表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/113

文字の正体

 私は、部屋を一瞥した。他に気になることと言ったら、特に無いように感じる。

 やはり、この壁を壊す以外に方法はなさそうだ。



 あまり力に訴えて、無理に謎をねじ伏せるというのは好きではない。だからと言って、ここにずっととどまるわけにもいかないだろう。



 頭をひねらせ、視線をぐるぐると天井から床へとくまなく見て行く。この景色に穴でも開く勢いで、私はヒントを探し始めた。それでもないなら、壁を壊しても致し方がない。


 

 そうでないなら、正直なところ諦められないでいる。頭を抱えてうずくまってしまいたい、そんな気分だ。

 しかしそんなことも言ってられないので、穴の空いた壁にもう一度視線を向けようとした。身体は完全に別を向いてしまっていたので、足を下げて方向転換をした。


 

 カランと音を立てて、フロストが無造作に置いていた掛け軸に足がぶつかった。文字の書かれた周りを彩る深い緑色と目が合う。下に置かれた掛け軸を手にして、広げてみる。

 


 ――そういえば、掛け軸の文字って?


「これって、文字じゃない!」



 ミミズが這う文字は、文字ではなかった。上から下へ向かってぐるぐると線は(えが)かれており、下側で右に小さな矢印が書かれていた。

 矢印の大きさはかなり小さく、凝視しなければ気がつけないほどの小ささで書かれている。

 見落とすのも無理はなさそうだ。




 先ほどかかっていた方に掛け軸を持っていく。矢印の先を手で探っていくことにした。

 見た目では判断がつかないほど、壁にはおかしなところは見受けられない。




 ざらざらとした塗り壁を手のひらで触って、横にスライドさせた。手のひらは、床の間を区切る柱にぶつかった。

 掛け軸からここまで、何も手のひらに伝える変化はなかった。



 少し上下が違ったのかと、急いで上側と下側も確認した。しかし、何も無い。壁からそっと手のひらを離して、ぺたりと座り込む。手のひらがジンジンとして、熱を帯びた。




 ――何もない? じゃああの矢印は?



「この柱の先は、どうなんだ?」



 今度は、フロストが確認をしてくれる。柱の右側にも壁が続いており、その先を探してくれるようだ。

 突如として金属音がした。やはり何かがあったのか、フロストは私の方に顔を向ける。




 私は瞬きを数回して、壁に顔を近づけてなんの音だったのか見る。そこには上手く壁と一体化した、扉の取手らしきものが顔を覗かせた。

 その部分を押し込むと、ドアハンドルが出て来た。



 壁の下の方に付いているが、引っ張れば扉が開きそうだ。その先に何かあるかもしれない。そんな思いで、喉を鳴らした。




 出て来たドアハンドルにフロストの長い指がかかり、ゆっくりと扉が開かれる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ