第6話「シャルロット・デュポン」
自由市場コモンズは、迷宮都市の旧市街と新市街を結ぶ大通りに設けられた商業地区を指す。旧市街は主に冒険者居住区や組合関連施設が建ち並び、この都市の基盤地域である。実際、過去に幾度もの区画整理が行われたが、いずれも旧市街を軸にした再編であった。そのため、昔ながらの煩雑とした街並みが現存しており、時代と共に中流階級以上の富裕層らは新市街へ移り住むことになった。この新市街の設置に産声を上げ、迷宮都市ラカンが計画された本格的な近代都市へと発展したと評する者も少なくない。
また旧市街と新市街を結ぶのは、このフロイト通りだけでなく赤の広場も同様である。しかし赤の広場の名称は、かつて迷宮から運び出される冒険者達の負傷や屍によって広場が赤く染まった現象に由来しており、不気味であること。そうでなくとも冒険者の領域であるため、政府関係者や商人らは好んで往来しない。もっとも現在は都市整備が行き届き、組合も定期清掃を行っているので綺麗な緑あふれる場所となっているが。
「先に市場に行くんですか?」
「うん。お父様に面会する前に、ファムくんの正装を準備しないとね」
シャルロットに手を引かれて、俺たちは自由市場コモンズにいた。
旧市街寄りの商業地区では冒険者向けの商品を多数扱っており、バザール形式で価格帯は安価、品質もピンキリだが、目利きの者がいれば掘り出し物を発見することも可能だ。一方で新市街寄りの地区では、文官や商人などの富裕層向けの商品を取り扱っており、正装とされる衣類もここで買えるという。
呉服店に入ると、この砂漠地帯の民族衣装に身を包んだ小綺麗な老人が対応してくれた。俺の身体の採寸から始まり、民族衣装が良いのかスーツのような背広の服飾が良いのか等々、シャルロットに細かく訊ねている。彼女は悩ましそうに交互に俺を見つめながら、背広に決めたようだった。老主人は手際よく既製品を再調整してくれ、わずか数時間で完成させてくれた。彼曰く、商人同士の取引には信用と迅速さが必要不可欠なのだとか。流石は豪商デュポンの娘、顔が広い。
俺たちは服飾を受け取った後、デュポンの後ろ盾を得る計画を練るため、一旦シャルロットの自宅へ向かうことにした。彼女の実家であるデュポンは新市街の一等地に屋敷を構えているが、彼女自身は冒険者稼業のため旧市街のアパートに独り暮らしをしているそうだ。仮にも男が独り暮らしの女性宅へと本当に行っても良いのか確認を重ねたが、彼女は良いから遠慮しないでと繰り返し許してくれた。そうして道中腹ごしらえをしつつ、シャルロット宅に着く頃にはもうすっかり日が暮れてしまっていた。
「———ふぅ、いっぱい連れまわしちゃってごめんねぇ。疲れちゃったでしょ?」
「いいえ。僕は大丈夫ですよ」
無事部屋に付くと、シャルロットは部屋の明かりを付けた後、大きな背伸びをして身体を労わる。思えば彼女は中学生ぐらいの背格好だが、冒険者稼業に独り暮らしとかなり大人びているだろう。年上には敬語を用い、俺のような年下の子供には優しい言葉と振る舞いを徹底できているし、理想のお姉さんと言って良い。いまも俺の頭をポンポンと撫でて、疲労を気遣ってくれる。
また彼女の部屋は1LDKの近代的な造りであった。電気のような部屋の明かりも魔道機械の一種であるらしく、発光機能のある魔道具を迷宮から持ち帰り、冒険者組合が複製・大量生産に成功したようだ。先進的なこの都市では上下水道も完備しており、砂漠に位置しながら魔道具の力でシャワーまで浴びれるのである。そのため現在、迷宮都市ラカンでは一般家庭にも照明や水道という文明の利器が備わっている。
「...」
初めて女性の部屋に入った俺は、緊張して思わず無口になる。静寂に包みこまれた空間に自分の心臓の鼓動が響いてないか心配になるうえ、若干震えてもいるのだろう。いま上手く喋れる自信がない。
「...じゃあ、こっちおいで」
静寂が支配を確立させた頃、シャルロットはそう静かに囁くと、僧侶服のチャックや結び紐を解き始める。清廉潔白で硬派な装飾を解くごとに、その綺麗で色白な素脚や腰回りが露わになっていく。童顔で背丈こそ中学生の彼女だが、身体つきは引き締まりと豊かな峰々に富んでおり、ほのかに照らす明かりが妖艶な雰囲気を醸し出していた。唐突に直面する事態に、俺は眉唾を飲む。理解が追いつかない急展開である。
シャルロットはゆっくりと、アンティーク調の装飾が施された柔らかいベッドに座った。窓際にあるベッドは、その背後から綺麗な月明りを呼び込み、彼女の美しい金髪を照らして美貌に神々しさを与える。その長い睫毛と透き通るような翡翠の瞳に魅了されマジマジと見つめてしまうが、やがて俺は羞恥心から顔を赤めて目を逸らすことになった。
「ふふ、恥ずかしいよね」
だがシャルロットも俺と同様なのか、顔をほんのり紅潮させて俯いてしまう。やがて彼女はそのまま横に倒れ、ベッドの優しく軋む音が部屋に響き渡った。シャルロットは片腕で目元を隠し、仰向けになりながらファムくんもこっちに来なよと隣をポンポンしている。俺は、今まで経験したことのない身体の奥底から沸々と湧き上がる昂りに困惑しつつ、この情況の意味を全力で思慮する。
...ああ。これ、誘われてるのか。
しばらく思索を巡らせた後、俺はこの世界が貞操観念逆転であることを思い出した。逆の立場を想起すれば道理なことである。自画自賛するのも気色悪いが、正直俺はかなりの美形だ。母譲りの琥珀色のふわふわな髪は可愛さに溢れる子犬のようであるし、名門貴族の血脈由来の非常に整った中性的な顔立ちに加えて、灰色の瞳は多少の禍々しさを印象付けるが、却ってミステリアスな雰囲気を創り出しているようにも思う。
そんな可憐な美少女が自分を頼って退路を断ち、全幅の信頼を置いてくれている。しかも経済的にも精神的にも一応自立している大人びた中学生が、彼女をお持ち帰りできてしまった。いかに立場というものがあろうと所詮は精力旺盛、第二次性徴期を迎えて性に多感なリビドー溢れる中学生である。もはや期待しない方がおかしかろう。
「.........シャワー、浴びてきます」
「...うん///」
淫靡な空気漂う部屋に背を向け、長い深呼吸をする。肺一杯に新鮮な酸素を入れ込み、俺は覚悟を決めた。シャルロットは察する俺に嬉しそうな声音を上げ、ゴソゴソとシーツの中には入り込んだのだろう。ベッドの僅かに軋む音が俺の心臓をさらに締め付け上げる。
浴室は簡素な造りであったが、小綺麗で温かった。俺は気持ちの整理を付けるため、浴槽に湯を張り目元ギリギリまで沈んで、ブクブクと息を吐いてみる。無意味な行為であるが、いまの俺にはその無意味さに潜在する余白が欲しかった。少し熱いぐらいの湯舟に気持ちの昂りを押し付けては、戸惑いと冷静さの理性と情熱が交互に顔を覗かせる。劣情とは、こうも人間を容易く壊してしまうのかと末恐ろしかった。
「......上がりました」
「はぁい、私も入ってくるね♡」
廊下でシャルロットとすれ違い様、濃厚な雌の匂いが鼻腔を突いた。
初めて香る芳醇な媚薬にクラクラと眩暈がするが、湯舟で火照った身体がより疼き、劣情が頂点に達しそうになる。いまも痛いくらいなのだが、寸前のところで持ちこたえて暴発は免れた。俺は彼女に気付かれまいと急ぎベッドに潜り込んでは、昂る気持ちに歯止めをかけようと必死で耐える。だがシーツの中は、シャルロットの温もりと芳醇な香りが強烈な存在感を放っており、一層身体が悶えた。
シャルロットが浴びている水音が壁越しに聞こえ、艶めかしく思う。きっと彼女も同様だったのだろう。仄かにシーツにしっとりと濡れているこの箇所が、芳醇な香りの正体であった。ああ、身体が苦しい。血脈がドクドクと波打つのが脳にまで響いている。
俺は気が狂いそうになるのを感じながら、うつ伏せになって枕に顔を埋めた。奇しくも今度はシャルロットの愛用する洗髪剤のフローラルな香りが、鼻腔の奥底に訴えかけてくる。様々な香りが混じり合い、頭が茫然とするのに抗う術もなく、思わず腰が動いてしまう。
やがて湿ったシーツが俺を優しく包み込み、お互いの粘液が卑猥な音を立てて擦れる音がする。おかしい、おかしいおかしい。こんなはずでは...。だが腰が止まらない。俺はもう我慢の限界であった。
静寂と月明りが差し込む淫靡な部屋で、年端もいかぬ少年の甘美な声音が宙を舞う。
「...ぅ、ぁっ...ッ!....ぁ...ぁっ,,,あっ///」
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シャルロット・デュポンは、我ながら見事であったと振り返る。出会い頭の心躍るトキメキから淑女の振る舞い、仲間達への巡り逢わせに、あの子の抱える難事への啖呵。まだ出逢って初日で情事の仲になるのは少々言い訳がましくなってしまうが、女は度胸も愛嬌もである。何事も勢いが肝心な時があるのだ。
一通り身体を洗った後、ファムが張った湯舟にシャルロットも浸かる。ちょうど良い湯加減に、身体の緊張が緩んで全身の力が抜けていく。脱力し切ってだらしない表情を晒すが、この後の情事を想うと顔の綻びが一層とどめを知らなくなっていく。ファムの前ではお姉さんぶって、うふふなどと上品な笑い方を保っていたが、もはや現在ではぐへへと下品な笑みしか湧いてこないのである。
「お父様お母様、今夜シャルロットは真の淑女になりますっ」
これもすべて神々の巡り合わせである。幼少期より豪商デュポンの跡取り娘として厳格な教育を受けたシャルロットにとって、冒険者になるまでの人生は温良恭倹で勤倹力行が求められる苦行の日々であった。元々穏和で優しい性格であったシャルロットではあるが、それでも家督に縛られ自分が本当にやりたいことすら分からないのは辛い。冒険者になって初めて世界が広がり、年相応に恋心や異性に興味を抱けるようになった。あえて実家を飛び出し、独り暮らしを希望したのもそのためである。
「神々よ。どうかお見守り下さい」
シャルロットはその豊かな果実の上に手を乗せ、祈りを捧げる。デュポン家の教育の賜物で信仰深く敬虔な僧侶となった彼女は、片時も祈りを忘れない。神々のご加護は絶対なのだ。しかしまあ今日の礼拝には眼を瞑ってほしい。神々は大事だが、それはシャルロット本人の幸せがあってからである。何事も優先順位があるのだ。
...さあ。いよいよ今夜、私は大人の階段を上るんだ。
シャルロットは覚悟を決めて湯舟から上がり、火照らせた身体を優しくタオルで拭き取ると、気持ちを昂らせて裸体のまま寝室へ向かう。ぐへへ、きっとファムはびっくりするだろうけど、興奮してくれるに違いない。そしてあわよくば、彼の方から私を求めてきて...///と妄想に耽る。
「ファムく~ん、お待たせ♡」
シャルロットは精一杯色っぽい声音で呼びかける。浴室から身一つで出てきた彼女はもう引き返せない。たとえ何があっても、ファムが泣き喚いて嫌がっても、もう欲望のまま貪ることを止められないだろうと。それが淑女としての責務、据え膳食わぬは女の恥なのである。
しかし、時として現実は非情であった。
「...何してんだ、おめェ」
返ってきた反応はファムの可愛らしい声ではなく、ドスの効いた聞き覚えのある声であった。
「...やっぱり、見に来て正解だったな。おいイブ、現行犯逮捕だ」
「あいよ」
続いて、こちらも聞き覚えのある冷徹で仄かに怒りが混じった声が聞こえる。何やら物騒な単語が聞こえるが、どうにも理解が追いつかない。一体全体何が起きているのだろうか。
シャルロット・デュポンは茫然自失のまま、イブ・サンローランに羽交い絞めにされ、抵抗も出来ず組み伏せられる。彼女の裸体は、ひんやりと冷気を漂わす床材に押し付けられ、思わず冷たッと声を漏らすが、ここで初めて段々と理解が追いついてきた。もはや先程までの大人の魅力溢れる、妖艶で淫靡な彼女はどこにもなく、そこには白眉の女狐に憑りつかれた只の中学生が絶望の表情を浮かべていた。
「ど、どうして...どうしてこんなことをするんですかぁ...」
シャルロットの悲痛な叫びが、廃れた軍人へ向けられる。だが、当の睨まれているフランツは意にも関せず煙草をふかし始めると、数秒間をかけてゆっくりと煙を吐き出す。シャルロットのベッドに深々と腰掛けた彼女は、同じくシーツに包まって隣で呆然としているファムの頭をポンポンと撫でる。
「...なぜ?なぜかって? 決まっているだろう、未成年者強制淫行罪だ」
「ッッ!強制ッ!? 強制じゃないですよ!ちゃんと同意得てますからッ!!」
シャルロットは更に声を荒げて悲痛に叫ぶ。しかし、フランツはプカプカと煙草を吹かすばかりで、罪人の戯言だと聞く耳を持たない。もはやフランツに訴えかけても無駄だと察した彼女は、ファムの方を凝視して、ファムくんのこと信じているからねと涙目になっている。
「...そ、そうで―――」
「待てッ!」
「なんで遮るんですかッ!ファムくんが何か言おうとしたじゃないですかッッ!!」
ファムが何か言おうとするも、フランツは軍人式の切れのある強い口調で場を制する。シャルロットも釣られて口調が強くなるが、自分には正当な権利があるとして一喝する。
しかし、フランツはその冷ややかで軽蔑する眼差しを、全裸で取り押さえられるシャルロットに一瞥すると、ファムに何かコソコソと耳打ちする。何を話しているのかは全く聞こえないし、上に乗っているイブのニシシという笑い声が非常に不愉快だ。この女狐はいつか神の裁きを受けねばならない。
「........はい。ぼ、僕は、このお姉さんに...。そ、その、無理やり、...犯されそうになりました」
「ぇ、冗談だよね? ね、ファムくん...? 嘘だって言ってよ。ねぇってばッ!」
「おい、見苦しいぞ罪人ッ!この通り、被害者の証言と全裸の容疑者の現行犯逮捕が全てを物語っている。大人しくしろッ」
暫くの沈黙の後、ファムが驚きの証言を述べる。
不当だ。全くもって不条理だ。どこで道を間違えたのだろうか。私は真面目に生きてきた。なのにどうしてこんな...。謙虚で敬虔に、ただ普通の思春期の少女として生きたかっただけなのに。その結果が性犯罪者なんてこの世界はどうかしている。
「...罪人、シャルロット・デュポンよ。我々が加入している冒険者組合は、警察機構の役割を担っていることは承知だな? そして金級以上の冒険者には衛兵の役割が与えられていることも。つまり、貴様の進退はいま、我々の手の中というわけだ」
「...脅しですか? 私たち、仲間だって信じていたのに。大体貴女達に何のメリットがあるっていうんですか」
「...メリットか。ふん、それは自分で考えることだな。薄汚れた性犯罪者よ」
性犯罪者。その言葉がシャルロットの中で反復し続ける木霊になる。彼女はもう喚かない。喚く元気すら起きない。迷宮で苦楽を共にし、命すら預けて信じ合っていたはずの仲間に裏切られ、このざまである。そして私の運命の相手だと思った人は、助けてくれない。もはや、生きる気力すら起きない。死にたい。まさしく絶望だ。
フランツは、そんな絶望の表情を受け入れたシャルロットを見下ろすと、立ち上がって煙草の火を消す。
「...うむ。だが、我々も鬼ではない。温情をくれてやろう、シャルロット・デュポンよ。貴様を衛兵に突き出すことはしない。その代わり、今後この少年、ファム・ファタ―ルの身柄は我々で保護させてもらう」
「........やはり、それが狙いですか」
「...ふぅ。何を言っているのかさっぱり分からんが、間違っても『死のう』となどとは思うなよ? 我々は然るべき対応をするまでだ」
「...ははっ。もう、なんでも好きにしてくださいよ。だから私も好きにさせてくれたらいいじゃないですか。私の生死なんて貴女達には何の関係もないでしょうし」
シャルロットは自暴自棄になる。もうこれ以上壊れていく彼女を見てられなかった。
フランツは軍帽を両手で深く被り直すと、これが最後通告だと告げる。
「...我々は明日、デュポン家へ直接直訴しに行く。貴殿の姫君が、我々の大切な仲間を凌辱しようとしたとしてな。もし異論があるなら明日の昼前、同席しに来い。...分かるだろう?」
「...............」
そうして悪名高きイブ・サンローランとフランツ・フェルディナンドは、私の少年ファム・ファタ―ルを連れて行った。月明り差し込む部屋には、全裸で凍える私一人だ。涙と鼻水でもはや顔はぐちゃぐちゃだが、何もする気力が起きない。このまま一切動かずに餓死するのも悪くなかろう勢いだ。
だが、何かが引っかかっていた。フランツは元軍人で敵には容赦しないが、心許した身内にはすごく甘いし優しい。イブもたしかに気に食わないし反りが合わないところが多いが、それでも大事なパーティメンバーである。あまりに非情すぎるし、私の気持ちだって二人とも分かっているはずだ。ただの嫉妬や嫌味でこんなことをするはずがない。そして、ファムだって...。
.............あっ。
違和感を覚えた欠片たちが、いま一つにまとまる。まだ仮説に過ぎないが、これはひょっとしてそういうことなのだろうか。だとしたらやり過ぎだし、些か、いやかなり憤りを感じるが、それぐらいの真実性が必要なのかもしれない。...少し、ほんの少しだけ生きる元気、湧いて来たかも。
シャルロットは生まれたての小鹿のように、脚をびくびくさせながらなんとかベッドまで辿り着く。仰向けに寝転びシーツに包まると、やっと一息付けた。
「ほんとに、とんだ一日だったなぁ...」
悲痛な心の叫びが静かに漏れ出る。まだ確定したわけではないが、もし先程の仮説が当たっているのであれば、明日実家に行かねばならない。正直仮説があっていようが行きたくないのが本音であるが、行かないと私の肉体だけでなく名誉も死ぬことになってしまう。今後の身の振り方を決めるのは、その後でも遅くはないだろう。ただ、もう男は懲り懲りかもしれないな...。
―――そう思い、疲労と睡魔に抗うことなく暗闇に落ちる寸前であった。
ベッドのシーツが妙に濡れており、何やら独特な刺激臭がする箇所があることに気が付く。触ってみるとゼリー状のようなベタつきがあり、無色透明な見た目であった。
...........あっ///
今日一日の疲労、決断、精神状態の乱高下、絶望の最中。全てが人生初体験の一日であったが、シャルロットは今日何度目になるか分からない閃きと興奮を覚える。現在進行形で憂鬱な気分であるが、不幸中の幸い、アンラッキーである。それはきっとあの少年のものだということを察してからは早かった。
精神肉体ともに限界であるはずの彼女であったが、不思議と睡魔よりも食欲よりも優先されるものがあったのだった。
はい、普通にシャルちゃん可哀想回です。でも可哀想は可愛いんですよねえ




