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aラストティア ~荒野の楽園編~  作者: 蒼骨 渉
第五章 呪われた城と虹の精霊
55/60

02 次なる一手と通りすがりの痴漢?

久々に5000文字オーバー・・・・・・。

ちょっと長いかもしれませんが耐えて読んでください!

「ソニアと申します。ヨロシク・・・・・・じゃなくてアリガトウ」


 決めポーズから頭を下げて挨拶をするソニア。遅れて僕等も反射的にお辞儀をする。

 初めましてのヨロシクと助けてくれたことへのアリガトウを同時に使う場面なんて相当無いというか、きっとこのシチュエーション以外あり得ないだろうな。

 そんな個人的な感想はさておき、僕は改めて目の前に居る少女を目視する。


 見た目だけで言えば制服姿の女子中学生と表現するのがぴったりで、フリルの付いたミニスカートが彼女の可愛らしさを際立たせている。水のティアの精霊守護に相応しい光沢のかかった水色の髪はサイドで結ばれたツインテールで、膝下を越えて床にまで付くのでは?と思うくらい長く、彼女が動くたびにフリフリと遊び回っていた。

 容姿だけを取ってみれば確実に人間に見える彼女だが、声の特徴からするとおそらく彼女の正体は人間ではなく機械――――アンドロイドだ。


「よろしくねソニア! ウチのことはチキって呼んでくれていいよっ・・・・・・てスゴッ!」


「カレンだ、よろしく頼む・・・・・・堅いな」


「チキ・カレン、ヨロシ・・・・・・・・・ナニしているの?」


 表情にこそ出さないのがアンドロイドたるものだからなのかは分からないが、自分の置かれている状況をイマイチ飲み込めていない様子のソニア。

 チキとカレンはそんなソニアにお構いなく、制服の袖から伸びる腕や足を触り、感触を確認していた。きっと二人もソニアがアンドロイドだと思ったに違いない。そしてその反応から察するにはやりソニアの身体は機械で出来ており、皮膚や筋肉のような柔らかさと張りはないみたいだ。骨と金属とがぶつかる堅い音も聞こえてきていた。


 可愛い機械女子中学生に興味津々の二人に対し、肌を触りに行けない僕は軽く質問を投げかける。


「ソニアはソラの精霊守護でアンドロイドってことで合ってるかな?」


「ザッツライト。ワタシはソニア。アンドロイドで精霊のソニアです。アナタは?」


「あっ、ごめんまだ僕の名前言ってなかった。優理です、よろしくソニア」


 相変わらずの対人スキルの無さを発揮! でもよく考えたら相手はアンドロイドだから対人ではなく対機械になるな。だとしたら機械相手にもきちんとコミュニケーションを取れなかったことになり、さらに言えば機械に負けたことになるのだが・・・・・・。


 ちらっ、ちらっ。


 目を泳がせながら周りの反応を確認する優理。

 誰も僕を痛い目で見ては・・・・・・居なさそうだ。よかった。

 たった三言のやり取りで浮き彫りになった実力に傷心した胸をほっとなで下ろす。


「その、話を戻すんだけど、ソニアならこの問題を解決できるの?」


 僕の問いにソニアは大きく首肯して答える。


「ソニアに任せて。だからソラをタスケテ欲しい」


 そしてソニアは力強く一歩踏み込んで僕の目をじっと見つめた。

 すると今まで黙って横に立って居たイリィが口を挟む。


「精霊界で魔力を回復するために休んでいたソニア様は皆様の会話を聞いていたようで、お困りの皆様の力になりたいと私に申し出ました。ただソラ様の意識が無い状態では精霊は姿を現せないので、私の魔力でゲートを越えて来ております」


「なるほどね、だからアンタも一緒に居たわけか。関係無いのになんで現れたのかなーって不思議だったわ。ちゃんと意味はあったんだね」


 うん、悪気は無いんだろうなチキは。僕も疑問に思っていたことだったし聞こうと思ってたことだから・・・・・・にしても直球すぎるだろ! イリィも僕達が疑問に思っていることを前提にして、自分が居る理由まで説明してくれたというのに・・・・・・。

 そんな僕の切なげな思いもイリィには必要が無かったようで、イリィは黒い歯を覘かせて笑っていた。

これが大人の貫禄ってやつだ。イリィが何歳なのかは知らないが。


「つまるところ、ソニアに任せれば優理とチキは山を越えて北を目指せるということだな」


「チガウ」


「え、違うの? 僕もてっきりカレンの言う通りだと思っていたんだけど」


「ヤマは越えナイ。二人はキエテ、現わレル」


「消えて?」


「現われる?」


 聞き取れはしたがイマイチピンとこない僕とチキは互いに顔を見合わせてソニアの言葉を復唱する。


「えーーと、つまりそれって・・・・・・瞬間移動的なやーつ?」


「ほっほっほ、まさしくチキ君の言うとおり、瞬間移動って奴じゃよ」


「マジかっ! てかなんで爺さんが答えるんだよ」


 チキの疑問に答えたのは意外にもラムじいであった。

 いや、意外ではないか。ラムじいは元々ティアの能力を扱っていたわけであって、他のティアの特色もある程度理解しているのだろう。

 思えば最初からラムじいだけは真剣に悩んでなかったようにも感じる。


「瞬間移動か・・・・・・。この世界だとそんなことも可能なんだな」


「ま、瞬間移動くらい当然じゃろ」


「くらいって、現実の世界じゃありえない話なのに当たり前みたいに・・・・・・」


「そうかの? 現実にもあるじゃろ、ほら、移動した先にさっき出会った人が居た! みたいな瞬間移動が」


「それはドッペルゲンガー的なやつのことか?」


「ドッペルゲンガーって何さ優理」


「えーっと、簡単に言うと自分によく似た幽霊が居るってことだよ」


 知らない横文字に興味を示したチキに対して僕はあえて幽霊という言葉を選んで意地悪をした。

 さて、どんな反応をするかなー。


 心の中でそんな事を言いながら、悪い顔をしてチキの反応を愉しみに待つ優理。

 しかしチキの反応は優理が思っていたようなものとは違い、


「自分に似た幽霊か・・・・・・。分身ってことかな?」


 至って平然としていた。

 あれ、思っていたのと違うぞ?

 優理が首を横に倒すのと同時にカレンもその様子を不思議に思ったのか、口をぽかんと開けていた。

 たしか修練の塔に入る時は幽霊に怯えていたはずなのに今はケロッとしている。何かチキにオバケを克服するような変化があったのだろうか?


「ま、ドッペル分身は置いといて、ソニアが瞬間移動させてくれるなら話は早いね! ここにいつまで居ても仕方ないしさっさと行こう」


「そ、そうだな。イリィの魔力でソニアもここに居るらしいからな。気をつけて行ってくるんだぞ二人とも」


 何事も無かったかのように振る舞うチキに若干の遅れを取ってカレンも頷いた。

 まぁ、わざわざ追求することの程でも無いか。克服したならそれはそれで良いことだし。


「じゃあソニアよろしく頼む」


「うんマカセテ・・・・・・と言いたいケド、外じゃないとムリ」


「そ、そうなのか。じゃあ外に行くか」


「ウン」


 そのままスッと行けるとばかり思っていたが、瞬間移動なんて凄いことをするんだ、何の弊害も無しにできるほど甘くは無いってことか。


 城下町に顔を出すこともあって、ソニアとイリィには一度精霊界に戻って貰った。グオーレ王国に残ってソラとラムじいの護衛をするカレンも瞬間移動するところを見届けたいと言い張るので、ラムじいを残して三人で表に出た。

 地下洞から地上に上がった先は西門近くにある協会の裏に繋がっており、誰かに見られないように気を配りながら地上に這い出る。


 時としてはグオーレ城での闘いから半日くらい経った頃だろう。つまりグオーレン王の失踪からも同時間だけ経ったことになるのだが――――――やけに静かだな。

 辺りを見渡すとポツポツと灯りが点き始めていて、一日の終わりを迎える準備の雰囲気が漂っていた。初めて訪れた時と変わらぬ風景。

 おそらく街の人々にはグオーレン王が居なくなったことも、王の間が荒れていたことも、チャオス王子の婚約者選定の結果も、まだ知らされていないのだろう。

 それは王の不在による国民への不安や不信を与えないためではない、もっと重大な、王族の崩壊も招きかねないほどの事実を隠すためだ。

 だから正確に言えば、まだ知らされていないのではなく、知らせないのだ。それは生命の維持に直結する危機であり、一国の王が居ないことなんか比にならない程の絶望なのだから。


 ティアの所持者(マスター)が居なくなった――――――なんて言えないだろう。


 グオーレ王国にとっては一世一代の大事件かもしれないが、優理達にとっては変わらぬ日常を広げる街は好都合だった。

 もしここで犯人捜しに始まり、城下町一帯がクーデター民で溢れ、兵士による検問強化なんてことが行われたなら、僕達は西門までの通りを景観に目を移しながら歩くことはできなかっただろう。だからこの状況はありがたいものだった。


「チャオス王子、大丈夫なのだろうか・・・・・・」


 カレンは城下町の雰囲気よりも城内のことを気にしているようで、足取り重く優理の後方を歩いていた。

 反対にチキは優理の前方をずんずん進んでおり、


「ちょっとアンタ危ないでしょうが! ちゃんと前向いて・・・・・・って前は向いているのか。気をつけなさいよ」


 協会の方に歩いていた人とぶつかりそうになったようで、文句を垂れていた。


「失礼した」


 チキに声をぶつけられた人物は立ち止まり軽く頭を下げてから再び歩みを進める。そして今度は僕の横を通り過ぎるのだが、その時に腕を僕の肩にぶつけた。


「失礼した」


「あ、いや、大丈夫です・・・・・・・・・・・・あ、あのっ」


 チキにしたのと同様に軽く頭を下げた彼に優理は声をかけた。声をかけた理由は、なんとなく。そう、なんとなく、そのまま真っ直ぐ行くとカレンにもぶつかると思ったからだ。

僕に呼び止められた男は立ち止まり振り返る。


「あの、もう一人いるので、気をつけて、ください」


 僕は彼に向けて言葉を放ったはずなのに、なぜかその声はぎこちなく、男にではなく宙に放ったように軌道がズレた。

 男は僕の顔をじっと見てから「忠告、ありがとう」と言って再び歩を進める。


 僕の顔をじっと見て・・・・・・、違う、彼は僕の顔ではなく胸のあたりをずっと見ていた。しかしそれもちょっと表現としては間違っている。どう違うのか? 彼は見ていなかった。僕に振り向いた彼の瞼は閉じたままだったのだ。

 だから正しい表現としては、「男は僕の心臓に顔を向けた」である。その違和感があって、僕の声は自分の思い通りの軌道を通らなかったのだ。


 僕は盲目の男の背を見つめる。カレンにぶつからないかが心配ってのもあるが、それ以上に彼に感じた違和感に目が離れなかった。

 すると男は急に立ち止まった。僕とチキの時はぶつかってからしか止まらなかったのにどうしたというのか。

 もしかして僕の忠告があったからかな?

そんなことを思っていたのも束の間、カレンと男の距離は次第に近づいていき・・・・・・、


「きゃっ。あ、ごめんなんさい」


 まさかとは思ったが、そのまさかであった。

 二回も人にぶつかった男は、今度は考え事をしていて前をちゃんと見ていなかったカレンに衝突されたのだった。

 やられたらやり返すの精神を僕は持ち合わせてないので、この状況を別の言葉で言表わすのなら、人が嫌がることをすると自分に返ってくるだろうか。


「ちゃんと前見て無くてぶつかってしまったの。ごめんなさい」


 黙ったままの男に対してカレンがもう一度謝罪の言葉を口にした―――その時だった。


「君は二人いるのかい?」


「それはどういう・・・・・・」


 男はカレンに問いかけながら両手をカレンの胸の辺りに伸ばし、そして触れた。子供の頭を撫でるように手で弄りながらカレンの胸を触った。


「―――――――――ッ! 何触ってんのよ!」


 ぶつかってきた事への報復なのか、女性への興味なのか、そもそもそういう人間なのか、どういう意図でとった行動なのかは分からないが、カレンの胸を堪能した男は、カレンに顎を蹴られ、その場で気絶した。

 ああ、痛い・・・・・・。見てるだけで痛みを感じる。だが自業自得。相手にしたのがカレンだったのが運の尽きだ。


「あ、貴方、ちょっとぶつかっただけで女性の胸を触るなんて頭がおかしいですわ! 公然わいせつ罪で監獄行きよ!」


 顔を赤らめながら触られた部分を片腕で覆い隠すカレン。代わりに隠れていたお嬢様属性が顔を出していた。


「今すぐ監獄に連れて行ってあげますわっ!」


そう言ってカレンはもう片方の手で赤のティアを取り出す。


「あーーーー! 待った、待った! 監獄違いで自然の監獄(フォレストロジャー)送りにするのは流石にだめだ」


 僕は慌ててカレンに近づき腕を押さえる。そしてこの場に居たら騒ぎで人を集めてしまいそうだったのでカレンを連れて場を離れた。

 カレンをグオーレ王国に残していくのがちょっとだけ不安になった出来事だった。

 戻ってきた時にグオーレ王国から男性が消えるなんて知らせが無いと良いのだが・・・・・・。


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