16 黄のティアの所持者
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結局芋虫作戦も意味をなさず、優理の昔話のせいで牢屋から抜け出す手段を考えることもないまま時間が過ぎてしまった。
再び二人が悩んでいたところ、階段の方で呻き声が聞こえてきた。
「な、なんだ?」
そこからコツッコツッとハイヒールが地面を叩くような音と共に、灯火に映された人影が段々と大きくなっていく。
優理とチキが息をのんで近づいてくる音の方を見ると、赤を基調とした華やかなドレス姿の女性が・・・・・・。
「カレン!?」
「優理? 優理! 無事だったか」
その女性はなんと懇親会で別れたはずのカレンだった。
「カレンどうしてここに?」
「どうしてここに? と聞きたいのは私の方だ、心配したんだぞ!」
頬を膨らませてむっと怒るカレン。
「ごめん。でもどうやってここまで来たんだ? チャオス王子との懇親会はまだ終わっていないはずだろ? 」
「ん? それはだな・・・・・・終わらせてきた」
「え? どうやって」
「そ、それは・・・・・・気にすることではない。とりあえず今はここから出るぞ、ってこの子はたしか・・・・・・」
首を傾げる僕に、カレンが誤魔化すように逸らした目線の先には、黄色い髪の少女の姿があった。
優理はその視線に気付き説明をする。
「この子はチキだ。チャオス王子の懇親会に参加していた子だよ。訳あって一緒に捕まった・・・・・・」
最後の部分で優理がつまずくとカレンは察したのか冷たい目線をチキに送る。
「ほう、このガキのせいで優理は捕まったんだな」
「ふんっ、それはこっちのセリフよ」とつっけんどんに言い返すチキ。
なにやら危険な香りがする・・・・・・。そう思った優理は即座に話題を切り替える。
「そんなことより! 今はここから脱出しないと。脱出できたら誰のせいで捕まったとかそういうのは気にしなくて良いだろ?」
「まぁ、優理がそういうならいいだろう。これがここの牢の鍵だ」
二人は完全に納得した訳では無さそうだったが、無事嵐は上陸せずに通り過ぎたようだった。
カレンが牢を開けて中に入り優理とチキの縄を解く。どうやらカレンはチャオス王子を上手く使って、牢屋に僕が居ることを確認した後、見張りとチャオス王子を気絶させて鍵を奪ってきたらしい。
「んー! やっと解放されたー」
手足の硬直から逃れた開放感で腕を広げて背筋を伸ばす。その手が壁に触れた時、
カチッ
スイッチか何かを押したような音がした。刹那、地面がぐらぐらと振動し始めたではないか!
「優理あんた何したの!?」
「わ、わからない! 壁に手が当たったと・・・・・・」
チキの問いに優理が答えようとしたが間に合わず、床が扉のように二つに割れた。
「う、うそ・・・・・・」
「まじ?」
「きゃ、きゃああああああぁぁぁぁ」
三人は暗い闇に中に落ちていった。
「うわああああああぁぁぁぁ」
ドシーーーーン
「イタタタタ」
チキは尻餅をついて落ちたようで、薄いお尻をさすっている。
「なんとか生きているようね」
カレンも無事みたいだ。
「あ、あの、重いです・・・・・・」
カレンのお尻に敷かれた優理が苦痛の声をあげる。
「ん? きゃあっ! ご、ごめんなさい。だいじょうぶ?」
周囲は暗くて何も見えないのでカレンは優理の存在に気づかなかったようだ。カレンは慌てて優理の背中から降りる。
「うん、なんとか・・・・・・」
宙を舞った感覚がまだ全身に残っており、心臓の音がうるさい。
優理達が落ちたところは偶然にも木々やわらの塊が敷いてあり、それがクッションの役割をしてくれたようで一人も怪我をせずに済んだ。
「何も見えないわね」
チキは周囲を見渡しながら服についた木くずやわらを振り落とす。
「待てって、今、火を出すわ・・・・・・。優理あれ、なんかこっちに来てるみたい」
カレンが小さな火を指先から出した後優理の肩を叩く。
見ると突き当たりの壁にぼんやりと光が現れ、段々と広がっていく。足を引きずるような音も一緒に近づいてくる。
「そろそろ来る頃だと思っておったぞ」
非力で緩い弦楽器のような声が聞こえてきた。
なんか聞き覚えのある声だなと思って目をこらした後、優理はその人物を見て驚く。しかし驚いたのは優理だけではなかった。
「あれ? ロムじいじゃん!」
優理が声を上げる前に反応したのは意外にもチキであった。
「チキも知っているのか?」
「知ってるも何もロムじいにリングのことを・・・・・・あっ」
「リング?」
「い、いや、なんでもない」
咄嗟に口元を手で覆い隠し誤魔化そうとするチキ。
「おや? チキ、まだ話してなかったのか?」
「後で話すわよ」
チキは優理とは違い、一度きりの知り合いという関係ではなさそうにみえた。
「それよりご老人、私たちが来ると思っていたとはどういうことなんだ?」
若干置いてけぼりにされていたカレンが訝しげに尋ねる。
「どうせまた変な占いでしょ」
「占い?」
ロムじいに代わってチキが呆れたように言い放った。
「ほっほっほ、ご名答。お嬢ちゃん初めまして。わしは知る人ぞ知る凄腕の占い師だよ」
「どこが凄腕なのかしら」
骨の形までみえる貧弱な腕に力拳を作るようにして凄腕アピールをするも、チキが茶々を入れるので台無しになる。だがロムじいは気にすることもなく手招きをした。
「まぁまぁ立ち話もなんだから、ついておいで」
三人はロムじいの後に続いて奥に進んでいった。
優理達が落ちたところはグオーレ王国の地下深く、といっても地上から一〇メートルくらいのところなのだが、そこにある洞窟であった。辺りは灯火がないと真っ暗で、堅い岩の壁はひんやりと冷たく若干湿っている。乾燥しきっている地上の岩石とは全く違っていた。一体何のためにこの洞窟があるのかは不明だが、今はロムじいが住処として使用しているらしい。本当にこのじいさんは何者なのだろうか。
狭い道を抜けて天井がドーム状に丸みを帯びている広い空間にでると、生活感が感じられる脆そうな木製の机と椅子にベッド、あとは竈などがあった。
カレンは湯を沸かすための手伝いをして欲しいと言われロムじいと共に竈に居た。きっとカレンの火を借りるのだろう。優理とチキは椅子に座って二人を待つ。その間、優理はカレンにロムじいとの関係を説明した。
「なるほど、だから優理は黄色い髪の少女であるチキを気にしていたのか」
「まぁそういうことになります」
「結果、捕まって牢屋行き、挙句こんな訳の分からないところに落ちたと」
「返す言葉がないです」
切れ長のカレンの眼が優理に鋭く向けられる。
優理は用意されたカップを両手で持ち、肩を丸め込むように反省の姿勢を示す。
「まぁまぁそんなに責めないであげてくれ。どのみち運命は君たちを引き合わせたことだろうからね」
ロムじいはカップに息を吹きかけて冷ましズズズっと啜ってから、チキの方を向き真剣な表情をする。
「さあ本題に入ろうかと言いたいところだが、わしが言えることは一つだけじゃ。チキ、おじいさんのところに二人を案内してあげなさい」
「えっ!? それは・・・・・・」
困ったように視線を落とすチキ。そんなチキにロムじいは優しく添える。
「大丈夫、この二人ならチキの力になってくれる。チキも本当は気付いてるんじゃろ?」
「わかったわよ、その前に二人に言っておくことがあるわ」
若干の迷いの後、チキは吹っ切れたのか立ち上がり優理とカレンの方を向く。
「ウチは黄色のティアに選ばれし者、黄のティアの所持者よ」
後ろのポッケから出した小さな手に握られていたのは、黄色い輝きを放つ雫型の宝石、黄のティアであった。
「この子が黄のティアの所持者・・・・・・」
カレンと優理はまさかこの少女がティアの所持者だとは思っていなかったので、豆を食らったように驚いた。そしてそのまま表情を変えずに優理は疑問をぶつける。
「待ってくれ、それならなんで盗賊なんてやってるんだ?」
「それも含めて話すからちょっとは待ちなさいよ、せっかちね」
「悪かったなせっかちで」
両方の手のひらを上にして呆れたポーズを取るチキに対し、優理は拗ねるように呟いた。そんな優理を気にもとめずチキは思いもよらぬ言葉を口にする。
「ほら、じゃあいくよ自然の監獄へ」
「え! ちょっとまって。今、自然の監獄って言った?」
「ええ言ったわ」
「自然の楽園じゃなくて?」
「自然の楽園じゃなくて自然の監獄って言ったよ」
何かの聞き間違いかと思って繰り返し確認したカレンだったが、どうやら聞き間違いではないようだ。カレンと優理はお互いに顔を見合わせる。
「自然の監獄に僕達も行けるの?」
「行けるから言ったんでしょうが!」
虎が牙を剝くかのようにガッと口を開いて怒るチキ。それでも二人が疑いの目をむけると牙を収めて、「とりあえずついて来なさいよ・・・・・・」とティアをかざした。
「Lead Another Ceres」
チキの身体を点描な光が包む。優理とカレンも慌ててチキに続き、ティアを手にして同じくゲートを開く。
「頑張っておいで若きティアの所持者達よ」
三人の姿が消えてからロムじいは見守るように呟いた。
主な登場人物
・優理(主人公) 虹色のティアマスター
・カレン 赤色のティアマスター
・イリィ 赤のティアの精霊守護
・ニュートン ハリネズミ
・自然の楽園にいる美少女
・チキ 黄色のティアマスター
・ラムじい




