表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/155

第124話 地獄に仏

約束のブツを持ってきたジャスパーに、リリーは……? 




「兵力はあるのか」

「ええ」

 そのために竜のハープを手に入れる必要があるのよ、とリリーは答え、あと何日か待てば良いと笑った。


 数日後。この世界では子供でも酒場に入れるので、リリーと一緒にチーズやソーセージをつまんで待っていた。しばらくすると、ジャスパーが、両手に袋を抱えやって来た。

「約束のブツだ」

「あら、本当に……。ほら謝礼よ」

「フン……」

「確認しなさい。謝礼を誤魔化してるかもしれないでしょう?」


 小さな袋を手渡す。中に入れているのは、金庫の鍵だ。

「なんで鍵なんだよ」

「金貨をこの場で渡したら、あなた、家に着く前に殺されるわ」

 今すぐ確認に行くなら同行すると、リリーは申し出た。

「……」

「さっき言ったでしょ? その目で確認しなさい。私が謝礼を誤魔化してるかもしれないでしょう?」


 街の預かり所まで馬車で移動する。三人乗っても充分の広さの馬車は、ガラガラと音を立てて石畳の道を駆ける。音は大きいが、座席は柔らかく振動はあまりしない。


「ハープですよね? どうしてこんなに小さいんですか?」

「ああコレ。事前に城で情報を集めてあるのよ。この手のアイテムは、魔法がかかっていて、大きさが変えられるの。片付ける時に便利でしょう」

「オレにかかればこんなモン、楽勝だ」

「ふふっ、そうね。たいしたものよ」


 預かり所に到着する。たくさんの金庫が壁一面に設置されている。鍵を金庫と合うか照合し、ジャスパーは中身を確かめた。

「確かに。……受け取ろう」

「いいのよ」

「ところで、薬の件だが」

「話はしてあるけど、いちおう本人たちと話してくれる?」

 それなら私の店にと、再び馬車で移動する。


 妹が病気で、薬を分けて欲しいとジャスパーがメキラとハイラに説明した。メキラの反応はすこぶる悪い。眉間に皺が刻まれてしまっている。

「……事情はわかった。その前にリリー。彼はアキラと同じぐらいに見えるが」

「そうねえ。それが?」

「子供に泥棒をやらせたのか」

「私がやらせたというなら、確かにそうね。金で依頼をしたんだから。でもねえ、メキラ。ジャスパーはもともと自分の意思で職業を選択して、暮らしてるの。それを私がどうこういう権利はないわ」

 僕の知る、彼ら十二神将は、仏教の世界の守護者たちだ。犯罪者に薬師如来の薬をわたすというのは、戸惑いがあるのかもしれない。


「盗賊には薬は渡せないって?」

「職業として盗みをしているのが問題だ」

「親は働けねえし、妹は病気だ。生きていくには盗みをするしかない。あんたたち軍人か」

「まあ、そうだな」

「武芸があるだけいいじゃねえか。城では平民の、ガキを雇ってくれない。この女は嫌いだが、良い雇い主だ」

「まあ、この子の親の腕をぶった切ったのは私だけどね」


 確かに。

 城で働こうと思えば、それなりの家柄てせなければいけないんだろう。手に職がなければ、盗みくらいしか、金は手に入らないのかもしれない。

「この子の境遇はまあまあ不幸だけど、それを救ってやる義理はないのよ。頼まれていないのだから。それなら、私が薬を買い取ってジャスパーが買うということでどうかしら。ヤクシニョライ様とやらは、転売を禁止してる?」

「……」


 メキラが黙っていると、いいよ、とハイラが立ち上がった。金もいらないとリリーに手を振った。


「盗賊なのは感心しないけどな、妹さんが今現在苦しんでるんだろう。それを助けてあげるのは、薬師様の御心に逆らうことにはならない。いいだろメキラ」

「……お前は甘いな。まあいいだろう。薬は分けてやろう。しかし、職業については考えた方がいい」

 職人の弟子になるとか、危なくない仕事にしたらとハイラ。

「余計なお世話だよ。オレたちは今日死ぬか明日死ぬかの暮らしなんだ」

 薬壺から、さらに小さい壺に小分けする。

「傷に塗ればたちまち治る。飲ませる時はぬるま湯に小さじ1でいい」


 金色の小さい壺に入れられた不思議に輝く薬を見て、ジャスパーは二人に頭を下げた。

 リリーからは少なくない金を受け取り、しばらくは穏やかに暮らせるだろう。


「ジャスパーは、シャルルロアの盗賊よ。この国の政治は私には関係ないこと。私は恋愛がしたいだけであって、世界を救いたいとか別に思ってない。隣国のことは隣国の人間に任せておけばいいのよ」

「リリー様、戦争を起こせば、ジャスパーのような不幸な子供が増えます」

「クラウスを助けられなかったら、私という不幸な女が増えるわ」

 僕はふと、姉を女王として奪われたセティスのことを思い出した。

 彼も、ダイアモンドナイトが女王を定める制度の犠牲者だ。


「シャルルロアが、女神の力を使って好き勝手しているのだから、女王を殺すか、国ごと滅亡させるか、女神を親元に返品するか。どの道を選んだって大変は大変なのよ」

「友達のことは考えないんですか。アルベルタや、エディ、ゾーラやアッキーはどうなるんですか」

「恋と友情を秤にかけたら、恋が大切に決まっているでしょう」

「……」

「アキラ。この期に及んで、誰も傷つかない方法があるなんて思ってないでしょうね」


 二人とも止めなよ、とハイラが割って入った。

「誰も傷つけないようにというのは、ムズカシイかもしれないな。でも犠牲が少ない方法を考えよう。アキラ、リリー、今日はもう寝よう」












のんびり更新ですが、続きは書いておりますので、次回もお楽しみに! 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ