられない。とでもいいだげだ。
「ウソでしょ……? みんな忘れてるっていうの?」
『残念だけど』
シンは腕を組んで、考えるそぶりを見せた。ひとしきりなんだ末に、ステッキを取り出した。子供が好きそうな魔法のステッキのようで、これにもキラキラと石が散りばめられていた。
ぐるりとステッキを回して、ラメの雨を降らせた。
「しょうがない。過去へ連れていってあげる。ちゃんと何があったか……思い出してね」
真っ白な光に包まれ、異常なまでの眠気が襲いかかる。強制的な眠りに、抗えるはずもなく目を閉じた。




