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aラストティア ~荒野の楽園編~  作者: 蒼骨 渉
第三章 グオーレ王国
34/60

20 第一層攻略 《虹の雫Ⅰ:虹の結晶欠泉》

評価・ブクマまってまーーーーーす!!!!!!!!


どうだ・・・・・・、なんて返ってくる? 長考しているのか? 早く、早く・・・・・・。

 ほんの数秒ですらとてつもなく長く感じる極限状態の中、

「がはっはっはっはっはっは!!」

 急に聞こえてきたのは老人の高らかな笑い声だった。

「優理よ、そんなことを気にしてずっと怯えていたのか。安心しなさい、その答えはイエスだ」

 心臓の音が耳に届き始める。脳に固まっていた血が再び全身を巡るように戻っていく感覚がした。その音が段々と小さくなりつつあるときに今度はカレンが口を開く。


「私もご老人が悪魔に見えてしまっていたよ。良かった、安心した」

 ほっと胸を撫で下ろすカレン。しかし老人はきつい口調で告げた。

「味方ではあるが、このルールに変わりはない。死んだらそこでお終い、安心してもらっては困る」

「そうですねご老人。では一つ質問いいだろうか?」

「構わない」

「ルールその参にある故意に中断ができないというのは、故意でなければ中断は可能ということか?」

「うむ。まさしくそうだ。この修練の塔はちょっと変わっていてな、一度入ったら修練者が塔の望む強さに成長するまでは出られない仕組みになっている」

「つまり、塔が満足するレベルに到達したら出てこられるということだな」

「その通り。後は自分たちの目で確かめてくると良い。ほら行った行った!」

 老人に背中を押されるようにして三人は装置から降り出た。刹那に後ろを振り返って見るも既に老人の姿は消えていた。


「ふえぇぇ、怖かったよおぉ」

 ルールを聞き終えてから一言も発していなかったチキは、息をするのさえ忘れていたようで、思い切り吸った空気をはき出した。

「流石に私も足が氷ついたように動かなかった」

 カレンも安堵の息を漏らした。

「一先ず僕達を殺そうとしてここに放り込んだワケではなさそうだけど、ルールは健在しているようだから気を引き締めないと」

 二人は優理の方を見て大きく頷く。


『これから修練の塔第一層の修練を始める』

 修練開始の女性の声らしき機械音のアナウンスが流れた。

 塔の部屋は外観と同じく円形で構成されているようで、緑黄色のタイルの敷き詰められている。その戦闘エリアに突如姿を現したのは四足歩行で口の辺りに牙の生えた獣、イノシシだった。

『第一層ではティアの使い方に慣れてもらう。赤のティアは炎を特徴としている。黄のティアは太陽を特徴としている。各々の特徴をイメージしながらティアの魔力を発揮しろ』

 同じく機械音のアナウンスが流れた後、何もない空間にアナログ感溢れるレトロな文字が現れた。


【Mission1 ティアの魔力を使え】


 始めは初歩の初歩からってことらしい。優しいチュートリアルってところだ。にしてもカレンやチキにはティアに対しての特徴を教えてくれるのに、僕の虹のティアには何も言ってくれないとは、なんて不平等なんだこの塔は。

「なによ、死ぬなんて大袈裟なこといって。これくらいで死ぬわけないっつーの」

 心配して損したといわんばかりに軽やかなステップを踏みながら、チキは腰に手を回して武器を取り出した。


【ミセリルコリデ】

 チキの武器は全身三十センチほどの十字架に似たダガーナイフで、柄の部分は蒼い刺繍が施されている。刃全体は金色をしていて、内側の反りの部分ははかぎ爪のようにギザギザとしており、外側は鋭く切れ味のが良さそうな形状をしている。突いて、刻んで、切ってと刃の向きによって使い分けられるのもこのタガーの特徴である。

 そのダガーを顔の前あたりに逆手で持ち、腰をかがめて前傾姿勢で構える。身体が小さく素早い動きが得意なチキの戦闘スタイルは盗賊・忍者といった型が似合うだろう。


「はっ!」

 チキは気合いを込めて低い姿勢から一気に脚を蹴り出した。細かい足裁きでタタタタタタタタッとイノシシの元へ駈けて行く。そして目にもとまらぬ早さでイノシシの首にダガーを通すと、切られた本人でさえ切られたことに一瞬気づかず、チキが構えを解くと同時に首が落ちた。

それはまさしく閃光のように一瞬の出来事。

「どう? ウチのこと戦えないか弱い少女だと思ってたら火傷するよ!」

 拳を腰に当て、胸を張りながら得意げな顔をするチキ。そんなチキに触発されてか、カレンも魔刀ヤヌスを両手で構えると、《火炎付加(ファイアエンチャント)》で炎を纏わせてイノシシを切り上げる。

グギィィィィ!

 切り口からは赤黒い血が流れ、イノシシの体は炎に包まれていく。

「まぁ、こんなところか」

 カレンは凜とした立ち姿で、刀に付着した血を振り払う。


 互いに一匹ずつイノシシを倒した二人から「次は優理の番だよ」といった視線がに向けられてくる。

 こんな凄いものを見せられて、黙ってられるわけがない。僕も二人みたいに華麗にビシッと技でもなんでも当ててやりたい!

 今の自分にできることといえば、想像をつかった変身と魔力を具現化した《付加(エンチャント)》、それとイレイザとの戦闘で咄嗟に使った《七色に輝く鏡の盾ミラーフォースシールド》だ。

イノシシ相手に使えるのは・・・・・・・・・・・・無い? 無いな。今の僕に使える有効な攻撃が一つも無いじゃないか!


 そもそもなんで僕には武器もなければティアの精霊も存在してないんだ? ここのアナウンスでさえも特徴を教えてくれなかった。まさか無特性? 七つのティアの頂点に立つとか神は言ってたくせに、現状一番弱そうで役に立たない人になっている。

「どーしたんだ優理、はやく優理もこんな弱い奴倒してこっちこいよー」

 一人であーだこうだ考えていると、待ちくたびれたチキが手を振ってきた。

「考えたって仕方がないか、なるようになれ!」

 優理は気合いを込めて拳を構えながらイノシシに突進して行く。イノシシも向かってくる敵を感知すると、鼻を鳴らしながら立ち向かってきた。

 このままやつのこめかみあたりに《付加(エンチャント)》させた拳を打ち込んで気絶させれば・・・・・・って、まって、これ本当に上手くいくのか? そこらへんのRPGであれば初期中の初期であるイノシシという敵だが、現実世界の人間がイノシシ相手に正面から向かって勝てるのだろうか・・・・・・否。勝てない。普通の人間はイノシシと対峙して退治する術を持っていない。


 そう思った優理は構えていた拳を収めて、突進してくるイノシシを横に飛んで躱す。直進したイノシシは方向転換をして再び優理に向かってくる。それをまた間一髪転がりながら避ける。そんなことを何度も繰り返す優理。

「優理大丈夫なのか? 同じティアの所持者(マスター)なんだよな?」

 目をパチパチさせながらその様子を眺めていたチキがカレンに聞く。

「あ、ああもちろんだ。優理しっかりしろ! 想像を力に変えるんだ!」

 一瞬その問いの返答に迷いが生じたが、優理の想いの強さを目にしているカレンは優理を信じて声援を送る。チキは現状しか知らないので小首を傾げた。


 想像を力に変える。頭では理解していても実際に体現するのは本当に難しい。

 とある小説家も想像した頭の中にある世界を、正確に伝わるように文字にしたり言葉にしたりするのは難しいと言っていた。

 しかも今の状況だと、考えることが一つじゃない。敵の行動やしぐさを観察しながら体も動かさなければいけない。

 頭の中にあるモノを現実世界に創り出す。想像の世界を現実世界に移す・・・・・・うつす!?

 そうか、そうだったのか! 僕は一つの固定概念にとらわれすぎていたんだ。


 僕は頭の中にあるモノを想像して創造することばかり考えていた。でもこのプロセスは作家が文字や言葉に変換するのと同じように、時間もかかるし難しい。ならばその過程を全部すっ飛ばしてそのまま映し出せばいいんだ。そして光・虹・色。これらを映し出すものといえばレンズだ!

 光はレンズを通し、その屈折する角度や速度によって様々な色を生み出す。虹は空気中の水滴が光を屈折させるレンズの役割をすることで生じるもの。

 僕のティアは虹色。つまり虹の雫。雫は水滴。

 創造したものを直接映し出すような雫のレンズを自らの眼に宿せば良い!!


 完璧なロジックを頭の中で構築し終えた優理は、その場で眼を閉じて立ち尽くす。

 イノシシはそんな優理にお構いなく猪突猛進する。

「優理危ない!!」

 カレンが危険の迫る優理に勢いよく叫んだ。

突進してきたイノシシが牙を突き上げるように構え、優理の目の前まできた次の瞬間!

 何もなかった床から虹色の結晶が回転しながら突き出てきてイノシシの腹部を貫通した。

 イノシシはその結晶に串刺しされる形で宙に浮く。足をばたつかせるも余計に傷を深く抉るだけで意味も無く、そのまま息絶えた。

 カレンとチキは目の前の光景に目を奪われ、空いた口が塞がらない状態でいる。


虹の雫(スペクトルコマンド)(モノ)虹の結晶欠泉(クリスタルゲイザー)

 穏やかな声でそう口にした優理の左目には、虹色の雫型をしたレンズが装着されていた。


主な登場人物

・優理

・カレン

・チキ

・修練の塔の老人

・イノシシ

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