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aラストティア ~荒野の楽園編~  作者: 蒼骨 渉
第三章 グオーレ王国
29/60

15 院長との想い出(バタフリー)

日間ランキングに是非とも載りたい!

それだけに全話公開スペシャルをやっております。

もう慈悲でも構わない!笑

評価とブクマお願いします!

地下牢に閉じ込められている優理とチキは牢を脱出しようと目論んでいた。

「まずはこの縄を解かないことには始まらないな」

 優理は全身を使ったり、僅かに動く指を使ったりしながら手首と足首に巻かれた縄を解こうとする。

「なんか芋虫みたいね優理」

 その様子を見ながらチキは愉快に笑う。

「芋虫を馬鹿にするなよ! 芋虫はたくさん葉を食べた後にさなぎになって、最終的には綺麗な羽根をした蝶に変身するんだからな」

 熱弁しながら芋虫のようにくねくねし、さなぎのように静止したかと思うと、蝶のように飛んで跳ねて見せた優理に冷ややかな視線を送るチキ。

「わざわざジェスチャーしなくてもいいって。馬鹿にしたわけじゃないけど、あんた芋虫に思い入れでもあんの?」

 その言葉を聞いて優理は飛び跳ねるのを辞めた。

「そうだな。昔育てたことがある」

「へー、芋虫を育てるなんて考えたこともないなウチは」

「僕もそうだよ。なんていうかたまたま育ててたって感じでさ。大切に育てた花の葉がやたら穴だらけになっていた時があって、原因を探ってみるとその葉を食べたのが緑色をしたおっきな芋虫だったのさ」

 その時を懐かしむように優理が語り出した。



「おい! 僕のベラをいじめるな!」

 優理は葉の裏に着いていた大きな芋虫を人差し指の上にのせて睨み付けている。芋虫は優理の指の上をくねくねと動くだけで反応を示さない。しばらく優理が待っていると、お腹をすかせたのか芋虫は優理の指をカプッと噛んできた。

「イッタイ! おい、ちゃんと話聞いてのか! そんなに食べたいなら他の葉っぱを持ってきてやる!」

 そういうと芋虫デコピンで弾いて地面に落とした後、両手にいっぱいの草や葉を持って戻ってきて、芋虫を乗せた。

「これで満足か? もー僕のベラを食べちゃダメだぞ!」

 優理は指を指しながら注意するが、芋虫はむしゃむしゃと葉を食べ続けていた。


 翌日。いつものように優理がベラの水やりに行くと、芋虫がベラの鉢を登っているのが目に入ってきた。優理は慌てて芋虫を鉢から落とす。なんと昨日あんなにあった葉が全部穴だらけになっていて筋だけの姿になっていた。

「お、おまえぇ・・・・・・、院長に言いつけてやるからな、こっちこい!」

 芋虫の腹を人差し指と親指でつまんで持ち、院長のところに走って行く。

「院長きいて! あのね、こいつが僕のベラをいじめるんだ!」

 院長は突然やってきた優理がいじめるというワードを口にするので驚くが、こいつの正体を知ると「はっはっは」と口を大きく開けて高らかに笑った。

「そうかそうか、この子が優理のベラをいじめているというんだな」

 無言で頷く優理に村長は思いがけないことを言った。

「でもな優理、この子はいずれベラの助けになってくれる子なんだよ? 今はまだ成長途中だけど将来はそうだなぁ・・・・・・、ベラに子供を運ぶコウノトリになってくれるかな」

 優理は目をまん丸ににして院長の話を聞く。

「え、そうなの!? こいつはいじめっ子じゃなくてコウノトリになるの?」

 コウノトリについては前に院長に聞いたことがあったので優理は知っていた。

「そうだよ。だから優理、この子を育ててみたらどうだろう?」

 とりわけ院長に対しては聞き分けの良い子だったので、あっさりと承諾し芋虫を育てることになった優理。虫かごの中に食欲旺盛な芋虫のための葉をたくさん詰めて、ベラの鉢の隣に置いて毎日観察を続けた。


 あるときに「虫かごの中に芋虫が居なくなった!」と優理が院長に泣きついた。しかし院長は分かっていた。だから優しく教えてあげる。

「大丈夫だよ、ほらここに居る。成長してさなぎになったんだ」

 院長は木の枝に擬態し、細い糸でその枝に繋がれている物体を指さした。優理は感心して「お~」と吐息の混じった声をあげる。

「さなぎの次はコウノトリに成長するの?」

「はっはっは、コウノトリにはならないよ。あと二週間くらい待てばわかるさ。その間にこの子がどんな生き物でどうしてベラにとってのコウノトリになるのか調べてごらん」

 院長はいつも答えをすぐには教えずに自分で調べさせる。

 調べた結果この子は成長するとアゲハチョウという蝶になることが分かった。またコウノトリになる理由はガーベラが虫媒花であるからだった。

 虫媒花とは読んで字の如く昆虫を媒介する花であり、受粉して子孫を残すために昆虫に花粉を運んでもらう花を指す。そのために虫媒花は鮮やかな色をしており、昆虫の好きな甘い香りをもつ特徴がある。

 こうして自分で本を読み調べて見ることで、より興味や関心が沸き知的探究心を育てる。これこそが院長の教育であり、優理にはこれが効果覿面だったのだ。

 ただ一つ困ったことがある。それはあまりにも効果がありすぎて優理が他のことに目が行かなくなってしまうことだった。


「ほら、優理もう寝る時間だよ」

「まって、もしかしたらいま羽化するかも知れない」

 虫かごの中をずっと見つめたまま背中で返事をする優理。

「まだ八日目だからもう少しかかるよ。ほら寝なさい」

「やだ」

「わかった、じゃあ院長が見ててあげるから。ほら、寝るよ」

「うーん・・・・・・じゃあ寝る。ちゃんと見ててよ? 羽化したら起こしてよ?」

「はいはい、ちゃんと見ておくから。おやすみ優理」

 院長に肩を押されて寝室に連れて行かれるなか、優理は顔だけを振り向かせて何度も院長に確認をする。自分の目で見たくて仕方なくなってしまうのは分かるが、ちゃんと生活リズムは保って欲しいと思う院長であった。


 そして数日後。ついにその時を迎えた。

「いんちょーいんちょーいんちょー!」

 ひっきりなしに院長の名前を呼びながら、ドタバタ足の優理が虫かごを持ってきた。

「おっ、ついに羽化するか」

 二人で虫かごの中を息をのむようにして見つめる。

 ゆっくりと先端の方から触覚の生えた頭部が現れ、もぞもぞと全身を動かしながら徐々に殻を破っていく。ようやく全身がでたら次は折りたたまれている羽根をゆっくりと左右に揺らしながら開いていく。

「おっ、ほわっ、もうちょっと。あーおしい! きた? きた? おおぉ!」

 鼻の穴を膨らませて興奮する優理。その声援に応えるように、アゲハチョウは黄色を基調とした黒と赤の斑点が美しい羽根を開き敏捷に動かして羽ばたいた。

 興奮のあまり虫かごを持ったままくるくる回ったり、蝶の真似をして飛んで見せたりと落ち着きのない優理。その姿を院長はほほえましい顔で見ていた。

「院長! むっちゃ綺麗だよ! すげーなおまえ、あんなに気持ち悪かったのにこんなに綺麗になっちゃうなんて 僕知ってるぞ、そういうの謙遜っていうんだ。謙遜上手のアゲハチョウだな!」

 正しいかはともかくとして、知った言葉をすぐに使いたがるのも優理という少年だった。

「なんて名前をつけてあげるんだい?」

「名前かー。たしか蝶はバタフライって言うんだ。だからアゲハとバタフライを合わせて・・・・・・アゲフライ?」

 そう口にした瞬間それまでかごの中を飛んでいた蝶が急停止した。その様子も含めて院長は高らかに笑う。

「優理それは蝶も気の毒だよ。もっと可愛い名前つけてあげよう」

「そう? 美味しそうだけど。じゃあバタフリーで!」

「それはまたどうして? 」

「それはね・・・・・・」

 

「バタフライとコウノトリを合わせてバタフリーか。もっと良い名前無かったの?」

「結構可愛い名前だろ! まぁありふれた名前かもしれないけど」

 久しぶりに思い出した遠い日の記憶に、懐かしさと寂しさを感じていた。するとその心を見透かしたかのようにチキが優しく語りかける。

「院長のこと大好きだったんだね、優理は」

 急に優しい目を向けられて戸惑う優理だったが、空気を含ませるように「うん」と答えた。

 じんわりとした雰囲気が冷たい牢の中で僕らを包んだ。ただいつまでも浸っては居られないので優理は明るく苦言を添える。

「まぁつまり何が言いたかったのかというと、芋虫を馬鹿にするなよってことだ。見かけによらない凄いやつなんだからな」

「へいへい分かりましたよー。芋虫様万歳」

「なんだその言い方は!」

「なーにさ、院長との思い出話で泣きそうになってたくせにー、やだやだ、弱虫が移るわ」

 ついさっきみせた表情ではなく、元のチキらしくいたずらに肩を手で払うようにしてみせた


主な登場人物

・優理(主人公) 虹色のティアマスター

・カレン 赤色のティアマスター

・イリィ 赤のティアの精霊守護

・ニュートン ハリネズミ

・自然の楽園にいる美少女

・チキ 黄色い髪の盗賊

・院長

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