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第150話 Change the Future

正月にのんびりしてしまい、更新遅れました! 

いよいよ、アキラがやり直しを図ります。



 

 黒百合の女神の力で、僕は、クラウスと戦ったあの日に戻ってきた。

 

 クラウスとの戦いは、覚えている通りに進み、そして僕が描いた『僕』が、クラウスの背中を刺した。

 もちろん手加減している。


「ぐ……がぁぁ……!!」


 背中を刺されたクラウスが崩れ落ちる。剣を奪い取る。倒れた彼を横目に、ベッドの下から竜のハープを取り出した。

 すぐにアキラの姿に戻る。


「僕の勝ちだクラウス。リリーとは別れてもらう」

「……ぐ……ぅぅ……、貴様……っ」

 抵抗できないように、首元に剣を突きつける。


「クラウス。僕は六年後の世界を見てきた」

「……な……んだと……」

「死なないうちに説明してあげる。リリーとの間に子供が三人生まれるが、全員殺された。君もだ。姉クラーラの手によって」

「……馬鹿なことを」

「クラーラと会った。君を恨んでいたよ。だが、消えた姉を求めていた君の話をもっと聞いてやるべきだった」

 もっと真剣にクラーラを探していれば、助けられた。そうすれば、リリーの死に顔を見ずに済んだ。

 傷口を押さえたまま、クラウスは、じっと耳を傾けている。

「リリーは君と結婚しても、幸せになれなかった。クラーラをちゃんと探さなかった僕の責任だ」

「……本当に……、姉様は……生きているのか」

「間違いない。協力するなら、命を保証しよう。そのかわり、リリーは僕と来てもらう。ここで死ぬか、姉とこの城で生きるか、今すぐ選べ」

 剣を取り上げ、全身、血にまみれていてもクラウスの目はまだ死んでいない。

 油断はしない。

「反撃するつもりなら、殺す。もう勝負はついたはずだ」

「……」

「……」

「……わかった。私の負けだ」


 今度こそ、クラウスは諦めたように目を閉じた。

 手当をしてやらなければ。メキラとハイラを呼び、傷を治させる。着替えさせ、ベッドに寝かせた。


 廊下を歩きながら、メキラとハイラに自分が六年後の世界を見てきたと説明した。

 クラウスとリリーの子どもたちが殺され、目の前でリリーが死んだこと。

 黒百合の女神の力で、過去に戻ってきたこと。

「六年後の世界から、戻ってきたと?」

「そうだよ。病院で、友達が、薬師如来様のお守りを買ってきてくれたんだ。薬師如来様っていうのは、……死んだあとじゃなくて、今現在の苦しみを、すべての人々を助けたいと思っている仏様なんだって知った。君たちが、リリーを連れて逃げたらどうかと言ってくれた時、その意味に気づくべきだった」

 もらった薬師如来のお守りを取り出す。

「僕はクラウスを殺そうとした。結局、殺せなかったけど。クラーラを助けなかった、ちゃんと探そうとしなかった。自分だけの幸せを願った。自分の欲のために、他者を踏み台にした。それがいけなかった」

 

「……アキラ」

「リリーと生きたい気持ちに、偽りはない。でも、クラウスもクラーラも助けたい」

「……」

「メキラ、ハイラ。君たちが仲間になってくれたから、薬師如来様の教えに気づけた。他人の命も同じく大事だ。好きな人さえ救えなかった僕が言っても、説得力がないかもしれないけど」


 力だけでは駄目だった。

 僕は女神たちの力を得たつもりでいたが、恨みを買ってしまった。会ったこともないクラーラ姫に。

 

「他人を蔑ろにした結果、リリーの家族は殺された。僕が間違っていたんだ」

 メキラが僕の頭を撫でてくれた。

「俺たちは、お前が生きていて嬉しいよ。クラウスを殺そうとしていた時、もっと止めるべきだった」

「メキラ。信じてくれるの」

「もちろんだ。薬師様の教えが届いて嬉しい。間違いは今から正せばいい。クラーラも、未来のリリーも助けよう」

「そのために俺たちは出会ったんだろう。本来なら、人は過去に戻ることはできないが……戻ってきたものは仕方ない。助けられる命は助けよう。リリーを迎えに行こう」

 とハイラ。


 よし。少しずつだけど、過去が変わった。

 あとは自分の手で、運命を変える。

 

 リリーの部屋の扉を叩いた。

 寝ているかと思ったが、リリーはすぐに開けてくれた。

「迎えに来ました。すべてが終わってから……。僕とラウネルの村に帰りましょう」

 もう、向こうの世界には帰らない。

「そうか、うん、そうね……」

「……」

「あなたが来たってことは、あの子は……負けたのね」

 リリーは数回、首を捻ったりしながら、自分を納得させているようだった。

 

 窓のそばに、彼女が縫い上げた純白のドレスがあった。

 お姫様になりたかった、彼女の夢の終着点にはなれないけれど。

 僕は、彼女が絶望しながら死んでいく未来は、どうしても受け入れられない。

 あなたの夢が叶っても幸せにはなれない。冷たくなっていくリリーの手を思い出した。


 それなら。

 僕は跪いて、彼女に手を差し出した。

「リリー・ロック。僕と生きてください」

 

 ほんの少しの間を置いて、彼女は僕の手を取った。


「それがあなたの望みなら」


 闇の中で僕は、確かに未来が変わったことを知った。









もう少しで完結します。

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