心地よさ
白い光は、暖かくて心地よさを感じる。日向ぼっこをしているような、そんな心地に眠気を誘われてしまう。
「我、主人」
女神ラミーの澄んだ美しいい声が、頭上から降ってきた。優しく包んでくれていた手のひらから下ろされ、フロストの目の前に足をつけた。
ざらりとする畳の上で、先ほどまで月を映し出して秘密の図書館に繋がっていた場所だ。
「ラミー。本当にありがとう!」
「それでは」
ラミーは、必要最低限しか話してくれない。それでも、主人である私を尊重してくれる。私が必要としていることを瞬時にどうにかしてくれる力も持っている。それなのに、ティタニアのことのみが、秘密の図書館で見つかった本には書かれていない。
「ティタニアについて……わかったことがあるのだけれど」
私は、先ほど知ったことをフロストに共有する。話は、妖精たちも聞こえている。静かにしているが、きっと固唾を飲んで話を聞いているのだろう。それとも、妖精にはもうすでに周知の話なのかもしれない。
フロストは、聞けば聞くだけ暗い顔に変わっていく。その気持ちは、手に取るようにわかる。
特に彼にとってみたら、自分がしようとしたことのせいで。その気持ちになってしまうのは、当たり前だろう。ここの世界の人間では無いから、気にする必要はない。その考えになる魔界のものもいるだろうが、フロストは違う。
だからこそ、傷ついてほしくない。そう思いながらも、書かれていたことを正しくそのまま伝えるしか私にはできなかった。私の力では、事実を捻じ曲げることはできないのだから。
「でも、まだ! 妖精を集めたとしても、ティタニアを寝かせばいいわけで……ね?」
「1度目は、運よく言ったとしても。ここまで強力な力を持つ女神なら、次はない可能性は高い。俺のように、別の世界から来てまで手にしたいほどの力を持つわけだから」
そう言われてしまうと、もう最後の妖精を集めるのを諦める……という考えがよぎってしまう。
『私たち、妖精ていう存在を忘れてもらっては困るわ』
ユエが強めに言葉を発する。彼女たちは、それぞれに何やら小声で言った。それをまとめるようにして、ユエがため息をつきながら説明をしてくれる。
『私たち妖精7匹。すべてが集まると、ティタニアを呼んでしまうようにできている。それでも、私たちが結界を発動させてティタニアをどうするということは可能なの。ただ……』
「ただ? そこまでみんな分かっているのなら、なんとかなりそうなのだけれど?」
『妖精たちは私も含めて、その呪文を知らないのよ』
ユエがため息を吐きたくなるのも、結界でティタニアをどうすればいいかまで知っていて尚、秘密の図書館で探し物をしたいというのも納得だ。全ての点が繋がり、最後どうするべきか。なのだ。
まだ見れてない本がたくさんある。その中にヒントが隠されているかも知れない。
私ができることは、その本の中からヒントを探すこと。残されていることは、やってみよう。話はそこからだ。




