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降る

 フィルの記憶では、鳥が羽ばたき羽がふわりと上空を舞っていた記憶があるという。さらに、その羽が形を変えてイラストのティタニアが現れたのを覚えていた。



 ティタニアが、黒目のない瞳を開き顔を左右に動かしたと言う。そこで記憶はプツリと途絶えていた。




『鳥について、何か今見ててヒントが書かれていなかった?』




 私は、首を横に振った。自分の探していた範囲内には、鳥は全く出てこなかった。妖精たちが儀式を行い……とは記載されていたものの、儀式内容について触れる内容は出会えなかった。



 格天井を見上げ、クジャクのような羽の鳥を見つめた。じっと見つめたとて、答えなどわからない。それでも、美しさに目が奪われるようにして見つめてしまう。




「鳥……か」




 ボソリと呟き、私は天井から目を離した。

 お手玉曲の2番を今まで知らなかった。1番の知ってる範囲では、ティタニアの名前すら無かった。というのも、歌の区切りのちょうど良さでおそらくカットされている。




 私が知っているのは、名前をカットされた後の1番だった。ティタニアの名前をこの曲でも聴き、驚きを隠せないでいた。




「お手玉曲の2番の最後が、"空に描いて"とあったけど……それは関係ないのかなぁ?」



 鳥らしさを見いだすとするならば、心当たりのあるのはそれだけだ。あとは、フロストが読んだ本に載っているのか。はたまた、妖精の記憶を呼び起こすか。



 そもそもこの曲を知っているのは私だけ。しかも2番を知ったのは、最近のこと。



 出ていた私の大切な本を開いた。秘密の図書館で見つけた同じ本よりも分厚く、太陽の光で傷んでしまった大切な本を開く。

 追加されたページも、昔からあったかのように馴染んでいた。




 私の知る曲の続きまで、しっかり記載されていた。




――――


 蝶の羽を広げ、降り立つその姿。草花の囁きは、風に乗せて。

 我らに祝福をティタニアの力


 

 ティタニアの夢、光浴びて咲く。真実の道筋を、空に描いて。

  我らに祝福をティタニアの力


――――



 祝福、とあるのに全くもって祝福では無い。むしろ、悪夢の始まりだろう。




『真実の鳥、だったわけね』




 ユエの声に、水を打ったよう静かになった。ユエの中で何かが繋がったようにも感じられる。

 みんな彼女の言葉の続きを固唾を飲んで待つ。




 言いにくそうな雰囲気で、揺れる声で話し始めた。




『クジャク、その通りよ。真実の目を持つクジャクを呼んだのよ……』




 カランッとユエの声を遮るように、遠くで音がした。遠いように感じただけで、明確な距離はわからない。

 硬めの何かが、降ってきたようだ。

 

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