03 おっぱいの大きさは大事なようです・・・・・・
本日からカクヨムにも本作の投稿を始めました。
最新話までは一気に出しませんが。また一から読めるのはお得かも?
なろうでは先行して届けするので、今後ともよろしくお願いしますね!
「一体なんなのですか男という人種は! 相手が女だと知ればすぐに胸やお尻に手を出して、エッチスケベ変態最低最悪っ!」
西門から城下町を出て少し離れたところに腰を下ろしたカレンはまださっきの事件にご立腹の様子で、お嬢様口調も継続中だった。
そして何故か僕の方をきつく睨んでくる。
「いや、僕は何もしてないからね?」
よく分からないまま弁明をしてしまった。
「貴方も男、しかも前科ありですわ」
まだあの宿屋のこととチャイナドレスを根に持っていたのか・・・・・・。それにしても男ってだけでこんなに軽蔑されるなんて理不尽にも程があるぞ。
「前科って・・・・・・、あれは事故だろ? だからお互い様だ、裸で居たカレンも悪い」
「私の全てを見ておいて罪を認めないなんて、貴方も牢獄に行った方がいいですわ!」
どうしてすぐにお縄頂戴したがるんだこのお嬢様は・・・・・・。
「優理はカレンの裸体を見たのか?」
「おいちび助、裸体とか生々しい言葉を使うな。変態度が一層深く聞こえるだろうが」
「それくらい気にするなよー」
「僕の首に巻かれた縄が締められるか解かれるかの瀬戸際なんだから気にするだろ」
「縄で絞めるですって!」
「変なところだけ切り取るな!」
「うわー、優理って結構攻めるタイプなんだね。てっきり受ける側かと思ってたのに」
「攻めと受け・・・・・・破廉恥ですわ!」
「あっ、もう僕はついていけない・・・・・・」
そもそも男一人と女二人な時点で多数決の原理的に僕に勝ち目はなかった。しかもその二人がチキとカレンなんだからどうしようも無い。例え男が十人いたとしても勝てない説すらある。
「で、結局のところアンタはカレンの裸を見たのか、見てないのか?」
「・・・・・・ちょっとだけ、一瞬、そう、ほんの一瞬だけ」
なんでチキはそんなにカレンの裸を見たかどうかにこだわっているのか?
カレンの方をちらちらと見ながら曖昧に答えた僕にチキは満足しなかったようで、黄色い瞳は真っ直ぐ僕を射貫いていた。
逃げても逃げても追ってくるなんて流石俊足の獣だ。サバンナに生まれてたら絶対にチーターだったろうな。チキがチーターなら僕は逃げる草食動物ってところか・・・・・はは、我ながら受ける側ってのは間違ってないのかもしれないな。・・・・・・・・・・・・降参です。
「見ました」
「見たのか・・・・・・」
あ、この反応は処刑コースだな。せめて首だけにしてください。手首とか足首とか切れそうなところ全部切ってバラバラにはしないでね。
無理矢理白旗を揚げさせられて、極刑を待つ状態の僕にチキは沈黙を装った後、黄色い瞳をクリクリとさせながら、
「どうだったカレンのは! その・・・・・・大っきいのか?」
興味津々に、自分の胸を気にしながらカレンのそれについて聞いてきた。
「え?」
「ちょっとチキ、何てことを聞いているのよ!」
「いや、だってさ! アイツ、ウチには見向きもしなかったから・・・・・・。カレンのが大きいからなのかなって思って・・・・・・」
なるほど、そういうことか。だからあんなにカレンの裸にこだわっていたのか。
カレンが「男はすぐに女に手を出す獣だ」って言うわりに、自分は女なのに興味を持たれなかったから、その原因が女性らしさが無い―――つまりおっぱいが小さいからなんじゃないかと思って、カレンのそれの大きさが知りたかったんだな。
確かにカレンは普段胸にさらしを巻いていて、実際の大きさが外見からだと分かりづらいからな。いや、だとしても僕に聞くより本人に聞いた方が・・・・・・・。
「優理の、男の目線としてカレンは大きいのか!?」
そ、そういうことか・・・・・・。でもこの場合なんて答えるのが正解なのだろうか?
僕の本心としてはカレンの胸の大きさは及第点というか、あくまで僕自身としては充分な大きさだとは思うが決して大きい訳ではなかった。一般的な大きいの定義としては、走れば揺れる、服が引っ張られてパツパツになる、手に余る、意識しているわけでは無いがついつい目が吸い込まれるなどが考えられるが、カレンはこれに属しているわけではない。
だから僕の答えとしては――――――――――
「いや、そんなに大きくなかったよ」
「そうなのか?」
「ああ、この目でちゃんと見たから間違い無い」
「じゃあ、おっぱいの大きさは関係ないということだな!」
「その通りだ! 女の子はおっぱいとお尻だけの存在では無いのだ!」
「別にそこまで言ってないけど、良かった! これで自身を持っていけるよ!」
「なーに、そんなこと心配のしの字もない・・・・・・ぞ・・・・・・」
「へぇー。私のは大きくなかったのだな」
「ん、あ、いや、そういうことではなくてだな。その一般的に見たら大きくはな・・・・・・」
「それは大きくないということだろう! 人のを見ておいてそのような雑言を垂れるとは良い度胸だな優理。貴様には全ての記憶を無くして貰わねばならぬ」
「待て、誤解だカレン、刀を構えないでくれ! 命は、命だけは取らないでくれー!」
「覚悟!」
――――――――――――だめだだめだ!
本人を目の前にしてそんな失礼なことは言えない。
なら必然的に答えは――――――――――――
「大きかったよ。カレンは着やせするタイプなんだ。加えて形もとっても綺麗で、あの男がつい触りたくなるのも分かるよ」
「ほ、ほう、そんなに言われるとなんだか気持ちが悪いが、嫌な気はしないな」
「もっと誇りに思って良いよ! カレンはとても素敵なおっぱいを持った強くて優しい魅力的な女性なんだから!」
「い、いや、そんな・・・・・・。私なんて恋愛経験全然無いのですのよ」
「そんなところも可愛らしい、是非僕とお付き合いから始めませんか? 将来は三人の子供を共に育てましょう」
「き、急にそんなことを言われましても困りますわ・・・・・・。チキ様はどう思われます?」
「ああん? 何? ウチに聞いてる? 小っさいおっぱいで魅力の糞も無いウチに聞いてる?」
「だ、大丈夫だよチキ。チキも今は小さいだけであって、年齢を重ねれば必然的に大きくなるよ!」
「そ、そうですのよ。まだ成長段階なだけですわ!」
「うるせーデカパイ。ウチはもう十四なんだよ。もう成長期も終わりの方が近いんだよ! あーやってらんねぇ。おっぱいでかい奴とは一緒に冒険なんて出来ないわ。てかそもそもファンタジーの世界におっぱいでかい奴多すぎるんだよ。なんで出てくる新キャラが毎回巨乳なんだよあり得ないだろ! 現実見ろよブタ野郎・・・・・・」
―――――――――――――チキィィィィィィ!!
だめだ、こんなにやさぐれたチキは見たくない!
あと小さくてもファンになってくれる層も居るから諦めちゃだめだぞ!
二つのパターンを脳内で再生してみたが、どっちに転んでも上手くいく気がしない。こうなれば最終手段として沈黙を選択するか?
いや、そもそも僕に黙秘権は与えられていない。
何も公言しなかったとしてもカレンは怒るだろうし、チキは追求を辞めないだろう。
万策尽きた・・・・・・。
チキから向けられる真摯な眼から逃げるように宙を見上げ、力の抜けた腕をだらんと放った。その時だった、
「あの、そろそろ準備イイ?」
哀れな僕を見かねた天使様が舞い降りた――――わけでは無く、地下洞を出てからだいぶ時間が経ったにも関わらず、お呼ばれしないことに痺れを切らしたソニアが口を尖らせて現われた。
「あー! ごめん、遅くなっちゃって。準備は出来てるよソニア」
僕はこの期を逃すまいと多少大袈裟ではあったが、チキの拘束から逃れるようにソニアに向けて声を張った。
チキとカレンもソニアの様子から、この話はもう続けるべきでは無いと判断してくれたようで、ただチキは不満げな顔をしていた。
「遅くなってすまなかったソニア。辺りもだいぶ暗くなってきているしすぐに取りかかってくれ」
冷静さを取り戻したカレンは普段通りの口調に戻る。
カレンの言う通り、丁度太陽が西の地平線に足を沈めようとしているところで、グオーレ城の街灯りが無ければ互いの顔を判別するのも難しい頃合いだった。輝きの失ったセピア世界の夕方には青春のオレンジは存在していないのだ。
かろうじて太陽があるうちに動かないと、それこそ夜は真っ暗で何も見えなくなってしまい危ない。加えて未開の地に足を運ぶことになるのだからなおさらである。
「承知シマシタ。お二人は山を見て立ってクダサイ」
ソニアの指示通り優理とチキはグオーレ城の背に聳え立つ三角の壁に正対する。
「一度しか言わないノデ、ちゃんと聞ク、イイ?」
堅い感触が背中に伝う。背後から聞こえる声に優理とチキは軽く頷く。
「イマからワタシの魔力で瞬間移動させる。デモ正確な場所はワカラナイ。全部ワタシシダイだから許シテネ?」
「ん? 待ってくれそれって・・・・・・」
「ワタシが喋っテル、静かニシテ」
質問する間も与えてくれず、優理は黙って首肯させられる。
「大事ナノは帰リ、優理のポッケにワタシの魔力のこもった羽根を入れといた。ソレでココに戻ってコレル。使い方は空に向けてナゲル。ちゃんとミンナで仲良く手をツナグコト、イイ? それじゃイクヨ」
「待って、もう行くの!? もっと詳しく・・・・・・」
《瞬間移動》
確認は取るくせに聞く耳が無いのはアンドロイド故なのか?結局詳しい羽根の使い方も聞けないまま僕とチキはソニアの魔法によってその場から姿を消した。
「二人とも無事に帰ってくるのだぞ」
山の向こう側へと飛んでいく二つの目映い円光となった優理とチキを目で追いながら、カレンは二人の健闘を祈った。
そんな一人残ったカレンにもこれから大きな試練が待ち受けているとは、本人は知るよしも無い。




