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俺の人生で初参加のパーティーは立食形式だったっす。

「俺は今日の戦利品は多かったよ。みんなに見せるから欲しかったら言ってくれ」


俺は今日の狩りで得た装備アイテムをリビングのテーブルの上に乗せてみんなに見せていく。

食材や全身甲殻なんて見せてもしょうがないしな。

『ゴブリンリング』『ゴブリンリング+(プラス)』『投げ斧』『オークウィップ』

『短槍』『サイラスの片鎌槍』

『早乙女トマホーク』『早乙女ガントレット』

俺が最後に出したのは自分で改良した武器なのだが・・・アイリもミーもガントレットも既に2つずつ、トマホークも10本ずつ持ってるみたいなので、俺のものと同じ改良をして『早乙女式トマホーク』と『早乙女ガントレット』にしてあげた。

前の狩りのときに、アレだけ集めるのに苦労した投げ斧とトマホークが出まくったので調子に乗って狩りまくったらしい。

クラリーナはゴブリンリング+をはめようとしていたのでクラリーナのサイズに作り変えて渡したんだけど、自分の指にはめて見て眺めたが・・・ゴブリンの革製なのでか色が気に入らなかったらしく、首を振ってリングを外してアイテムボックスに入れた。

クラリーナも前回の狩りの時にゴブリンリング+の自分サイズのモノを貰ったのだが、色が気に入らなくて装備してなかった・・・今日俺が持ってきたリングも少し色が違っていたみたいで試してみたかっただけらしい。


誰も要らなかったみたいなので取り出した全部の装備品はそのまま俺のアイテムボックスの中に収められていく。まぁ、クラリーナは新武器の弓を練習中だからな・・・興味もわかなかったみたいだ。

アイリとミーは既に持ってるし。


俺がリビングのテーブルに並べた戦利品を片付けると嫁達も戦利品を並べ始めた。

今日は一昨日の続きでB13FからはじめてB18F攻略途中までで時間になったので帰還したという話だった。

俺の行っていないB16FのミノタウロスロードとB17FのリザードドッグファイターとB18Fのキラービーナイトのドロップアイテムで、まずは取り出す必要もないので口頭で説明された素材アイテム。


まずはB16Fのミノタウロスロードは通常ドロップアイテムがバター10kgだった。

レアドロップアイテムはチーズの塊1kg。

流石のミルクさんだな・・・ドロップアイテムによる乳製品のラインナップが凄い。

これらはマリアのアイテムボックス経由で既に俺のアイテムボックスに転送済みと説明された。


B17Fリザードドッグファイターは通常ドロップアイテムが『リザードドッグファイターの尻尾』で、これは隷属の首輪の素材として使用するアイテム。

これも俺のアイテムボックスに既に送られてきている。

レアドロップアイテムは『バックラー』これは手首に取り付けるタイプのモノでバックラーの表面はリザードドッグファイターの鱗製になってて、内部はリザードドッグファイターの骨製。

指先から肘までを覆う卵型でリザードドッグファイターの特性『氷以外の魔法に耐性』が高くあるし、骨製の盾なので見た目以上にかなり軽くバックラーの練習用としてだけでなく、鎧の表面に幾つか取り付けて防御力を増している冒険者を見かけたことが何度かあるぐらいポピュラーなものだった。

アイリも既に幾つか持っているので、余りは俺のものになってしまって15個ほど渡されてアイテムボックスに片付けた。


B18Fキラービーナイトは以前と一緒で通常ドロップアイテムがキラービーナイトの甲殻で、レアドロップアイテムがキラービーナイトの投げ槍。


それで装備品はバックラーと投げ槍。

嫁3人はキラービーナイトの投げ槍も要らないようなのでその他の素材と同じように俺のアイテムボックスに入れておく・・・アイテムボックスの肥やしになりそうだな。無限収納だと存在すら忘れそうだ。


嫁3人が今日退治した上位種はB14Fの『一角いっかくギュー』で極太の1本の角が生えてる凶悪な牛らしい。

角の根元の直径が10cm長さが40cmの大きな角が特徴で、群れで率いている手下のバクギューを先に突撃させて自分は後や横から突撃する波状攻撃を仕掛けてくるので注意が必要な凶悪な魔獣だと教えてもらった。

一角ギューの通常ドロップアイテムは鹿肉・・・鹿かよ! 牛ですらねぇーじゃん! しかも量は少なくて5kgだった。

だけどこの肉を包んでいるのが1m×1mの一角ギューの革で、これが牛革の高級素材になってるという・・・『鹿肉なくてもいいじゃん』とツッコミを入れたくなる、摩訶不思議なドロップアイテムだった。


レアドロップアイテムもあってこちらも摩訶不思議なドロップアイテムで『鉈』だった。

どこが摩訶不思議なのかというと・・・

刀身は23cmのオーガ鋼で作られている片刃の鉈でグリップは16cmの鹿の角製。

鞘もセットでドロップしていてほおの木製で表面は鮫革で覆われている。

腰のベルトなどに吊り下げたり、太ももに縛り付けられる用の革紐も付いていて鹿の革製だった。

・・・つまり一角ギューのドロップアイテムなのに牛の素材がどこにも使われてない。

鞘の表皮の革ぐらい牛革でもいいと思うんだけどなぁ。


これは2本ドロップして既に嫁3人の話し合いは終わっていて1本はミーが持つことになってて、残りの1本は俺に渡すと決まってるんだそうだ。

ありがたく貰ってアイテムボックスに入れておく。


そのほかに出てきた上位種はB17Fの『リザードドッグジェネラル』で60頭ものリザードドッグファイターを率いて総勢78頭による波状攻撃をしてきた。

討伐するのに20分近く掛かる持久戦を仕掛けられて大変だったと教えてもらった。

なかなか経験できないダンジョンでの持久戦は魔力の効率的な使用方法など、今までにないほど勉強になったとクラリーナが嬉しそうに語ってる。

リザードドッグジェネラルの通常ドロップアイテムは『リザードドッグジェネラルの鱗』で素材アイテム。

これはサイラスのドロップアイテムなどと同じで、出てくる箇所や大きさは毎回のように違ってる。

・・・チーム早乙女遊撃隊の場合は尻尾や爪まで含まれた全身で出てくる。

3つの通常ドロップアイテムに1回は全身で出てくる異常な確率・・・本来は数年に1回の希少レベルの全身セットなんだけど、サイラスほどの希少価値がないのは出現量によるものだろう。

レアドロップアイテムであるはずのリザードドッグジェネラルの牙までフルセットなのも理解不能なレベルだ。

リザードドッグジェネラルの鱗はリザードドッグファイターの鱗よりもさらに火耐性が高く鱗の鎧の中でも高級な素材になっているし、銀色に鈍く輝く鱗は盾やフルプレートアーマーのの表面などにも貼り付けられたりしてるので用途は広く高額取引されているアイテムだ。


レアドロップアイテムはリザードドッグジェネラルの牙が10本。

これは隷属の首輪を作成するための素材でリザードドッグファイターの尻尾にリザードドッグジェネラルの牙を融合させてから、金属製の金具と隷属の魔法を封入した魔石を取り付けると完成する。


嫁の3人が今日のアゼット迷宮攻略で集めたドロップアイテムは素材が多くて、武器や防具は種類が少ない階層だったようだった。


出発する時間が近づいてきたので普段着から着替えることになった。


俺は豪奢な旅人の服に着替えて服についてる全てのボタンを宝石に作り変えた。

腰のホルダーには護身用のナイフではなくて白扇子を収める。

そのまま玄関に移動、ブーツを履こうとして・・・今貰ったリザードドッグジェネラルの鱗でブーツを作って履いてみたが中々豪勢な雰囲気が上手く出て見栄えはよくなったな。


今日はユマキ家本宅のパーティーに呼ばれているので・・・首都シーパラの中央行政区の西側にある高級住宅街から近いのは早乙女工房だろう。

早乙女工房内部のゴーレム駐車場に転移してそのままキャンピングバスで移動したほうが早そうだ。


嫁達が来るまでの時間つぶしで早乙女邸のガレージに行って、帰宅したクラリーナがガレージに置いてくれてた停車中のキャンピングバスを点検する。

内臓魔力量が少し減っていた程度でどこにも問題らしきものはなかったな。

俺が全箇所の点検を終えて魔力補充も終えた頃にドレスに着替えた嫁3人がドレスの素材である龍布に封入されたお淑やかな歩き方で現れる。

今回の立食パーティーだけでなく全部のマナーや作法はドレスに封入してあるので、今後はこのドレスでパーティーに出席する形になる。

嫁全員の手をとってキャンピングバスに乗せてセバスチャンとマリアも乗せてから転移魔法でキャンピングバスごと早乙女工房1F内部ゴーレム馬車駐車場に移動する。


ユマキ家本宅の場所はセバスチャンが知っているのでキャンピングバスの運転はセバスチャンに任せて俺はキャビンスペースの自分専用シートで寛ぐ。


首都シーパラはゴーレム馬車が通行するための街道は完璧に舗装されていて、僅かな凸凹しかないのだがその僅かな凸凹は俺の作ったキャンピングバスに全部吸収されて乗り心地は最高だ。

時速10kmという超低速では加速感も一切なく、魔法によって前後査収の壁が透けて見えるキャンピングバスの周囲の風景がゆっくりと流れていく以外に動いてる感覚すらない。


みんなこれから出席するパーティーの事で緊張して強張ってるいるみたいだな。


「どうしたの? みんなが行きたがっていたパーティーだよ。緊張しまくってない?」

「それは緊張しますわ。上流階級の集まりなんて参加したこともないのですから」

「おお! ミーの口からとは思えないほどのお淑やかな言葉だ」

「しんちゃんひどいですわ。このドレスを着ていると、このような話し方しか出来ませんの」

「まぁ、自身の生命に関係すること以外にマナーや作法に関係することは最優先で制限が掛かってしまうから、覚悟しておいてくれ。話し方・動き方の全部に制限がかるし、どういう対応をすれば正しいのかは体に任せるのが1番いいよ。正しい答えを全て瞬時に反応して体が動いて言葉も答えてくれる」

「クラリーナがすぐにキレイに動いてるのを見て羨ましいと思ってますわ」

「アイリ、それは・・・クラリーナは『慣れてる』んだ。クラリーナが装備している早乙女バラ杖には杖術の全ての技と経験が封入されているんだ。なのでクラリーナが訓練場でしている杖術の訓練とは何も考えずに体を反応させて動けるよう特訓しているんだ。杖に任せてる状態と言った方がいいのかもしれん」

「なるほど・・・説明されてみれば簡単な事なのですね」

「私のご説明が上手く出来なくてミーさん、アイリさんごめんなさい」

「クラリーナが謝ることじゃないですわ。なんとなくですけど私も体と言葉の使い方のコツが掴めてきた様に感じますわ」


確かに緊張が解れてきたことも関係しているのだろうが、アイリもミーも滑らかな動きと言葉遣いをし始めてる。

話のついでに思い出したので俺は嫁3人に龍布で作った派手で見栄えの良いハンカチ・フキンなど色違いを数種類、アイテムボックス内で作成して渡しておいた。

必要になるかもしれないからな。


みんなで雑談しているうちにユマキ家の入り口に辿り着いてキャンピングバスのドアがノックされた。

内側からマリアが開けるとキャンピングバスの中に親衛隊とユマキ商会の幹部らしき人間が現れ、キャンピングバス内に進入してきて2人の挨拶からの自己紹介と説明で、俺達全員の身分照会と招待状の確認が行われることになった。

俺が先に紹介状を渡してから次にAクラスの銀色に輝く冒険者ギルドカードを見せるとユマキ商会の幹部が言葉遣いがより一層丁寧なものとなった。

冒険者カードと招待状が返却されて渡される。

・・・親衛隊の人は以前、本日のパーティーの主役『サトシ・シーズ・ユマキ』をこのユマキ家本宅まで送り届けた時に簡単な挨拶をしているので、キャンピングバスの中に入ってきて一目で俺だと気付いていたようだったが、ユマキ商会の幹部は面識がないので俺の顔を知らなかったのだろう。

そのまま幹部がアイリー・ミー・クラリーナ・マリア、そして上の運転席で操縦しているセバスチャンのところにも行って自分の目で冒険者カードとゴーレムはネームプレートを確認しているようだった。


「ずいぶん念入りなチェックですね」

「御気を悪くさせてしまいまして申し訳ございません。何しろシーズ家の襲名披露パーティーは『後継者正式発表』と『当主襲名披露』と2回は盛大に行われるのが当然なのですが・・・今回は当方に問題がありましての後継者が誕生する前の当主交代となりましたので、過去の慣習にしたがって身内と親しい友人だけを招いてのパーティーになりますので・・・何とかサトシ様とパイプを繋ごうという人達が後を絶ちません。それに・・・招待される親しい人間はほとんどがシーズの関係者ばかりなのですから」

「なるほどなぁ・・・サトシさんの場合はまだ後継者はミサキさんのおなかの中だしな。それにサトシさんは商人の知り合いも少ないだろうし・・・周囲が苦労しそうだな」

「はぁ、ジュンロー様とマツオ様からもそう伺っております。まだ商人同士のハラを探るような駆け引きにはサトシ様は慣れておられないので、周囲のサポートが必要だと・・・」

「秘書が多くなりそうだな」


「はい。既に10人の秘書のサポートで毎日勉強なされております。サトシ様の場合はユマキ商会で雇った親衛隊よりもお強いので、親衛隊が5人で秘書が10人という・・・聞いた事が無い体制ですね」

「フッフッフ、サトシさんらしいな」

「それとココで情報を1つ・・・今回の厳重警戒には早乙女様も少し絡んでおります。何しろ極一部の商人以外とは一切の接触を拒んでいる早乙女様と近づこうとする商人も多くて・・・噂でサトシ様の襲名披露パーティーに呼ばれ出席するほど仲が良いと流れてしまっているので、今回は私のような人間が総動員されて対応に当たっております」


「その苦情はマツオさんとジュンローさんに言ってくれ。サトシの印象を少しでも良くしようと意図的に流した噂だろう。俺が参加するとユマキ商会本部に返事をしにいった今日の午後から流された噂だろう」

「・・・あぁ、そういうことですか、なるほど。早乙女様の正義と高潔なイメージを利用して・・・なるほど勉強になります」

「まぁ、俺の話はその辺で。そろそろ後ろも詰まってきてるし・・・」

「あ、失礼しました。ではお楽しみください」


そういって2人はキャンピングバスから急いで出て行ったのでマリアがドアを閉める。

本宅の正面入り口までの看板に従ってセバスチャンがキャンピングバスを走らせていく。


「やっぱり俺が狙いの商人は多くいそうだな。悪いがアイリー・ミー・クラリーナにはマリアとセバスチャンを護衛でつけさせてもらう。なるべく3人で行動して、トイレに行くときもマリアを連れて行ってくれ」


俺の言葉にアイリもミーもクラリーナも無言で頷いた。


「だからといって緊張しなくていいよ。自分達はメイドと執事を引き連れたVIPな待遇だとでも考えてくれるだけでいい。出来るだけパーティーを楽しんでくれ」


キャンピングバスが誘導されたゴーレム馬車駐車場に停車して、キャンピングバスのドアをマリアが開ける前に俺の掛けた言葉で全員の表情が和らいだようだ。

ユマキ家本宅の入り口にブースが作られていて中にはサトシとミサキとマークタイトがいて、招待客が並んで挨拶後に全員がココでプレゼントを直接渡す形式のようだった。

渡されたプレゼントを運ぶ秘書たちの姿があって、秘書に指示を下してるジュンローの姿も見えた。

順番が来るまで大人しく雑談しながら並んで待つ。

こういう時は必ず戦闘時のフォーメーションのように俺・アイリ・クラリーナ・ミーの順番でクラリーナの左右にはセバスチャンとマリアが挟む形だな。

ヒマだったので俺が冗談で『クラリーナ姫様を護衛する陣形だな』と言って全員で笑ってた。


順番がきたのでサトシ達とチーム早乙女遊撃隊で挨拶をした。

そしてマークタイトの隣にいて甲斐甲斐しく世話をしてる女の子・・・俺が初めて見る女の子がいた。

一目見た瞬間に反射的に鑑識魔法が展開して誰かが理解できた。

名前だけは聞いた事がある8歳の女の子で『キャンシー・シーズ・ユマキ』だった。


そういえばもう一人残されていたマツオの肉親がいたな・・・サトシの妹になるのだから、ここにいて当然なんだが。


鑑識魔法でキャンシーを見てしまったので人物鑑定以上に彼女のステータスや性格なんかも全部データが脳内に入り込んでくる。

サトシにプレゼントのサーベルを2本渡して説明しながら、俺は並行する思考でキャンシーのためのプレゼントで宝石と魔石をあしらったブレスレットをアイテムボックス内で作成する。

脳内に入ってきたキャンシーのデータもヘルプさんによって整理整頓される。


「・・・というわけで、このサーベルは切れ味とかよりも頑丈さと美しさを最優先して、儀礼での着用も出来るような『豪華絢爛』なサーベルに仕上げた。サトシさんの趣味ではないだろうけどね」

「確かにこれは外見が派手過ぎて私の趣味ではないが・・・中身の素晴らしさは一目でわかりますよ。早乙女さん、良い品をありがとう」

「いえいえ、どういたしまして。それとこちらは奥様に・・・」


俺がミサキのために製作したネックレスとフィンガーブレスレットを渡す。

ミサキが俺が渡した2つの品物を持って手にして、巨大で光り輝くダイヤモンドに目を見開いて見たまま固まってしまった。

サトシが固まってるミサキにフィンガーブレスレットとネックレスをつけてあげてる。

うん。これならバランスも良くてミサキの着ているドレスに似合ってるな。

俺が脳内で自画自賛してるときにちらりと見たキャンシーがほんの少しだけ羨ましそうな顔をしたので、俺はニッコリとキャンシーに笑いかけて話しアイテムボックス内で製作したブレスレットを渡してあげた。


「はい。これは君のために俺が作ったものだよ。手にはめてごらん?」


後ろに立つジュンローの手伝いもあって手に装備することが出来たキャンシーは『あっ!』と小さく声を出す。意味がわかってる俺が言葉を繋いであげる。


「どう? これで頭が痛いのから開放された?」

ニッコリとキャンシーに笑ってあげるとニッコリとした笑顔でお礼を言われた。

「うん。早乙女さんありがとう」

「へっ、早乙女さん彼女の頭痛って何のことなんでしょうか?」


俺は後ろでサポートしていたジュンローに説明する。

キャンシーには先天的に『人物鑑定の魔眼』を持っていること。

こういった人の多い場所にいると次から次へと情報が脳内に入ってきて、8歳の子供の処理出来る情報量の範囲を超えると激しい頭痛を引き起こすこと。

しかも彼女の場合は5歳の時に突然に発現したことなどを教えてあげる。

キャンシーにステータスカードを出してもらって確認して驚愕するジュンロー。


「確かにキャンシーが突然外に出たがらなくなったのは5歳の誕生日を越えたあたりでしたが・・・」

「本来はレベル的に生後12・3才で発現することが多い先天的人物鑑定の魔眼なんですが、彼女の場合は知らない人を紹介され挨拶をして話すことが多かったので5歳という年齢で発現したのではないかと思います。俺のブレスレットには魔眼から入ってくる情報を一時的に制限してブレスレットに蓄えて、ゆっくりと彼女の脳内に入っていくようにしましたので、頭痛は解消できたのでしょう」

「そうですか・・・キャンシー、君の苦しみを理解できてなくて申し訳ないな」


ジュンローが後ろからキャンシーの頭を撫でながら謝っている。


「アレだけの頭痛を我慢できていたのは彼女が我慢強いからなのですから、これからは今日のように人とたくさん会うときはこのブレスレットを必ず装備させてくださいね。それで寝ている間にも脳内にゆっくりと少しずつ流れ込むようにしましたので、必ず翌朝まで装備を外さないようにしてください」

「わかりました」


キャンシーは人物鑑定の魔眼を持ってるのがわかったのだから、彼女はこれからマークタイトとともにユマキ家の分家としてサポートする側として教育を受けて、今後は生活をしていくことになるだろう。

今後生まれてくるユマキ家の正統後継者のために。

最後にマークタイトに護身用のナイフをプレゼントして俺の挨拶は終わりだな。

嫁3人とゴーレム執事とメイドゴーレムを引き連れてパーティー会場へと歩いていく。


俺たちの目の前に現れた見覚えのある夫婦に挨拶をされる。

俺達の存在に気付き、サトシたちとの挨拶を終えるのを待っていたみたいだな。

最高評議会の証人喚問でエクストラヒールで俺が治療したシーズの『アギスライト家』長男で次期当主の正統後継者『クリス・シーズ・アギスライト』とその妻『コマリ・シーズ・アギスライト』だ。

挨拶とともに2人と握手をかわしてから、俺は先に嫁達を紹介した。

嫁たちの自己紹介を終えてから雑談になる。


「お久しぶりですクリスさん。体のお加減はいかがですか?」

「お久しぶりです早乙女さん。すこぶる調子がいいとしか言えませんね。治療だけでなくコマリと私の夫婦の危機まで救っていただいて感謝してます」

「初めまして早乙女さん。やっとお礼が直接言えますわね。改めまして・・・ありがとうございます」


コマリが深々と腰を折ってお礼の言葉を言ってくる。

クリスは俺とほとんど変わらないぐらいの身長だけどコマリは150cmあるかないかぐらいの小さな女性だった。

元枢機卿は小さい女性が好みだったらしく直接の毒牙に掛かった被害者は全員が小さな大人の女性らしい。

シスターなど元枢機卿の関係者が起こした事件は被害女性に統一性がなかったというのがデータとして俺の脳内に表示される。


「ご丁寧な感謝の言葉、ありがとうございます。ご主人の事はもうすでに心配ないですから・・・すぐにでもお子様は誕生しますよ」

「ええ、それも大切なことでしたのですが・・・それだけではありません。あの元枢機卿の恐るべき罠と計画を後日お聞きしました。腕輪を主人が装備していた時期は私は主人が嫌いでたまらなくてその反面あの元枢機卿が素敵な人物に思えていた・・・私は早乙女さんに救っていただかなかったら元枢機卿の誘いに乗っていたかもしれません」

「あの腕輪を装備していた時期は私も妻を全く魅力的に思えなくて、むしろ煩わしい存在にすら思っていました。・・・あの時期の私はどうしてそうなってしまったのかすら考えてません。何もかも全てが元枢機卿の罠の中の術中にハメられていたのですね」

「あの元枢機卿が起こした1番の問題は『聖職者の枢機卿が詐欺行為をする』ってことなんですよ。聖職者の枢機卿様が詐欺なんてするはずもないとかすら、考えもしないで無条件で信じてしまう相手なんですから・・・元枢機卿が好き勝手にやれたのは教会の持ってる信用を悪用したから出来たことです」

「確かにそうですわね。元枢機卿という肩書きがなければエクストラヒールの存在すら否定していたと思います。早乙女さんのように目の前で見せられるまでは信用できなかったでしょうね」

「そういうことですよ。ですので太陽神アマテラス様の名を利用した詐欺師らしい最後になると思います」


そんなことを話している俺たちにマツオ・ユマキが挨拶にきた。


「これはこれは早乙女様達とアギスライト様達の皆様方、このめでたい日によくお越しくださいました。是非ごゆっくりとご歓談ください」

「マツオ様、お久しぶりでございます。この度はお招きにあずかり光栄でございます。マツオ様のご提案で最高評議会の証人喚問の席でとはいえ、早乙女様とこうして知り合うことが出来ました」

「マツオさん、久しぶりですね。このような晴れやかな席にお招きいただきありがとうございます・・・」


マツオが来たことで俺は嫁たちにマツオの紹介をしたので、嫁たちもマツオに自己紹介をすることになった。

マツオはホスト側なのでそうとう忙しいらしく俺に『後ほどお時間いただけますか?』と言って俺がOKすると、そそくさと他のグループの挨拶に向かっていった。

まぁ今日のユマキ商会での幹部職員への脅迫の事だろうな。

かなりデカイ釘をブッ刺してやったから出来れば今日中に解決したいんだろう。


クリス達と雑談していて知ったのだがアギスライト商会は本拠地は首都シーパラにあるが、シーパラ半島の酪農がメインの産業で乳製品の生産・出荷・流通を取り扱っている商会で、商売上鮮度を保つために数多くのアイテムボックス所持者を抱えてるのだそうだ。

最近になって乳牛の品種改良に成功して爆発的に生産量が増えることになりそうだと胸をそらすクリス。

自分自身が乳牛の品種改良に関わってたので自慢したかったらしい。

俺が最近シーパラに広めようとしてる『チョコレート』と乳製品の相性の良さを教えてあげたら興味津々でメモまで取って話を聞いてきたので、簡単なレシピを書いて教えてあげる。

フォレストグリーン商会でも俺が数日前に教えたのでチョコを取り扱おうと研究中だと教えたら、アギスライト商会でもこれから取引業者を探して独自に研究をさせてもらうと言ってた。

乳製品には独特のこだわりを持っているらしく途中からは研究者の目になって話をしていた。

コマリは嫁達とモフモフ話で盛り上がっていたようだ。


雑談を終わらせてクリス&コマリのアギスライト家の夫婦と別れてから、俺達夫婦も分かれて食事をすることにした。

立食パーティーなのでスプーンに一口ひとくちサイズに盛り付けられた料理が所狭しと並んでおり豪華で華やかなパーティーだな。

アイリたちもセバスチャンとマリアを引き連れて舌鼓をうってるようだ。

男が集まってるテーブルは骨付き肉が出されていて言い匂いにつられていってみると、俺の前に並んでいた知り合いに声を掛けられる。

最高評議会の証人喚問で出会い、俺がエクストラヒールで治療したもう一人の人物で虎獣人『イワノス・ゲッペンスキー』だった。


「やぁ、早乙女君久しぶりだな」

「イワノスさんお久しぶりですね。左手の具合はいかがですか?」

「すこぶる調子がいいよ。右手に比べて半分ぐらいの握力が出てくるまで復活した。早乙女君のリハビリシートに従って俺の専属医と相談しながら、時間を見つけて訓練をしてるのだが・・・最高評議会直属の捜査部隊の組織作りに忙しくてな、なかなか時間が取れなくて難しいよ」

「急ぐ必要ないですし、リハビリに焦りは禁物ですよ」


並んでいた順番が来てイワノスと二人で立ったまま骨付き肉にかぶりついて雑談が一時中断。

骨付きのまま炙られたデカウサギの肉で味付けにこだわっているらしくかなり美味かったので、もう1度イワノスと並ぶことにした。

リピートして回ってる人が多く前後の人間は同じ人が同じ順番で並んでいるのは笑えるな。

少しずつ人が増えてるけど・・・並んでいる人の列の中をメイドがオシボリを持って走り回ってる。


「クックック・・・あぁ、専属医にも同じことを毎日言われてるよ。リハビリに焦ってるわけじゃないんだ直属の捜査部隊ってことであちこちから入ってくる横槍にストレスが溜まっててな」

「横槍が面倒なら最高評議会を動かして色んな組織の代表者を集めた意見交換会なんかを作って対応専門の時間を割いた方が早いんじゃないですか?」

「ふむふむ、それは使えるな。よし明日、最高評議会に掛け合って時間を決めることにする。5日に一度開催する意見交換会で返事はデータをそろえて後日文書で回答でいいだろう。影でゴチャゴチャ行ってる意見もこれで潰せるな・・・ありがとう早乙女君」

「裏から手を回してくるヤツが面倒な場合は有効な手段なんですけどね・・・表立った公開会議を開いて『正式に文書に残す』ってのは」

「ああ、それもそうだな。イライラしすぎていて忘れていたよ」

「あ、順番がきたみたいですよ」


また肉を受け取ってガツガツ食い始める。

そろそろ魚介系が食べたくなったのでまた並ぶと言ってるイワノスと分かれて寿司のテーブルに行く事にした。

立食パーティーらしく『てまり寿司』が並べられていて、かなり美味しそうだが女子率が高くなかなか入っていき辛いな。

会場にはたくさんの人が増えててあちこちで雑談や商談・・・そして腹に色々抱えてる駆け引きなんかも繰り広げられてるみたいだ。

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