女神?
ようやく、知りたいことを掴めたかと思えば。よく知った本にここで巡り合うとは、思いもよらなかった。
書かれている内容は、かなり違うよう。薄いページを開いてみれば、初っ端に”ティタニア”と描かれていた。
ティタニア、女神であっても叶わない。古代神、ティタニアを呼び起こせば、世界破滅。
なんとも恐ろしいことが書かれている。
しかしながら、この続きに冷や汗が流れてしまった。
「妖精を7匹集め、本を2冊……重なった場所にて、古代神が現れる?」
まさかの今私たちがやっていることが、”ティタニア”を呼び起こそうとすることだったとは。魔王であるフロストの力を増やす目的だったはず。
そのために私たちは妖精を集めていただけであって、ティタニアを呼び起こそうなど全く考えていない。
何がどうなって、こうなっているのか。たまたまの偶然が重なり合ったことだろう。だとすれば、嫌な重なり方だ。
しかし、この本に書かれていることが正しいのであれば、何とか回避するしかない。魂が抜けてどこかへ行ってしまいそうなのを、ぐっと捕まえた。
「ど、どうしよう?」
そんなことを言ったところで、フロストはまだこちらには来ていない。大きな独り言が、私の空いた胸の穴を大きく広げていく。
打たれた鐘は、もう止めることはできない。鳴った音を止める術を私は知らないでいる。ここまで進めてしまったのだから、後ろに戻ることはできない。
ならば、どうするべきなのか。
ティタニアを呼ばない。それには、最後の妖精を集めなければいい話。それしか方法が、浮かばなかった。
「まだあとひとり、妖精は残ってるんだよね……」
――集めなければ……でも、そうすると。フロストの願いは叶わないわけで……いやいや! 世界破滅は、何としてでも避けないと。
自問自答を繰り返すも、答えは明瞭化出来ずに終わる。
本をペラペラとめくってみる。何かヒントでも載っていないだろうか。この本から得るヒントは、私にとっては大きなものだと感じていた。
今回のティタニアについても、大きな発見だった。それならば、対処法なり書いてあってもおかしくない。
「えぇっと、ティタニアを寝かす?」
面白いことに、ティタニアを倒す。ではなく、寝かす方法が書かれていた。
それも、その寝かしつけ方法が子守唄というのだ。
「世界を脅かす存在が、子守唄!」
笑いを堪えきれず、吹き出してしまった。隣描かれたティタニアは、背中には蝶の羽がはえており、ウェーブを描く美しい髪をハーフアップしてその髪の上には花冠がのせられていた。そこだけ切り取れば美しい女神像だった。
しかしティタニアは、骸骨。美しさは全くなく、禍々しさがイラストからも漂っている。
そんな彼女を寝かすには子守唄ときたら、笑わずにはいられない。




