09 そんなバナナ
ヤバイ! チキとカレンは咄嗟に武器構えるが目と鼻の先に迫っている狂獣への恐怖から目を瞑り、顔を下に向ける。
「うわああぁぁぁ、ぁ、ぁ、あ、あ・・・・・・、あん?」
チキは首を傾げて自分の身体をぺたぺたと触る。
「いた・・・・・・くない。怪我・・・・・・してない。頭・・・・・・おかしくない。うん、なんともな・・・・・・って、うぎゃああ!!」
「ちょっとカレン起きて! 起きてって!! 起きろぉぉ!!!」
突然悲鳴を上げたチキは横で放心しているカレンの肩を揺らして、揺らして、頬ビンタ。
「ふぇっ? ここはどこ? あ、そか、死んだからここは天国か。おじいちゃん、おばあちゃんどこにいるの?」
「勝手に天国行ってんじゃないわよ! どちらかというとアンタは地獄に落ちて、そこで昇級して他の地獄に落ちた人間を煉獄の炎で焼き尽くすタイプでしょうが! ってなんだよそれ!」
チキも気が動転しているのだろう。カレンにツッコんでから自分でボケて自分にツッコむという一人芝居を繰り広げていた。
「はっ! 私は生きているのか。そうか生きているんだな・・・・・・っておい! チキくっつくな離れろ!! ・・・・・・・・・・・・・・・!? きゃああぁぁ!!」
意識を取り戻したカレンが腰に纏わり付くチキを引っぺがそうとしたのだが、その途中でチキと同じく悲鳴を上げた。
仲良くくっつきながら目の前の物に驚く二人。
しばらくして頭と心が落ちついたチキとカレンは、目の前に顎を地面につけて顔を突き出し気絶しているグオーレンをまじまじと見つめた。
そう、二人が驚いていたのは気絶したグオーレンの鬼の形相をした面だったのだ。
そして何故かグオーレンの頭にはバナナの皮がのっている。
それを確認したカレンが納得したように、
「なるほど、このバナナの皮を踏んづけて転び気絶したんだな」
「漫画じゃ有るまいしそんなことあるかい!」
「いえ、確かにカレン様の言う通り、バナナの皮を踏んづけて転び気絶しました」
「ええ、うそ・・・・・・ダサすぎない・・・・・・」
チキは信じられないといった様子で疑っていたが、イリィの言うことなので本当なのだろうと飲み込む。
つまるところ、チキがバナナを食べようとしたことで喧嘩を始めた二人は、迫ってきたグオーレンにより絶体絶命のピンチを迎えたが、そのバナナを拾ったモノが食べて、放り投げた皮を踏んづけてくれたおかげで命拾いをしたということになる。
バナナで始まりバナナで終わる。なんとも奇妙な物語であった。
モノはグオーレンの頭上で澄まし顔をして立っている。
「チキよりも猿の方が使えるようだな」
「ん~~~~~~!」
その様子をみたカレンがチキにそう言うと、チキは声にならない声と共に歯を食いしばって顔をきゅっと絞った。
すると気絶していたグオーレンが目を覚した。
その瞬間、モノはグオーレンの鼻頭まで降りると軽やかなステップダンスをした後に、猿お得意の煽り『おしりぺんぺん』を御見舞いした。
「モノは何をやっているんだ?」
カレンが不思議そうに尋ねると、チキが引きつった笑みを浮かべて、
「あれは褒められて調子に乗ったモノがグオーレンを挑発してるわね・・・・・・」
「グオオオォォオ!!!」
猿の挑発に怒りを爆発させたグオーレンは倒れたまま拳を振り上げて、チキとカレンめがけてたたき落としてきた。
「ご主人様とそっくりだな貴様のとこの猿は!!」
「ごめんなさいいいぃぃ!」
二人はそれを瞬時に避けた後、追いかけてくるグオーレンから逃げるようにして走りだす!
「チキーー! さっっっきのやつーーもう一回できないのかーーーー!?」
走りながらカレンが尋ねた。
「さっきのってーーー、あの古典的な滑り芸のことーーーー!?」
「そーーだーーー!!」
「嫌よ! あんな技使うくらいなら死んだ方がマシよーーーーー!」
「使っても使わなくても、このままだったら死ぬわよーーーー!」
迫ってくるグオーレンの足音や叫び声がうるさいため、そんなに離れた距離ではないが声を張って話し合う。
「あーーーーー、もうわかったわよ! やればいいんでしょーーーー! だからさっきのはチャラって事にしてよねーーーーー!」
「さっきのってーーーー?!」
「覚えてないならいいわよっ! ほらやるよ私達の新技!!」
二人は視線を交わして頷くと二手に分れるように方向を変えた。




