14 色仕掛け
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一方、王の間で懇親会中のカレンは気が気でなかった。
警報が鳴った後、多くの兵が宝物庫へ向かう足音がした。そんな中、より警戒が強くなっているであろう城内で、ソラを助けに行った優理が帰ってこない。そもそもこの警報自体、優理が鳴らしてしまったのかもしれない。となると救出は失敗、一人残された私はチャオスの相手をし続けなければならない。
どうしよう、どうしたらいい!? もしこのままパーティーが夜まで続いて、
「今日はぼ、僕と一緒にお風呂に入ろうカレンちゅわん♡」とか!
「僕疲れちゃったな・・・・・・、ねぇカレンちゃん、カレンちゃんに包まれて今日は眠りにつきたいなぁぁブヒッ」とか言われたら・・・・・・。うぅ考えただけで冷や汗が・・・・・・。
初めてのキスは好きな人とって決めてるの! そんなことされたらもうお嫁に行けないですわ!!
途中から優理の心配より自分の身の心配に変わっていたが、なんとかしなければいけないことに変わりは無かった。
ひとしきり妄想した後、一息置いてから真剣な表情に戻る。
まずは現状把握からだ。優理はソラを助けに行ったが何かしらのアクシデントにより動けない状態にいる、もしくは既に捕まっている。後者であればきっとこの城の牢にでも閉じ込められているだろう。それを確認しなければならない。加えてソラを救出できていないことも容易に考えられる。ソラの居場所くらいは確認しておかなければ次が無い。
懇親会はいつまで続くか分からないから終わるのを待つのは得策では無い。そうなると強制的に終わらせる必要もあるな。グオーレン王は自らの城に侵入者が居るというのに酔いつぶれて寝ている。大臣が様態を見守っているからこの二人は気にしなくて良いだろう。
「となれば、鍵となるのはチャオス王子だな」
チャオス王子を上手く使って第一に懇親会を終わらせる。第二にソラの居場所を突き止め、第三に優理の安否確認後救出or合流。最後にソラを救出だ。
「そうと決まれば、本当は嫌だがあれで行くしかないな」
カレンは立ち上がると、他の女性達と愉しんでいるチャオス王子の目の前に行き、
「チャオスさまぁ~、私のことを放ったままにして他の女性とばかりお楽しみで、私寂しいですわ。お父様ももうお休みのようですし、パーティーはお開きにして二人っきりでお話しませんか~?」
チャイナドレスに合わせたお団子ヘアを崩し、腕を前に出して胸を強調するように前傾姿勢でセクシーポーズをとってチャオス王子を誘惑する。
「カ、カレン殿!? ズギュン♡♡」
さっきまでの雰囲気とは打って変わって積極的でいやらしいカレンに、チャオス王子はハートを槍で突き刺されたような気持ちになる。
「ちょっとあんた卑怯よ、さっきまで何もしてなかったくせに!」
「チャオス王子は私のおっぱいのほうが良いですわよね? ウフッ」
「いーや、私のお尻の方がチャオス王子の好みだ!!」
他の女性達も負けるものかと必死にアピールする。
「じゃ、じゃあみんなで・・・・・・」
「「それはダメ!!」」
「そ、そうですよね・・・・・・」
全員に突っ込まれて首をすくませるチャオス王子。こんな経験今まで無かったためか調子に乗ってしまったのだろう。
くっこのままでは埒があかない、仕方ない奥の手だ。
カレンは気合いを込めてとどめを刺しにいく。
「わたくしチャオス様のことを考えるともう身体が熱くてたまりませんの。王子お願い、私を選んでくださる??」
頬を赤くそめて恍惚な表情をし、身体をくねくねとうねらせて懇願する。
「は、はい! 選びます!! チャオスはカレン殿を選びます!!! ブヒブヒ」
よもやこれほどの美女に誘われて断れる人間が居るのだろうか、いやきっと居ないだろう。チャオス王子はまんまとカレンに魅せられてしまった。
他の女性は口々に文句を言ってはチャオス王子に考え直すように迫るが、もう腹が決まったチャオス王子はキッパリと断る。一時は全員とハーレムを築けたらいいなと思っていた割には、貞操観念はしっかりしているのかもしれない。
王の間から人の気がなくなる。一つめのパーティーを終わらせることは無事成功だ。
二人きりになれたところでカレンは次の手段に移す。
「ねぇチャオス王子、実はチャオス王子にお願いがあるの、聞いてくれます?」
「も、もちろんだよ! さ、なんでも言ってくれ! カレンちゃんのためなら例え火の中水の中ってやつだよ!」
完全に虜になったチャオス王子はよもや操り人形、いやブタの丸焼き同然だった。
「パーティーの前に拝見しました、ティアの所持者の方はいったいどちらにいるのでしょうか? 体調がよろしくないとお伺いしましたので私心配で・・・・・・」
「カレンちゃんは綺麗なだけじゃなくて優しいんだね! 僕に着いてきて、案内するよ」
そう言うと先導を切って歩き出すチャオス、その後ろをカレンがついていく。二人が向かったのは、さっき優理が、ソラが居ると思って降りた地下の牢屋と宝物庫に続く階段とは反対の、上の階段を上ったところにある一室だった。
両手開きのドアを開けて中にはいると、水色の髪の少年ソラとそのすぐ横で横たわる細身で、ソラよりも薄い水色の髪を高めの位置で結んでツインテールにしている女性が手首に手錠と鎖を巻かれて、檻の中に閉じ込められているのが見えた。
檻の中の二人は誰かが入ってきたのを感じると身体を縮こませ、手で顔を隠すように覆い、ガタガタと震えた声で「ごめんなさい、ごめんなさい」と口にし続ける。
一体これまでにどんな酷い仕打ちを受けてきたのだろう。本当は今すぐにでも近寄って、助けにきたぞと言って安心させてあげたいのだが、チャオスが居る手前そんなことはできなかった。
檻の中は地下牢のようなじめじめした感じではなく、至って普通の部屋だった。もともとは普通の洋室部屋だったところに檻を後から設置したのだろう。入り口部には分厚く丈夫な南京錠が三つ架けられていた。かなり厳重であるがそれも無理はない。国にとって自然の恵みを分け与えてくれるティアの所持者は、生命線であり国力を表すことができる、何が何でも逃がしてはいけない存在であるからだ。
「ねぇチャオス王子、あの南京錠の鍵ってどなたが持っているのかしら?」
「えっと、たしか大臣が持っているはずだよ。大臣がこの子の世話係兼見張り役を担っているからね」
確かにさっきソラを連れてくるように命じられていたのは大臣であった。やはり大臣クラスが見張り役に就くほど国として重要な財産だという表れだろう。
しかし一つ奇妙なことがある。それほど重要な人物であるのに、見張り役の兵がこの部屋のみならず、扉の外にも配置されていない。つまりココは大臣のみ管理しているということになるのだ。
「そうなのですね。監視には何を用いているのでしょう? 見たところ見張りの兵も居ないようですし、不用心なのでは?」
「心配は要らないみたいだよ。確か大臣はこの部屋をいつでも見れる魔法の水晶を持っているはずだから」
「魔法の水晶?」
「僕も詳しくは知らないんだよね。そもそも今の大臣が国に来て着任したのはせいぜい一ヶ月前のことだからね」
国の情勢をこうもあっさりと部外者に話すとは、よほどカレンが気に入って信用しているのか、ただのバカかのどちらかである。が、カレンにとっては好都合だった。
しかしこれも不思議だ。いくら大臣とはいえ、たった一ヶ月しか居ないような人に任せるなんて、本来ならもっと信用できる者に頼むはずだろう。グオーレンがグオーレンならチャオスもチャオス、蛙の子は蛙ってことか?
ある程度欲しい情報も揃ったのでカレンは次の行動に出た。
「チャオス王子~。私もう眠くなってしまったのですが、先ほど警報が鳴っていらしたでしょ? きっとその悪人は捕まったと思うのですが、どんな人相の方か分からないままでは怖くて眠れませんの。一緒にその悪人のところに連れてってくださる?」
「うんわかったよカレンちゃん! 僕が着いているから安心して」
悪人の顔など見てしまう方が怖くて眠れないはずなのだが、今のチャオスに内容などどうでも良いのだった。とにかく可愛いカレンちゃんのおねだりなら何でも聞くといった感じである。チャオスならぬチョロスだ。
二人は地下牢へと向かった。
主な登場人物
・優理(主人公) 虹色のティアマスター
・カレン 赤色のティアマスター
・イリィ 赤のティアの精霊守護
・ニュートン ハリネズミ
・自然の楽園にいる美少女
・チキ 黄色い髪の盗賊
・チャオス王子
・グオーレン王
・ソラ 水色のティアマスター




