第117話 怒りの渦潮
こここから新章が始まります!
117
怒りの渦潮
アカネをカルコスの城へ送り届ける。レッカが夕食を食べていけというので、ありがたくごちそうになる。 強い希望で魚介類を用意してもらった。アカネはもともと日本人なので、僕の気持ちを理解してくれて、数種類の刺し身や煮魚、味噌汁を用意させてた。
カインは生魚を警戒していたが、リリーが美味しそうにしているのを見て、おそるおそる箸をつけた。
「……美味いなコレ……」
「ラウネルは日頃、川魚しか食べないもの。新鮮だから生でも大丈夫なんですって」
食事をしながら、アカネが
「次はどこに行くの」
と聞いた。
「次はサファイアを探すの。ダイアモンドナイトの妹らしいのだけど」
黒百合の女神によると、ダイアモンドナイトが「自分の国が欲しい」と言い出した時に、ついでに地上に送られたのだが、
「海を支配するからっつって、それから会ってないわ」
「そんな別れ方で!? お姉さんでしょう」
「まあそうだけどー。ちなみに名前はヴィアベル」
その時、レッカが
「海の王国、という認識であっているか?」
と箸を置いた。
「ええ、そうね」
「この国は、周囲を海に囲まれている。アワージという街の近くに、海が渦巻いている海域がある。我々は怒りの渦潮と呼んでいる」
「アワージ」
「泡立っているから。その島には伝説があり、青年がその渦に巻き込まれて、海底の王国にたどり着いたらしい。そこでは魚が舞い踊りを見せてくれて、美しい女王が歌ってくれたと」
「……浦島太郎じゃないか」
日本にもよく似た伝説があると僕は説明した。
「その渦潮の下に、王国があるんですね。竜のうろこがあれば、海の中でも息ができるから、行けるんじゃないですか」
「その女王が、ヴィアベルとして。どうしてそんなに怒っているのかしら。渦潮が絶えず発生するぐらいには」
「誰かが怒らせるようなことをしたんじゃないですか」
「怒ってるところに、わざわざ行くの?」
「サファイアを手に入れるためです。クラウス王子を助けるんじゃないんですか」
リリーは茶碗に残っていた白米をかき込み、
「そうね、そのためには、サファイアの力を借りないとね……」
皿に残った刺し身を綺麗に片付けた。
「私も行きたい」
「カイン? 危険に飛び込むことないわ、私とアキラで行こうと思うんだけど」
「もともと竜のうろこは私の物だ。ひとつ貸すから、お前とアキラは手をつないで潜ればいい」
パチン、とカインがウィンクしてみせた。協力してくれる……ようだ。
「わかりました、それで行きましょう」
翌日、レッカたちに案内してもらうことなった。温泉に入って、今夜は休んでと、以前世話になった旅館を訪ねた。
「へえ……。日本みたいだな……」
ハイラとメキラは別の部屋で休むことになり、男だけで先に入浴する。
「アキラ、君も日本人なのか」
「はい。アカネもそうですが……。ハイラさんたちは日本のことを知っているんですね」「ああ。オレたちはもともと、そちらの世界の者だからな。寺で薬師如来というのを見たことないか? 手に壺を持っている仏だ。薬師様はオレたちの主人」
「……いつか、帰るのですか」
「帰り方がわからないんだ。……いまはメキラと暮らしているから、帰れなくても構わない」
ちゃぷん、とお湯を顔にかけて、ハイラは目を閉じた。
「薬師様にも仲間にも会いたい、とは思う。オレたちは任務の途中でこの世界に飛ばされた。むこうの世界で何年経っているのか、それすら判らない」
リリーのそばにいたいと思う。
いつか、帰る機会があったら、自分は断るのだろう。その時は、代わりにハイラとメキラに声をかけてもいいと思った。ふたりが、この世界に留まりたいというなら話は別だが。
今はするべきことだけ考えよう。
「アキラ、海の中の王国ってどんな感じなんだろうな」
熱いのか、浴槽に足だけつけてカインはご機嫌だ。
「好きな女と海に潜るなんて素敵じゃないか。明日はしっかりやれよ」
「……はい。お気遣いありがとうございます」
おまたせしました、続きはちゃんと書いております!
次回、新キャラ登場!!




